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南のまち、と森の端

南九州の一隅からちょっとした日常の出来事や思いを綴ります。

楽しめたクリスマスコンサート

2019-12-24 17:32:29 | 芸術文化

今の時期、あちこちでコンサートが賑やかに開かれていますが、24日昼間、宮崎市での小さな小さなクリスマスコンサートに出かけました。会場は宮崎駅近くのガーデンテラス宮崎ホテル&リゾート内のしゃれたチャペル  ジ・アーク。入場者も60人余、時間も1時間程度のコンサートでしたが、質的には相当高い、しかもとても楽しいコンサートでした。
出演者はフルートの戸髙美穂さん、バスーンの黒木綾子さん、ピアノ・河内朋子さん。戸髙、黒木さんは東京芸大の同窓生。戸髙さんはウイーンの留学経験があり、黒木さんは現在、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団員として活躍中。河内さんはフェリス女学院大学院修了。戸髙、河内さんは宮崎を中心に幅広く活動している人です。
この日クリスマスにちなんだ曲のほか、サン=サーンス/バスーンソナタOp.168第3楽章、ガペーユ/フルートとバスーンのためのソナチネ第1楽章、テレマン/フルートソナタハ長調など、日ごろ聴き慣れないフルートとバスーンの曲ほか、美しい音色と確かな技術を思わせる演奏で聴く人たちをうっとりとさせていました。小さくとも宮崎の音楽全体のレベルアップにつながるようなこんなコンサートがもつと増えてくればよいのに、と思いながら帰途についたクリスマスの日でした。


黒木清次文学碑祭に出席しました

2019-10-31 16:08:58 | 芸術文化

もう数日が経ってしまいましたが、10月27日、宮崎県小林市須木で開かれた「第29回黒木清次文学碑祭」に出席してきました。晴天に恵まれた文学碑前広場には小林市文化連盟、同市教委の人たち、文学、文化関係者、市内小中学生ら100人ほどの人が集まったでしょうか。

 黒木清次さん(1915-1988年)は、宮崎の文学活動の拠点だった同人誌「龍舌蘭」の創刊に加わり、戦後もずつと小説、詩の分野等で活躍、多くの作品を残しました。宮崎の文学の優れた先輩の一人。没後、故郷の小林市須木に詩「朝の鶴」を刻んだ詩碑が立てられ、毎年文学碑祭が開かれています。

 この文学碑祭の特徴は、なんといっても毎年市内小中学生に詩の募集を行い、H氏賞を受けた詩人、杉谷昭人さんが選を担当、入賞、優秀、入選作品を収めた冊子を作り、当日表彰されること。情緒豊かな後に続くような人が次々に育ってほしい、という趣旨です。

式では献花や、文化連盟、市、市教委、遺族あいさつ、「朝の鶴」の詩の朗読、フルートとエレクトーン演奏、子供たちの授賞式、作品朗読、杉谷さんの講評と続きました。 広場のすぐ下に景勝地の小野湖、ままこ滝があり、常に滝音が伴奏になり、秋のすがすがしい雰囲気に包まれた文学碑祭でした。

黒木清次文学碑祭で行われた詩作品授賞式

詩作品「朝の鶴」が刻まれた文学碑


安井息軒を描いた坂本さん

2019-09-01 09:17:40 | 芸術文化

宮崎市安井息軒記念館という施設が同市清武町にあり、初めて行ってみました。以前から1回は見学してみたいと思っていたのですが、今年5月の展覧会をこのページで紹介した画家、故・坂本正直さんが描いた小企画展が開かれていることを知り、赴いたというわけです。

 安井息軒は飫肥藩出身、江戸後期の儒学者。揺るがぬ信念で生涯を通して学問を追究、活躍した人で、今なお郷土の偉人として慕われ、顕彰されています。谷干城、陸奥宗光など多くの人材を育てた人としても知られています。

 記念館は生家近くの静かな環境の中に建ち、書や日記、肖像画など息軒ゆかりの多くの品が展示され、春・秋のミニ企画展「坂本正直が描く在りし日の息軒」も開かれています(11月3日まで。入場無料)。

 坂本さんといえば、戦争体験をもとにした多くの作品で知られていますが、息軒さんをテーマにした作品は珍しいと言えます。これら私も初めて鑑賞させていただきました。 同館の一室には「大豆を煮る」「双石山登山」「江戸の安井息軒」など息軒の生涯の節目を描いた大小8点の作品を展示。一筋に道を究めた人生に共感した坂本さんがのびのびとおおらかに描いていて、戦争シリーズなどとはまた異なった魅力をもっています。これらの作品を多くの人に観てもらいたい、と思ったことでした。

坂本さんの作品「明教堂の教授 30歳のころ」

「坂本正直が描く在りし日の息軒」展会場

 宮崎市安井息軒記念館の展示室


魂に迫る作品群・「坂本正直―平和への祈り―」展

2019-05-16 11:27:21 | 芸術文化

 「坂本正直―平和への祈り―」という展覧会が5月15日、宮崎市船塚の宮崎県立美術館県民ギャラリーⅠ、Ⅱで始まりました。

坂本さんは1914年宮崎市に生まれ、旧制宮崎中学校卒。中国大陸や台湾へ応召。復員後は、宮崎県の中学校の教師をしながらモダンアート協会展などに出品。宮崎県文化賞、宮日美展無鑑査など。宮崎を拠点に旺盛な絵画制作を重ね、2011年97歳で死去。生涯にわたって描き続けてきた最大のテーマが「自らの戦争の意味を問い続けること」。坂本さんは馬や樹木などを含め古里の素朴でおおらかな自然や人々、その生活を愛しましたが、その坂本さんが赴いた戦場での過酷な状況と、異常が次第に日常化する怖さ。自分への問いかけや、鎮魂の思い。ライフワークとして取り組んだ「クリークの月」「戦争-人間が人間を」「手榴弾-めしを食いつつながめていた」などの厳しい戦争シリーズを中心に多くの作品を残しました。

会場にはこれら大作のほか、抽象的な馬のシリーズや自画像、経典を求めて旅をした三蔵法師シリーズ、教職時代の子どもたちの手紙、坂本さんを撮った写真作品などの資料などが会場にずらりと並び、魂に迫る深い思いがあふれる展覧会となっています。

実際、戦争の中に身を投じ重く厳しい記憶の層となって私たちの前に現前する作品たち。坂本さんが生きていれば、今の時代の状況をどう感じるでしょうか。「平和」の意味を問う展覧会として、また、坂本さんが心をくだいていた人権、差別などの課題がなお山積する現在、多くの人に見てもらいたい展覧会と思います。 あっけらかんとした人間性に富んだ明るい性格、笑顔。坂本さんの人柄を知る筆者にとっては、また違った懐かしさを覚えますが、これらの作品はある意味時代を知る、後世に伝えるべき貴重な作品群と言えます。これらの作品が散逸することなく残る工夫をみんなで考えてほしいと願っています。

展覧会会期は5月26日まで。この間、関連イベントとして▽総合工作芸術家 だるま森+えりこによるヘンテコARTな2日間・5/18(土)14:30-15:30人形ART「だるま森の音語りライブ-カリカリ砂漠の夜は更けて」(同館アートホール)・5/19(日)13:00-17:00「だるま森のヘンテコお伽小屋」で楽器づくりと人形劇(総合文化公園)▽5/25(土)11:00-12:19映画「ちづる」、13:00-14:41映画「蟻の兵隊」上映(アートホール)があります。

始まった展覧会会場

「坂本正直-平和への祈り-」展ポスター


宮崎の5月は音楽祭!

2019-05-08 17:04:11 | 芸術文化

5月19日まで宮崎市船塚のメディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)で開かれている第24回宮崎国際音楽祭に足を運びました。 聴きに行ったのは同劇場アイザックスターンホールを会場にした演奏会(1)と(2)。今回、全体のプログラムをみると、ベテラン演奏家の中に発らつとした若い演奏家を際立たせながらじっくり聴いてもらおうという意図がうかがえます。

演奏会1、2ともヴァイオリンの三浦文彰さんとピアノの辻井伸行さんをメインにしたコンサートで、ほかヴァイオリン:川久保賜紀、ヴィオラ:鈴木康浩、チェロ:遠藤真理さんらが出演。 演奏会1はシューマンの「ピアノ五重奏曲変ホ長調」やショパンの「ピアノ協奏曲第2番」(室内楽版)などわくわくしながら聴けたし、演奏会2ではドビュッシーの「2つのアラベスク」、フランク:「ヴァイオリンソナタイ長調」、個人的に大好きなブラームス:「ヴァイオリンソナタ第1番『雨の歌』」が聴けて幸せな気分に浸れました。 2日とも今人気の演奏家とあって会場は満席。拍手もすごい音量で、このリアル感も会場を訪れないと味わえないのかもしれません。

音楽祭はまだまだ続きます。ヴァイオリンのピンカス・ズーカーマン(指揮も)、ライナー・キュッヒル、徳永二男、チェロのミッシャ・マイスキー、アマンダ・フォーサイス、ピアノの野平一郎、リリー・マイスキーさん、ソプラノ・中村恵理、テノール・福井敬さん、指揮の広上淳一さんらが登場、室内楽から、実力派演奏家たちを集めた同音楽祭管弦楽団によるシンフォニー、オペラ「ラ・ボエーム」(コンサート形式)、日本の作曲家作品を紹介する「エクスペリメンタル・コンサート」などがあります。

 芸術劇場の外に出ると、周囲に植えられたクスの若葉が美しく、音楽祭のフラッグが心地よい風に揺れていました。低料金で聴ける絶好の機会、隣には美術館もあり1日楽しめます。足を運んでみたらいかがでしょう。

 

宮崎国際音楽祭をアピールする会場前の大型パネル