この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

#405 プロポーズと答え(モーム「人間の絆」)

2008年02月19日 | 英米文学

私は今、3年前の私のブログのある部分を読み返している。モームの作品「人間の絆」の最後の部分である。主人公がいろいろな人生遍歴、女性遍歴の末、自分の友人(といっても随分年上の友人であるが、)の娘である若い、地味な素朴な家庭的な女性サリーに求婚する場面である。
私はそのブログにこう書いている。

「しかし、最後にSallyという素直な家庭的な女性にめぐり合い、トラファルガー広場にあるナショナルギャラリーでプロポースする最後の場面は、読んでいてほっとする。

“I wonder if you’ll marry me, Sally?”
She did not move and there was no flicker of emotion on her face, but she did not answer.
“If you like.”
“Don't you want to?”
“Oh, of course I 'd like to have a house of my own, and It’s about time I was settling down.”
He smiled a little. He knew her pretty well by now, and her manner did not surprise him.
“But don’t you want to marry me?”
“There is no one else I would marry.”
“Then that settles it.”
“Mother and Dad will be surprised, won’t they?”
“I’m so happy.”
“I want my lunch,” she said,
“Dear!”
He smiled and took her hand and pressed it. They got up and walked out of the gallery. They stood for a moment at the balustrade and looked at Trafalgar Square. Cabs and omnibuses hurried to and fro, and crowds passed, hastening in every direction, and the sun was shining.

この時主人公フィリップの年齢は30歳だったようだ。
この長い小説の最後である。
私もほっとして読み終えたのを思い出す。私はその時19歳だった。これから青春を迎えるという頃だった。」

主人公フイリップの求婚の言葉とサリーの素朴な受け答えが何とも味がある。このような素朴な言葉を交わして、結婚の約束ができるのは幸せである。

男性のプロポーズに対し
“If you like.”
と答えるのは珍しくないだろうが、
“Oh, of course I 'd like to have a house of my own, and It’s about time I was settling down.”
というSallyの答えは面白い。
しかし、フィリップはこのようなことを言う彼女をすでに十分に理解しているのである。

それでも“But don’t you want to marry me?”というフィリップの質問は当然であろうが、
“There is no one else I would marry.”というSallyの答えに私達読者はほっとして嬉しくなる。

その後でSally が言う、“I want my lunch,” がまたよい。

私は地元の葉山でのD.H.Lawreceの「息子と恋人」の原書での読書会でこの本を数年間にわたって読んだが、恋人であるはずのMiriumへの主人公のポールの煮えきらぬ態度とその態度を正当化させるポールの理屈付けは私達読者に対してもフラストレーションを起こさせたのを覚えている。

人それぞれに愛し合い、愛をたしかめ合い、プロポーズし、それに応えて結婚し新しい家庭を作って行くのである。それが小説の中のことであっても、信頼しあった二人のプロポーズのやりとりは読者をほっとさせてくれ喜ばせてくれるのである。(おわり)

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画像:筆者撮影


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