この懐かしき本たちよ!

まだ私の手元に残っている懐かしい本とそれにまつわるいろいろな思い出、その他、とりとめのない思いを書き綴りたい。

# 334 W.H.ロレンス「息子と恋人」3

2006年11月20日 | 英米文学

先日は久し振りでW.H.ロレンス「息子と恋人」の読書会があった。英語の原書による読書会である。この作品については昨年このブログに書いたが、指導して下さる先生の学校の仕事の都合などで、間が空くことがあり、まだこの本を読み終わっていない。しかしもう少しで終わるところである。主人公ポールの母親が癌で死にかけている。しかし母親の生命力は強く、癌の痛みに苦しみながらも生き続けている。主人公のポールとその姉のアニーは看護を続ける。看護する方も精神的にも参ってきている。そして先日読んだところは、主人公のポールが姉と相談して、母親の死期を早めるために大量のモルヒネをミルクに混ぜて母親に飲ませる。

そして大量のモルヒネを母親に飲ませたことを姉のアニーに伝える。その後二人は笑う。

自分の命以上に母親を大切にしていた「息子」ポールが母親の死期を確実に早めた後で姉と一緒に何故笑ったのだろうかと考えてしまう。

他の場面もそうだが、この場面も実に克明な描写がなされている。作者ロレンス自身の経験にもとづいているのであろう。

この読書会ではどのような細かい単語でもすべてきちんと辞書を引いて調べ、しかもみんなの前で一字一句きちんと訳さなければいけない読書会であるので、辛い内容の場面でも読み飛ばすわけには行かない。丁寧に読む。雑談もあまりない。会員のほとんどが女性である。伝統のある女子大などでの才媛の集う読書会というのはこういうものだったのだろう。

この作品を何年もかけて読んでいると、私はあの問題となった小説「チャタレー夫人の恋人」の作者としてのみ知っていただけだったDHロレンスが、すっかり身近な人になっている。

この作品の舞台は1900年のはじめごろなのだが、今私達が読んでいて作者の心の動きは全く今の私達と同じである。

もう少しで私達は「息子と恋人」を読み切る。その後で私達は長い間一緒にいたこの小説の主人公と別れてしまうような寂しさを感じている。 (おわり)

    

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画像:「息子と恋人」(Penguin Classics)


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