日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

本日の晩酌 - 山灯

2020-05-31 22:12:19 | 居酒屋
後回しを続けた末に、ようやくお鉢が回ってきました。五月最後の晩餐を「山灯」の肴が飾ります。
大半の飲食店が休業に追い込まれていた先月の中旬、「月肴」「藤々」と並んで、持ち帰りのみに切り替え営業を続けていた店の一つです。かねがね噂を聞いていた両店と違い、行きずりで知った店ではありますが、居酒屋使いができそうな料理屋然とした店構えには看過しがたいものがありました。しかるに今まで素通りを続けてきたのは、自身にとって使い勝手がよろしくなかったという事情によります。
今やあらゆることを端末上で調べられるご時世です。まず分かったのは、店構えの割に敷居は高くなさそうだということでした。気鋭の店主が営む点を含めて、「月肴」「あい田」に近い店という印象を受けました。しかし、残念ながらその時点では店内で呑むという選択肢が事実上ありません。肝心なのは持ち帰りです。
品書きは申し分なかったのです。単品でも盛り合わせでも注文できる日替わりの前菜、主菜を中心に、炊き込みご飯と一品料理がいくつか揃って、値段も良心的でした。しかし、店主による並々ならぬ意気込みが問題でした。店で出すのと同じ質を保つため、注文を受けてから調理するとの理由により、少なくとも30分前までの電話予約が求められていたのです。待つこと自体は構わないものの、そこまでの熱意を込めた品々なら、出来立てをいただかなければ失礼に当たります。つまり、時間的には店で呑むのと比べても大差がないということです。その結果、実質七時で看板という当時の条件が壁となり、どうしても手を出せなかったという経緯があります。

極端な規制の緩和を受けて当店が出した結論は、持ち帰りを継続しつつ、店内の営業も再開するというものでした。店で呑むという選択肢が加わった今、酒代も落として行けるという点で、そちらの方が望ましいのはもちろんです。それをあえて控えたのは、ものの試しに持ち帰るという今しかできない特権を活かしたかったのに加え、足止めの緩和により人出が急増している中、週末の外食は当面遠慮した方がよかろうという判断もありました。そしてその判断は的中しました。八時過ぎに電話で一報入れたところ、店主と思しき電話口の人物から、やや当惑したような口調で注文を聞かれたのです。不穏な空気を感じながらも主菜の盛り合わせを所望すると、あいにく出てしまったとの返答がありました。前菜も同じく切れたとの返答です。おそらくは、久方ぶりの外食に出た人々が殺到し、看板を待たずに品が切れたのでしょう。ならばどのみち店では呑めなかったことになります。幸いにも一品料理が残っていたため、その中から二つ選ぶという顛末でした。
一品当たりの値段は「藤々」の五割増しといった見当でしょうか。しかし、どう見ても倍以上はありそうな気前のよい盛り付けを考えると、単価としてはむしろ安いということになります。一人でいただけないこともない、しかし二人で分けても十分な量があるという点では、長岡の「魚仙」にも通ずる豪快さがあります。それに加えて当店ならではの特徴を挙げるとすれば、品書きがいちいち長いということです。洋の技法も採り入れつつ、一捻り効かせるのが十八番なのでしょう。持ち帰った品についても同様の傾向が窺われ、わずか二品とはいえども、店主の個性がありありと感じられました。前菜と主菜についてもいずれ試してみる価値はありそうです。

旬菜料理 山灯
東京都新宿区舟町3-6 石山ビル1F
03-3354-1550
月-水 1800PM-2300PM(LO)
木-土 1800PM-200AM(LO)
日 1700PM-2230PM(LO)
不定休

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