日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

本日の晩酌 - 燗コーヒー藤々

2020-05-22 21:15:53 | 居酒屋
取り寄せを一日挟んで持ち帰りに回帰しました。先週に続き「藤々」が金曜の晩酌を飾ります。
通常営業の再開へ向け、品書きを本来のそれに戻していくと告知されたのは先週のことです。しかし、今週に入っても特に変わった様子はありませんでした。その代わりに入ってきたのは、今週限りで持ち帰りの営業を終えるという知らせです。今日が最終営業日とのことでした。肴を持ち帰って晩酌する習慣が始まってからというもの、最も多く世話になってきたのは当店でした。挨拶がてら、最後に訪ねておこうと決めていた次第です。

一連の騒動で煽りを食った飲食店が、苦肉の策で持ち帰りを始めるに至り、ささやかな支援を兼ねて、連日世話になってきました。初めて飛び込んだのは荒木町の「月肴」でしたが、その帰り道、教祖の番組で紹介されていた当店が、持ち帰りのみに切り替えて営業を続けていると知り、翌週早速訪ねたのが始まりです。結果としては、最も初期に訪ねた二軒が、自分の中で双璧と位置付けられる存在となりました。
圧倒的な品数と物量感を誇る「月肴」の盛り合わせに比べ、単品注文の当店が最初は割高に感じられました。そのよさが分かってきたのは二度、三度と足を運んでからです。居酒屋よりも一枚上手の仕事ぶりに加え、遅い時間に飛び込んでも必ず何かは買えるという使い勝手のよさが性に合い、回数としては次点に大差を付ける首位の座につきました。しかしそれも今日限りかと思うと、名残惜しさが募るのは人情というものです。

本来の姿に戻る以上、歓迎すべきことなのは当然です。そう分かっていても惜しまれるのは、ここに代わる店がどこにも見当たらないという事情によります。呑み屋の持ち帰りが広まっていくにつれて、肴よりも惣菜と呼びたい献立が増えてきたと昨日申しました。そのような中、最後まで肴の域に踏みとどまっていたのが当店です。たとえば沖漬けのような塩辛にしても、ご飯の友というよりは、肴としていただく前提で仕立てられたことが窺われます。独酌には過不足のない分量も、こちらにとってはお誂え向きでした。店で呑むのに最も近い感覚で選べることは、当店が重宝する点の一つだったのです。
もう一つの理由として挙げられるのは、通常営業を前提に考えると、おいそれと通える店には思われないことです。初めて当店を訪ねたとき、教祖の番組で存在を知りながらも、しばらく食指が動かなかった理由について述べました。日頃から世話になっている居酒屋とは明らかに違う客層を画面越しに察知し、一人でふらりと飛び込むにはどうかという懐疑心があったのです。それが瓢箪から駒の出来事により通い始めることとなった結果、食わず嫌いをしていた面があることについては分かりました。とはいえ、仮に通常営業が始まったとき、今のように気兼ねなく暖簾をくぐれる気がしません。居酒屋の域にある「月肴」とは一線を画する、曰く言い難い敷居の高さが当店にはあり、その印象は日参しても変わりませんでした。それだけに、これほど気軽に寄れるのも最後かと思うと、名残惜しさを感じるというのが真相です。

多彩な品々の中で最も感銘を受け、なおかつ最も多くいただいてきたものといえば何といっても鴨ロースです。今一度いただいて締めくくりたいのはやまやまでした。しかし、終了に先んじて日毎に品数が減っていき、前日をもって品切れに。初めて訪ねたとき以来、欠かすことなく品書きを飾っていた定番が、最後の一日を残して皆勤賞ならずという結果でした。前日までは十分あった、しかし一気に売れてしまったというのが店主の弁です。ただし、自分からたずねたわけではありません。店主の中では「鴨ロースの客」として認知されていたのでしょう。
日参できた貴重な経験は今日で終わります。とはいえ、これで今生の別れにするつもりもありません。来月から再開される通常営業に先立ち、次週は早朝食堂と称して朝から夕方まで定食を出すつもりとのことでした。その期間にも一度訪ねてみるつもりです。

燗コーヒー藤々
東京都新宿区荒木町10-14 伍番館ビルB階
03-6883-9898
1700PM-2200PM(LO)
日祝日他不定休

ポテトサラダ
焼き茄子の胡麻酢掛け
ビーフシチュー
障泥烏賊の塩辛
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