夕方まで宿の手配は見合わせました。飲食店への風当たりがこれほどまで強まると、なじみの店の動静が否応なしに気がかりです。「紋や」さえ開いていればもちろん福井に泊まるものの、万一休業していれば、金沢に引き返すことも検討せざるを得ませんでした。しかし杞憂に終わってくれました。まさかの予約満席という、このご時世にあってはむしろ歓迎すべき返答を受け、空き次第知らせてもらう算段をつけて、ひとまず宿で待機することになりました。ところが、八時半には空くだろうといわれていたはずが、目安の時間を過ぎても梨の礫でした。たとえ遅くになろうとも、席さえ空けば行くつもりではあるものの、深夜に及ぶ飲み食いがあたかも悪であるかのように叫ばれるご時世です。お上による「要請」で飲食店が早仕舞いにでもなっていれば、万一のことがあったとき、代わりの店の選択肢すら見当たらないという事態にもなりかねません。念のため、こちらから様子をたずねてみようとしまさにそのとき、携帯電話が鳴り出すという顛末です。
九時までかかった一因は、一連の騒動の煽りで席の数が減らされ、八席あったカウンターが六席になったことでしょう。それに加えて、自分の前にも順番待ちがいたようです。しかも後からさらに二組入ってきました。四連休だった九月に訪ねたときより、今回の方が賑わっています。店主によると、一連の騒動に雪が追い打ちをかけ、先月は相当苦戦したものの、ようやく人出が戻ってきたとのことでした。老婆心に終わってくれたのは幸いです。
気候には冬の名残が感じられる一日でした。しかし、品書きには春らしいものが増えています。ざっと挙げてものれそれ、新わかめ、ふきのとう、若竹煮といったところでしょうか。ズボがにの文字があるのも今ならではです。それらの中から一つ選んでみるにもやぶさかではなかったものの、あえて注文したのは牡蠣の味噌鍋でした。当店を初めて訪ねたときにいただいた品の一つがこちらです。能登産の牡蠣と地野菜を使ったもので、冷めかかった鍋を温め直してもらえたのもありがたく感じられました。まだ肌寒い早春の夜、当時のことを振り返りつつ、しみじみ酒を酌みたかったのが真相です。
その鍋には、立派な牡蠣が春菊とともに奢られていました。食中の会話は慎み、済み次第直ちに出よと叫ばれる世知辛いご時世、店主の口癖でもある「ごゆっくり」の一言も心憎いものがあります。しみじみ感謝しつついただき、本日最後の客となって席を立ちました。
★紋や
福井市中央3-4-6
0776-23-0040
1800PM-2400PM
日曜定休(祝日の場合は営業し翌日休業)
白龍
早瀬浦
突き出し(蟹玉豆腐)
造り盛り合わせ
平目フライ
カキ味噌鍋
へしこ刺身
抹茶ムース
九時までかかった一因は、一連の騒動の煽りで席の数が減らされ、八席あったカウンターが六席になったことでしょう。それに加えて、自分の前にも順番待ちがいたようです。しかも後からさらに二組入ってきました。四連休だった九月に訪ねたときより、今回の方が賑わっています。店主によると、一連の騒動に雪が追い打ちをかけ、先月は相当苦戦したものの、ようやく人出が戻ってきたとのことでした。老婆心に終わってくれたのは幸いです。
気候には冬の名残が感じられる一日でした。しかし、品書きには春らしいものが増えています。ざっと挙げてものれそれ、新わかめ、ふきのとう、若竹煮といったところでしょうか。ズボがにの文字があるのも今ならではです。それらの中から一つ選んでみるにもやぶさかではなかったものの、あえて注文したのは牡蠣の味噌鍋でした。当店を初めて訪ねたときにいただいた品の一つがこちらです。能登産の牡蠣と地野菜を使ったもので、冷めかかった鍋を温め直してもらえたのもありがたく感じられました。まだ肌寒い早春の夜、当時のことを振り返りつつ、しみじみ酒を酌みたかったのが真相です。
その鍋には、立派な牡蠣が春菊とともに奢られていました。食中の会話は慎み、済み次第直ちに出よと叫ばれる世知辛いご時世、店主の口癖でもある「ごゆっくり」の一言も心憎いものがあります。しみじみ感謝しつついただき、本日最後の客となって席を立ちました。
★紋や
福井市中央3-4-6
0776-23-0040
1800PM-2400PM
日曜定休(祝日の場合は営業し翌日休業)
白龍
早瀬浦
突き出し(蟹玉豆腐)
造り盛り合わせ
平目フライ
カキ味噌鍋
へしこ刺身
抹茶ムース