日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の大地を行く 2017 - ふらの

2017-09-26 23:00:36 | 居酒屋
一軒目を「平次」にするのは既定方針でしたが、二軒目についても腹は決まっていました。地下鉄に再び揺られてすすきのに移動、「ふらの」の暖簾をくぐります。
教祖があらゆる著作で激賞してきた札幌の店といえば「味百仙」ですが、訪ねた時間帯が悪かったこともあるのか、少なくとも自分の感性には響きませんでした。「あんぽん」「魚菜」もよい店ではあったものの、是非また行きたいと思うまでには至りませんでした。そのような中、唯一行きつけとして定着したのが「ふらの」です。
ただし、他の三軒に比べて酒と肴が突出しているわけではなく、むしろ地味といっても過言ではありません。それにもかかわらずこの店に落ち着いたのは、古い呑み屋小路の風情であったり、店主による付かず離れず適度な間合いの客あしらいが心地よいからです。つまり「平次」と同様、酒、肴より居心地を買っているということもできます。かような観点からすると、たらふく飲み食いするよりも、二軒目で軽く一杯やるのがお誂え向きなのです。
前回訪ねたのは北海道新幹線開業前最後の冬で、それ以来二年弱の無沙汰だったことになります。しかるにそれほど間が空いたような気がしないのは、この店の雰囲気が自分に合っているということでもあるのでしょう。教祖の言葉を借りれば札幌の「実家」ともいえます。ここを差し置いてまで他へ行こうとする動機はありませんでした。今年も一度とはいえ戻ってこられたのを幸いに思います。

ふらの
札幌市中央区南五条西4
011-521-6611
平日 1700PM-2400PM
日祝日 1700PM-2100PM

サッポロクラシック
ひやもみじ
橅のせせらぎ
お通し(ほうれん草胡麻和え)
キングサーモン
自家製うにみそ
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晩秋の大地を行く 2017 - 平次

2017-09-26 21:36:02 | 居酒屋
すすきので呑むと見せかけておきながら注文相撲に走るのは、去年の冬と同じ展開です。地下鉄に揺られて北24条にやってきました。訪ねるのは「平次」です。
この店との思いがけない出会いについては、前回訪ねたときにも語りました。居酒屋が古いことは信用の証だと教祖はいいますが、その言葉を体現するかのような店です。酒と肴はごく平凡、しかし北24条では最古参となる創業45年の伝統は伊達でなく、古びてはいながらも手入れの行き届いた店内と、老練な店主の人柄に味があり、長年の常連客で賑わう店内が、店への信頼を物語っています。名酒場があるなど予想もしない北24条で、全くの偶然が重なって出会ったことからくる愛着もあり、以後札幌を訪ねたときはいの一番に寄りたい酒場となって現在に至ります。札幌に泊まって最もよかったのは、この店に寄れることといってよいかもしれません。

すすきのの店とは違い、地元客以外まず立ち寄る可能性のない店だけに、営業時間や定休日もはっきりとせず、早仕舞いなどしていないかという一抹の不安はありました。やや逸りつつ地上に出ると、通り沿いの行灯がまだついているのが見えて一安心。そこから廊下を奥へ進んでいくと玄関が開け放たれており、空席が少なくとも一つはあるのが見えました。しかし、中へ入るとカウンターが常連らしき先客であらかた埋まっており、空席は奥の方にあるもう一つと合わせて二つあるだけでした。予想外の盛況に意表を突かれつつも、奥の方の空席につくという顛末です。
初めて訪ねたときには平凡だった品書きが、次に訪ねたときはかなり充実していることに気付きましたが、それは海産物が充実する冬ならではのことではないかと仮説を立てました。その見立てはおおむね的中し、品書きはごく平凡に戻っています。しかし、にしん漬け、氷頭なます、焼き茄子、青なんばんなど、道中でいただいた品々がいくつも揃っているのは感慨深いものがあります。道中の出来事が走馬燈のように駆けめぐり、旅の終わりをしみじみ実感するひとときでした。

昭和一桁生まれの店主は温厚にして物腰柔らか、ただし無駄に愛想を振りまかず、静かに呑みたいお客はそのままにしておくのが流儀のようです。隣り合わせた独酌の御仁は、支払いのとき以外一言も発することなく去っていきました。こちらも静かに杯を傾けましたが、道外から来たこと、過去に二度ほど世話になったことを帰り際に告げたところ、店主にはたいそう感謝され、看板は11時、日曜定休であることも教えていただきました。これで次からは看板を気にする必要もありません。再訪を約束して辞去しました。

平次
札幌市北区北二十四条西4-4-1
011-757-6460
1700PM-2300PM
日曜定休

黒ラベル
北の誉二合
お通し(枝豆)
開にしん
甘塩たらこ
油揚
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晩秋の大地を行く 2017 - 最後の夜

2017-09-26 20:51:38 | 北海道
峰延から広域農道と道道を組み合わせて市街地を避け、その後275号線に合流して札幌市街に入りました。西への移動だったため、月が沈んでいくのを終始眺めながらの移動でした。走行距離は四日続けて200kmを超え、出発からの通算では2300kmに迫っています。気温は14.5度で、数字の上では特段暖かいわけではないものの、かなり肌寒かった旭川とは体感が全く違い、半袖でも十分過ごせる気候です。都会に戻ってきたことを実感します。
既報の通り、道内最後の夜は法華クラブの世話になります。勝手が分かっていることもあり、車を止めてからチェックインまでの手続を無駄なく済ませることができました。かような観点からも、慣れたところに泊まれるのは大きいものがあります。一風呂浴びて出直せば、呑み屋が落ち着く時間帯に始めることができそうです。
そこまでは想定通りでしたが、驚いたのはトリプルルームが割り当てられたことです。ツインと違って売りづらく、埋まらなかった場合は当日の夕方にシングルの料金で売り出しているのかもしれません。そこにたまたま滑り込んだということは、やはり札幌に泊まれという思し召しだったのでしょうか。宿に金をかけない主義の人間にとって、七千円の宿泊料は無条件に出せるものではありませんでしたが、この僥倖により支出以上の効果が得られることになります。
札幌の夜は幸先のよい出だしとなりました。萱野に対する未練が吹き飛んだわけではありませんが、札幌でよかったと思える出来事が、一つでも多く起こってくれることを願っています。
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晩秋の大地を行く 2017 - 未練

2017-09-26 18:22:09 | 北海道
道内最後の夕景を、去年と同じ場所で眺めることになりました。光珠内の西側の田圃から空を眺めています。
長い防雪林が視界の彼方へ続いていくというのがここの眺めですが、地形が平坦な上に高い山がないため、雲がないと平板で絵にならないという難点があります。しかも、ここまで走る間に西の空はすっかり色褪せてしまいました。夕焼けを眺めたいだけなら、砂川の近辺で場所を探した方がよかったともいえます。しかし、12号線の長い長い直線区間を走りきった後という状況がお誂え向きで、今回も馬鹿の一つ覚えに走った次第です。

残照は既にほとんどなくなっており、あとは道内最後の泊地まで移動するだけです。結論から申しますと、今夜は札幌に泊まりますが、萱野のライダーハウスと二者択一の状況で、かなり迷った末の選択であり、今も未練が募っています。
すすきのの華やかさには唯一無二の旅情があり、最後の夜を飾るに不足はないともいえます。しかし、街に宿泊するよりも、格安のライダーハウスとキャンプ場を渡り歩く方が、この時期の北海道らしいような気がするとでも申しましょうか。初見のキャンプ場と札幌の二者択一なら、札幌を選んだ可能性は高いと思います。しかし、道内でもとりわけ愛用してきた萱野のライダーハウスとの二者択一ということにになると、駅舎の裏手で虫の声を聞き、三日月を眺めつつ晩酌したかったという思いが、時間が経てば経つほど募ってきた次第です。
それにもかかわらず札幌を選んだのは、既に二泊している萱野に対し、札幌に泊まる機会は今夜しかないという事情によるところもさることながら、法華クラブに空きが出たのが直接の決め手です。札幌の宿代の相場は旭川より当然高く、許容しうる価格帯ですすきのが徒歩圏内ということになると選択肢が限られてきます。そのような中、先刻照会したところ、法華クラブに一室だけ空きが出ていたため、札幌に泊まれという思し召しと受け止めて、若干の迷いはありながらも手配した次第です。法華クラブが選べなければ、萱野に落ち着いていた可能性は少なからずあり、まさに紙一重の選択でした。

そのようなわけで、かなりの未練はありながらも、今から札幌へ向かって走ります。ほとんど迂回をせずに萱野に寄ることも可能な状況ではありますが、駅舎の明かりを見ればますます未練が募るのは避けられません。今のところ、明日の午前までは晴れるとの予報が出ており、的中すれば列車を撮りに戻ってきたいと考えています。もう一度だけ戻ってこられると信じて、別れの挨拶はそのときに回すつもりです。
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晩秋の大地を行く 2017 - 上砂川駅

2017-09-26 17:17:46 | 北海道
旭川を出てからは為す術もなく日が傾いていき、慌ただしく動き回った割にはさしたる収穫もなく終わろうとしています。悲別こと上砂川駅の跡地を訪ねたものの、西日はあと少しのところで山陰に隠れてしまいました。
この場所にはいくつかの思い出があります。この時期に道内を旅したとき、ここで最後を飾ったことがありました。blog開設前でいうと、レンタカーで活動した二回のうちのどれかということになり、いずれにしても一昔前のことです。奔別によく似た形の立坑が残っており、それとほどよい距離を置いた場所が開けていたため、そこに車を止めて記念撮影したのを覚えています。今回その立坑も陰ってしまい、残念ながら当時の再現はなりませんでしたが、短い時間とはいえ久々に立ち寄れたのを幸いに思います。
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晩秋の大地を行く 2017 - 東滝川駅

2017-09-26 15:11:36 | 北海道
七時台から慌ただしく動き回っているにもかかわらず、どういうわけかなかなか先に進みません。旭川を後に12号線を南下し、道道で滝川市街を短絡して、東滝川駅にやってきました。間口の広い駅舎の屋根から一本突き出た煙突が北海道ならではです。ホームを互い違いにした構内は、今となっては無用と思えるほどの有効長を持ち、長編成の石炭列車が行き交った古きよき時代が偲ばれます。
それに加えて往年を偲ばせるのが広い待合室です。背もたれ付きのベンチは同じ方向を向く形で四列も並べられ、向いた先の壁面には、滝川富良野間開通100周年を記念するペナントを中心に、右半分に蒸気機関車の写真が、左半分には開業当時の様子を描いた絵が飾られます。さらに、改札口の脇には開業当時の駅名を入れた「ほろくら驛」の扁額が。ホーム側の庇が雪の重みで歪むなど、やや痛んだ様子なのが気がかりではありますが、地元の人々の愛着がありありと感じられるよい駅です。
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晩秋の大地を行く 2017 - つるや

2017-09-26 13:27:57 | B級グルメ
旭山に戻ってはきたものの、雲が出て遠景が斑になってしまったり、列車の側面から正面に日が回ってしまったりで、撮影の成果としては今一つでした。結果的に蛇足だったともいえますが、少なくとも腹ごなしができたという効果はありました。腹具合が戻ってきたところで本日の二杯目をいただきます。評判を聞いて訪ねたのは「つるや」です。
昼時を外したにもかかわらず、店の向かいの駐車場は車が二列に並んだかなりの盛況。老若男女を問わない地元客が出たり入ったりを繰り返しています。とはいえ待ち客が出るほどでもなく、カウンターの左端に一つだけ残っていた空席につきました。
二重の玄関をくぐると右に小さめの小上がりが三卓、左に相席の長いテーブルが二つ、正面の左右方向にカウンターが一本延びるという店内です。店を仕切る五人組は店主夫妻、若主人、若女将に手伝いのお姉さんといったところでしょうか。客席から向かって右側で若主人が麺を茹で、店主はその他の調理を担当。残る三人も厨房の手伝い、接客と役割が決まっているように見え、無駄のない立ち居振る舞いは見ていて気持ちのよいものがあります。
こうなるとラーメンにも期待が持てるというものです。店内に入るやいなや気付いたのは、醤油ダレの濃厚な香りでした。その香りから予想できた通り、ラーメンは濃い色合いの醤油スープにボソボソした縮れ麺という旭川の王道を行く組み合わせです。大胆に例えるならば、「蜂屋」のスープから焦がしラードの風味を除いたようとでもいえばよいでしょうか。濃い味付けで歯応えのあるチャーシューもおいしく、根強い人気も宜なるかなの一杯でした。

つるや
旭川市四条通19丁目左10
0166-31-5814
1100AM-1930PM(売切御免)
月曜定休(祝日の場合営業し翌日休業)
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晩秋の大地を行く 2017 - 旭川サンホテル

2017-09-26 12:10:51 | 北海道
紹介が遅れましたが、昨晩世話になったのは旭川サンホテルです。旭川ではワシントンホテルを愛用しつつ、満室のときはここに救われるという状況が続いています。昨日の場合、朝の時点ではどちらにも空きがあったものの、夕方に再度照会した時点でワシントンホテルが埋まっていたため、結局こちらに落ち着きました。しかし、二番手だからといってこちらが格落ちというわけではなく、眺望がないのを除けば何ら不足はないともいえます。呑み屋街に位置し、独酌三四郎まで一本道で徒歩三分、料金は市内最安値に近く、小ぢんまりした雰囲気もこちらの好みには合っています。旭川ではこの二軒があってくれば事足りるというのが実感です。
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晩秋の大地を行く 2017 - 旭山再訪

2017-09-26 11:48:56 | 北海道
列車を撮ってラーメンもいただき、いよいよ旭川を出るかというとさにあらず。性懲りもなく旭山に戻ってきました。ラーメンをもう一杯いただきたいという考えがある一方、続けざまにいただくよりは、多少の腹ごなしをしたかったのです。その点、旭山に戻ってもう一度列車を撮れば、腹ごなしもできて一石二鳥と考えました。
快晴だった空に大きな雲が出始めて、時折日差しが遮られるようになってきました。その影響により、11時過ぎの普通列車の通過時には曇ってしまいましたが、後続のオホーツク、もとい大雪はおおむね狙い通りに仕留めることができました。今から市街に戻っても、昼の混み合う時間に重なってしまうため、もう少し粘ってから切り上げます。
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晩秋の大地を行く 2017 - 青葉

2017-09-26 10:19:29 | B級グルメ
撮影を切り上げて旭川の市街に戻ってきました。11時を過ぎれば選択肢が相当広がってくるところではありますが、10時過ぎという条件から選択肢は「青葉」に絞られました。
九時半という早い開店に加えて特徴的なのは、淡いスープの味わいです。濃い色の濁った醤油スープにボソボソした麺の組み合わせが旭川ラーメンの特徴ですが、こちらのスープは透き通っており、タレよりもスープの旨みが感じられるようになっていて、麺の食感も標準的なラーメンに近いものがあります。一言でいえば中庸ということになりますが、決して平凡ということではなく、毎日でもいただけそうな完成された味わいと形容するのが適切でしょう。働き盛りの店主を女将が支え、先代店主がそれを見守るという雰囲気も秀逸です。

青葉
旭川市二条通8丁目左8 二条ビル名店街
0166-23-2820
平日 930AM-1950PM(LO)
日祝日 930AM-1850PM(LO)
水曜定休
正油チャーシューメン950円
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晩秋の大地を行く 2017 - 十一日目

2017-09-26 08:25:04 | 北海道
おはようございます。今朝は早々に出発して旭山にやってきました。目当ては動物園ではなく、そこから斜面を登ると開ける、上川盆地を一望する大俯瞰です。
明日は夕方のフェリーで北海道を離れるため、実質的な持ち時間は半日ほどしかなく、終日使えるのは今日が最後です。その一日をどう使うかと考えたとき、いの一番に思ったのが、走る列車を撮りたいというものでした。というのも、今回の滞在では駅の跡、保存車両など、いわば過去の遺物を訪ねてばかりで、撮るとしても現役の駅がせいぜいでした。これほど長く北海道を旅してきた以上、動く列車を一度も撮らずに終われないと考えたわけです。加えて、旭川を訪ねたからには、一泊して呑むだけというのももったいないという考えがありました。その結果、旭川で列車を撮ってからラーメンをいただくという流れに傾き、車を飛ばしてきた次第です。
こうして訪ねた旭山の大俯瞰、列車が走る区間としては桜岡と北日ノ出の間になりますが、それはカメラを構えて列車が収まる部分です。眼下には旭川から当麻にかけての広大な盆地が展開し、稲穂で黄金色に彩られています。あまりに視界が広いため、どこを列車が通っているのか肉眼では即座に見分けることができず、望遠レンズを使っても豆粒ほどの列車が映るに過ぎません。しかし、何km先を走っているかと思うほど距離があるにもかかわらず、通過時の走行音がここまで聞こえてくるのが印象的です。
これから10時までの間に、特急と普通列車が上下一本ずつ通過します。それを撮り次第切り上げて市街に戻ると、頃よくラーメン屋が開いているという寸法です。
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