日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

名勝負10選 - 最終戦

2017-09-06 23:13:37 | 野球
「名勝負10選」と題して振り返ってきた今季の地方大会も、いよいよ最後の試合を迎えました。トリを飾るにふさわしいかどうかはともかく、10試合選ぶならこの試合を外すわけにはいきません。いや、1試合に絞るとしてもこの試合は残るでしょう。最後に取り上げるのは、またも繰り返された霞ヶ浦の悲劇です。
平成20年代の信州の高校野球界は、佐久長聖の天下だったと先日申しました。目下11連覇中の聖光学院を筆頭に、8連覇の明徳義塾、7連覇の作新学院など、さらに上を行くチームもいくつかあります。一時ほどの勢いこそなくなったものの、常総学院も平成20年代だけで5度の選手権出場を果たしています。しかし、決勝に進出した回数だけでいうなら、同校をも上回る7度にわたって進出したのが霞ヶ浦です。それにもかかわらず、悲願の初出場を果たした三年前を除き、全て敗れるという非運を発揮し、特に今季は極めつけともいえる悲劇的な幕切れでした。
宿敵常総学院が8強で姿を消した今季、霞ヶ浦にとっては好機到来のはずでした。殊勲を立てた藤代を破り、決勝に勝ち上がってきたのは土浦日大です。選手権の出場は過去2回、しかも最後は31年前で、近年は8年前の4強入りが目立つ程度という戦績からしても、与しやすい相手のようにも思われました。しかし、ここで勝ちきれないのが同校らしいとでも申しましょうか。序盤から着実に加点し、明らかな優勢だったにもかかわらず、終盤から追い上げられて、最終回には2点差を守り切れずまさかの逆転。その裏に1点取って延長戦に持ち込んだものの、その後は両軍走者を出しながらも決め手を欠き、引き分け再試合には持ち込めるかと思われた15回表、2死から勝ち越し点を奪われて、その裏は併殺打で万事休すという結末です。悲劇的な幕切れを知ったときは、唖然とするしかありませんでした。

地方大会の決勝には、ある意味全国大会の決勝以上の重みがあり、だからこそ悲劇が生まれてくるのだと前回申しました。とはいえ、悲劇もここまで続くと只事ではありません。試合の翌日、「人智の及ばぬ何かの仕業」と評しましたが、その考えは今も変わりません。ただ、しばらく間をおいてから振り返ると、あと一歩のところで勝ちきれない理由が、分からない気がしないでもありません。失礼を承知でいうなら、歴代の名監督が持ち合わせていた勝負師としての勘や度胸といったものが、同校の采配からは感じられないのです。
この試合の場合、それは投手起用に表れました。登板したのは2投手なのですが、交代が実に6回にも及んでいるのです。主戦投手が12回1/3を、一塁手が2回2/3を投げるという分担からして、右投げの主戦投手を軸にしつつ、一塁手を左のワンポイントで使っているのは明らかですが、これだけ頻繁に代えられては、投げる方も守る方も落ち着かないのではないでしょうか。取手二が全盛期のPL学園を討ち果たした伝説の決勝戦では、絶体絶命の危機をワンポイントの継投で切り抜け、それが「マジック」と評される采配の名声を一層高めました。しかし、ここぞという場面で切るからこそ名采配たり得るのであって、乱発されれば見る側としても興ざめせざるを得ません。当事者に言わせれば、主戦に任せきるほどの絶対的な信頼感がなかったのかもしれませんが、持ち前の非運もさることながら、運を呼び込む度胸や勝負勘といったものが、度重なる悲劇の背景にあったのではないかと推察しています。
偉そうなことを申しましたが、「ここが足りない」と素人目にも分かる時点で、あと一歩の場所に立っているともいえます。幾多の悲劇に見舞われた平成20年代はこれで終わりました。心機一転、次なる戦いに臨んでもらいたいものだと思います。

以上をもって、今季の地方大会の記録は完結となります。地方大会どころか全国大会までがとうに終わり、各地で秋季大会が本格化しようとする中、潮時を逸した感はありますが、余すことなく書き留めたという個人的な達成感は残りました。
今季大転換を図った点として、試合の当日中に一通りの結果をさらっておき、翌朝投稿するようになったことが挙げられます。例年は試合数が増えると追い切れなくなり、更新が数日単位で遅れていくのが常でしたが、翌朝早々に投稿する方針を採ったことで、無駄に深入りせず手短に振り返るという習慣が定着し、滞りなく完走することができました。当初から意図していたわけではないものの、大会中は手短に済ませる一方、印象に残ったことを改めて掘り下げるという今季の進め方は、結果として理にかなっていたことになります。
改めて振り返ると、本塁打の量産が注目された全国大会に対して、無名校の躍進が際立つ地方大会だったというのが実感です。それに加えて一件の不祥事もなく、選手不足による出場辞退の一校を除き、全てのチームが最後まで戦い抜いたことも特筆されます。記念すべき第100回にして平成最後の大会となる来季、どのような戦いが繰り広げられるかも楽しみです。
最後はもちろん、長きにわたり楽しませてくれた球児たちへの感謝で締めくくります。また来年…

★茨城大会決勝(7/27)
 土浦日大10-9霞ヶ浦(延長15回)
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