入園式の時のこと。年長Eナくんは、朝の会の時からテンションマックス。歌をがなるような声で歌ったり(歌は優しい気持ちで心を込めて歌ってほしいなと思ってしまいます)、席を何度も立ち上がって動いてはにこにこしたり。
きっと進級した嬉しさや恥ずかしさやくすぐったさからきている行動なのだろうという認識で、注意したりはしなかったです。
でも、私の中には、入園式では年長組さんとして、年少さんをお祝いする気持ちをもって静かに話を聞く態度でいてほしいなと思いました。これは、公立幼稚園で勤めていた時に、年長さんになった嬉しさで全体の場でふざける子を最初が肝心でしっかりとしつけないといけない、という教えからきていたのかもしれないと今思うんですが。
私は厳しく注意することはなくとも、「年長になった」ということを認識してもらおうと思い、
「もりぐみさんになったのは誰かな?」と声をかけました。Eナくん手をあげながら少し表情が真顔になりました。やっぱりどきどきしているんだ!と思いました。
朝の会が終わった後、「やりたい子」で受付のお手伝いをしました。
Eナくん以外のもりぐみさん3人は受付をお手伝い。Eナくんは「おてつだいしない。きのぼりしたい」と言います。
私はほんとかな?と思いました。そこでEナくんに耳打ち。
「受付がお手伝いできるのは、もりぐみさんだけだよ。と・く・べ・つ
」
Eナくん、受付のほうをちらちら見て気になりだしたようでした。
木から降りてきて、しばしまんなか組さんと私と3人で追いかけっこ。
「Eナくん受付いこうよー」と声かけると「いやだー」とにこにこ。
「ドキドキするー?」と声をかけると、走りながら「ドキドキするにきまってるー」とEナくん。
今まで言葉でのコミュニケーションをここまでしたことがなかったのでこの時点で私は感激。
追いかけっこで彼をつかまえて、ひざに入れて「もりぐみさんになったら何が楽しみ?」と聞きました。
「おかいもの。」
「ドキドキする?できそう?」
「できるよ!」
そして走り去ったEナくんは自分で受付のところにいました。
やり方がわからないと最初心が折れそうだったけど、友達に教えてもらってちゃんと受付でお手伝いできたようでした。(肝心なところを見届けられなかった)
式が始まる前に、「やったね!もりぐみさんだね!お手伝いできたね!」とハグしたらくすぐったそうに笑ってました。
そして私から一言。「もりぐみさんになったからさ、新しい子が、どんな子が森のたまごにいるかなって見てるよ。きれいな声で歌を歌ったり、かっこよくお話聞けるかな」
今思うとこの言葉かけが失敗で、「見られてる!」とより強く意識させてしまったことで、Eナくんは入園式の間じゅう、朝の会の時のようなテンションマックス状態だったのでした。
私は気になったけど、注意するのも森のたまご的にどうなんだろうと考え出したら、一回声をかけに行っただけで、あとはハラハラしながら見守ってしまいました。
何にハラハラしてたかと振り返ると、新入園のおうちの方たち(特におじいちゃんおばあちゃんがた)が「このようちえんではちゃんとしつけてくれるのかしら」と心配になったりしないか、という私の脳内で勝手に繰り広げられたストーリーにハラハラしていたのだと思います。
このことについて、スタッフのみんなに「どう思った?式の時は話を聞く態度になれるようにちゃんと注意した方がよかったのかな。森のようちえんネットワーク理事の内田先生のおっしゃってた朝の会などは子どもに必要な不自由な時間だったんじゃないかな?それとも彼の思いを尊重して・・・」と確認するのも何か先延ばしにして考え込んでいたんですが、
鯨岡峻先生の著書「保育の場でどのように子どもの心を育むのか」(ミネルヴァ書房)にヒントを得ました。
子どもの心に「寄り添う」とは。
身体接触をすること、一対一で関わること、そのような形式上のことではなく、大人の心が子どもの心に共感し、相手の身になって、耳には聞こえない心の叫びが聞こえること。
子どもは大人ほど饒舌に今の思いを語ってはくれないけれど、表情や態度や体の動きを手掛かりに気持ちを汲み取ることはできる。
それができない時に、一方的に大人の思いを押し付ける保育や育児になってしまうというようなことが書いてあったのでした。
この場合、「式の時は話をきちんと静かに聞く!」というのは私の一方的な思いですね。
Eくんは、年長になった喜びを感じながら、ドキドキしながらも受付を手伝って、式の最中だってドキドキしながら少し緊張の面持ちで小さい組さんにスケッチブックを渡すのを手伝ってくれてました。
そして、ドキドキしているからこそどうしていいかわからなくて体がよく動いていたのだと思います。
私は半分くらいはEくんの気持ちに気づいていたのに、あと一歩寄り添えていませんでした。
入園式の時、そばにいって声をかけるなら
「どきどきするね、大丈夫だよ」
その一言でよかったんじゃないかなって今振り返って思います。
形式上お行儀よくさせても、身にはならないのだと思います。
いのちの躍動とでもいうべき、自分の思いそのままを表現している姿に寄り添うことの方がどんなに大事か。
自分を大切にできる人は、人のことも大切に思えるようになるのではないかな。
そして全体に意識が向けば今は自分を抑えて周りを引き立てようと思う優しさも自然に起こってくるのではないかな。
教え込まなくても、少しのヒントで、子どもは自分で考えて自分で行動できるし、
それが身になるのだと思います。
私の頭を切り替えていかないと。
Eナくんのお母さんも、他のお母さんも、スタッフのみんなも、Eナくんのことを温かく微笑ましく見守っていました。素敵だー
子どもに寄り添うことをもりたまで学んでいきたいです。
子どもの言葉にならない心の声、もっと拾っていきたいな。
(なお)
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