左手にさげた 半透明のビニール袋には
うっすらと お菓子が いっぱい
そして 右手には 熊のぬいぐるみ
渋滞で 往生してる 僕の車の横を
彼は ゆっくりと 歩きながら
すれ違っていった
きっと お父さんなんだろうな
小さな 娘さんが いるんだろうな
ふうん
人には いろんな名前がある
仕事では 役職だったり 先輩だったり 部下だったり
家庭では 妻だったり 夫だったり 親だったり
そして それぞれの名前の数だけ 顔があって
険しかったり 優しかったり
そんなふうに 人は社会の中で 生きてるんだろうな
でも 僕の名前は たったひとつ
夫でも パパでも 上司でも 部下でもない
帰宅すれば一人 組織にいないから仕事も一人
それぞれの名前には それぞれの責任と
その責任を超えた 充足もあるんだろうな
彼は ぬいぐるみの手を持っていた
だから ちょっと 不恰好に
ぬいぐるみと 手をつないでいた
あの お菓子と ぬいぐるみに
喜ぶ子供の笑顔は
きっと 彼には 大きなエネルギーなんだろうな
ドアミラーの中で 彼は遠ざかって 小さくなっていった
ブラブラした 熊のぬいぐるみも 小さくなっていった
僕は 空っぽの車の中で ひとつだけの名前を
大切にしようと思った
うっすらと お菓子が いっぱい
そして 右手には 熊のぬいぐるみ
渋滞で 往生してる 僕の車の横を
彼は ゆっくりと 歩きながら
すれ違っていった
きっと お父さんなんだろうな
小さな 娘さんが いるんだろうな
ふうん
人には いろんな名前がある
仕事では 役職だったり 先輩だったり 部下だったり
家庭では 妻だったり 夫だったり 親だったり
そして それぞれの名前の数だけ 顔があって
険しかったり 優しかったり
そんなふうに 人は社会の中で 生きてるんだろうな
でも 僕の名前は たったひとつ
夫でも パパでも 上司でも 部下でもない
帰宅すれば一人 組織にいないから仕事も一人
それぞれの名前には それぞれの責任と
その責任を超えた 充足もあるんだろうな
彼は ぬいぐるみの手を持っていた
だから ちょっと 不恰好に
ぬいぐるみと 手をつないでいた
あの お菓子と ぬいぐるみに
喜ぶ子供の笑顔は
きっと 彼には 大きなエネルギーなんだろうな
ドアミラーの中で 彼は遠ざかって 小さくなっていった
ブラブラした 熊のぬいぐるみも 小さくなっていった
僕は 空っぽの車の中で ひとつだけの名前を
大切にしようと思った