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ふぅん

闇閃閑閊 ≡ アノニモス ≒ 楓嵐-風

空っぽな泣声

2010-04-21 08:47:29 | 紫々猫想
「何をやってるんだい?」
『ああ こうすると 潮の音が聞こえるんだ』
「潮?」
『うん 海の音だよ』


「なんで そんなもの 持ってるんだい?」
『一昨日の夜 貝を食べた店で もらったんだ』
「オイラも 聞きたいな」
『ああ じゃあ 貝の中へ 耳をすませてごらん』


「ふうん これが海の音なのか」
『ポラ君は 海を見たことがあるよね?』
「ああ 九州に一緒に行った時 車と船から 見たよ」
『そっか 海に近づくと 潮の匂いと音がするんだ』


「ふうん」


『波が 行ったり来たりしながら 海全体が満ちたり干いたり』
「基音と倍音の関係だね 海も振動してるってワケだ」
『そうかもね 地球は みな回転と振動に溢れてるんだ』
「オイラがいた星もそうだった 宇宙は 回転と振動に溢れている」


『潮の音は どうだい?』
「空っぽの貝殻が 海に帰りたがってる泣声みたい」
『ふうん』


遠すぎた紫

2010-03-30 20:15:03 | 紫々猫想
・・・がっかり


せっかく 今年2度目の ブルームーンな夜なのに
こんなに がっかりしてるよ
怒れれば 少しはマシなんだろうけどさ





昨日には 届いてるはずの ドデカゴン
連絡もないから 昨夜 電話したんだ 
そしたら まだ 終わってないと・・・


ふうん


でも 急げば 今日の夜には終わらせられるというから
中野まで 仕事の帰りに 車を飛ばして
約束の時間に 辿り着いたんだ


担当者が 印刷が遅れたことを 詫びてくれて
それでも まあ どうにか間に合ったから 
笑顔で 「かえって 急がせてすいません」
なんて チグハグな返答をして


念のため 仕上がった冊子を チェックしてみると・・・


え・・・・? 何 これ!


僕は 表紙と背表紙の装飾は 紫で指定したのに
出来上がった冊子の それは
なんていうか 名前の無い色


赤というか 茶色というか
やや色盲の気がある 僕にとっては
なんと呼べばいいか 分からない色で印刷されてる・・・


「あの これ 紫で指定したハズなんですが・・・」
担当者は 慌てて確認したら やっぱりミスで
『おかしいな 印刷機の不具合かな・・・』って


ふうん


泣きたくなったよ
遅れたあげく 割高の色指定の印刷が間違って
全部 やりなおしてもらおうと思いながら ページをめくってみた


でも そこには 長い間 頑張ってきた
見慣れた というか 見飽きるくらい つきあってくれた
モノクロのドデカゴンが ぎっしり


うん 本質は こいつらだ


こいつらが 生きていてくれてるんだったら
この100冊の冊子の 紙やインクは
無駄死にする必要ないよね


そう 表紙の紫だけ 僕が我慢すればいいこと


「これで いいです 本当にありがとうございました」
『本当に すいません』
「もし 増刷することがありましたら その時は 紫で!」


だから 紫は おあずけ
こんなマニアックな冊子 100冊もさばけるワケないし
増刷する見込みなんて ないんだけどさ


がっかり


交差点で 見上げれば ようやく会えた満月
「だめだったよ」 語りかければ
なんだか 僕の心が ブルームーン


「でも これでよかったと 思える日が来ますように」
そんな 消極的な願い事しか 出来なかったから
ルームミラーの上の 紫の猫に聞いてみたんだ


「これって 何色だと思う?」
『錆びきった色 君の心の色だよ』
「ふうん」
『紫には まだ早かったってことだよ』


紫のカフェイン

2010-02-13 03:57:51 | 紫々猫想
夜更かしには 理由がある
眠れずに 過ぎてゆく夜と
眠ってはならない夜と


ふうん





結局 生還という色の帰宅は
27時を回ってしまって


割増のタクシーすら消え
新聞配達のバイクと伴走しながら 
ぼんやりとした丑三時


こんな生活じゃ やっぱり ネコなんか飼えない
22時間も 家を空けてるようじゃ
2回の食事を おあずけしたことになる


ルームミラーの上の
紫のネコは 真っ暗で見えないし
信号も外灯も 逆光になっていて


たいくつだったから
話しかけてみた


「君は 何を食べてるんだい?」
『アンタの無事さ』
「無事? それじゃ 僕は危険になっちまう」


『違うさ 無事がオイラのゴハンなんだ』
「ふうん 今日のゴハンは おいしいかい?」
『ちょっと しょっぱいな』
「しょっぱい?」


『ああ 干からびた無事だと こんな味になるんだ』
「仕方ないじゃん」
『不味いけど 餓死するよりは マシさ』


「君は 眠くならないのかい?」
『オイラは 一生に一度しか 眠らないんだ』
「ふうん」


僕は きっと 
ポラ君の寝顔を見ることは 無いだろう
だって 彼が眠る時は きっと餓死する時
それは 僕が無事でない時だから


どうやら 僕は
紫のカフェインと
出逢ってしまったようだ





紫の猫

2010-01-29 18:19:08 | 紫々猫想
今日の午後から
僕のケライになった 紫のネコは 
ルームミラーの上に ちょこん


振り返らずに 
後ろが見れる鏡を見る度に
紫のネコと 目が合って


振り返らずに
過去が見れる気がしてきて
そっと 視線を外して


ふうん





名前をつけてやろう


こいつは きっとオス
紫の星から やってきたんだ
子猫に見えるけど 本当は どうだろう


僕は 過去から 何も学ばない
でも 過去を 決して忘れない
一番愚かな生き方をしている


ポラ君


僕は 前に進む為に 
時々 後ろを見るんだ
振り返らずに ミラーでチラっと


進路を変更する時に
時々 後ろを見るんだ
振り返らずに ミラーでチラっと


あとは スピードを出しすぎていて
捕まらないように 後ろを見るんだ
振り返らずに ミラーでチラっと


ポラ色 韓国語で紫
でも ポラッ!と言えば
見ろっ! って意味


ポラ君


僕が見てない時も
後ろを見てておくれ
そして 油断してたら 教えておくれ


僕らは 全く反対を見ているけど
そうしなければ 進めない前というのも
あるんだから


そうだ 四月になったら
ポケットに入れて
韓国に連れていってやろう


「ポラッ!」って言って 
ソウルの友人に会わせてやろう!
それまで 一緒に前に進もう