昨夜 玄関を出て 見上げれば
東の空に まるい月
ひとつきに2回目の満月を ブルームーンというらしい
ふうん
願いごとはしなかったけれど
太陰暦だったら
存在しなかった 蒼い月
何度目かの食事の時
彼女は 涙を流しはじめて
満月の話をしてくれた
満月の夜は 妹と一緒に
ベランダに出て 食事をするの
そして 弟も一緒に食事をするの
てっきり 二人姉妹だと思っていたのだけれど
彼女には 20代で急逝した 弟さんがいた
病魔に憑かれて 若くして 逝ってしまった
とても美しくて まるで女優さんのような顔なのに
いつも どこか影がかかっていたのは
その弟さんのことだったんだ
ふうん
涙を拭いて 無理して笑って
変な話をして ごめんね と言った
いや僕こそ 何の力にもなれなくて ごめん と言った
僕には なぐさめたり いやしたり
そういう能力がない
だから 言葉も表情も 不器用なままだった
ただ 嬉しかったのは
その次に会った時から
彼女の美しい顔から 影が消えていたこと
満月の夜には 僕らは 会ったことがない
きっと 寒い夜でも ベランダへ出て
兄弟揃って 一緒に食事をするのを 邪魔したくなかったから
でも メールはした
「今夜も満月だね」
『ありがと 明日 会える?』
もう 十年近く前の話
あの人も 昨日の蒼い月を 見上げていただろうか
姉妹それぞれ 結婚してるから
それぞれの場所で それぞれの人と 見上げていただろうか
東の空に まるい月
ひとつきに2回目の満月を ブルームーンというらしい
ふうん
願いごとはしなかったけれど
太陰暦だったら
存在しなかった 蒼い月
何度目かの食事の時
彼女は 涙を流しはじめて
満月の話をしてくれた
満月の夜は 妹と一緒に
ベランダに出て 食事をするの
そして 弟も一緒に食事をするの
てっきり 二人姉妹だと思っていたのだけれど
彼女には 20代で急逝した 弟さんがいた
病魔に憑かれて 若くして 逝ってしまった
とても美しくて まるで女優さんのような顔なのに
いつも どこか影がかかっていたのは
その弟さんのことだったんだ
ふうん
涙を拭いて 無理して笑って
変な話をして ごめんね と言った
いや僕こそ 何の力にもなれなくて ごめん と言った
僕には なぐさめたり いやしたり
そういう能力がない
だから 言葉も表情も 不器用なままだった
ただ 嬉しかったのは
その次に会った時から
彼女の美しい顔から 影が消えていたこと
満月の夜には 僕らは 会ったことがない
きっと 寒い夜でも ベランダへ出て
兄弟揃って 一緒に食事をするのを 邪魔したくなかったから
でも メールはした
「今夜も満月だね」
『ありがと 明日 会える?』
もう 十年近く前の話
あの人も 昨日の蒼い月を 見上げていただろうか
姉妹それぞれ 結婚してるから
それぞれの場所で それぞれの人と 見上げていただろうか