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ふぅん

闇閃閑閊 ≡ アノニモス ≒ 楓嵐-風

音の温度

2010-03-27 23:59:27 | 日々随想
照明を落とした 舞台袖
演奏者に うなずいて確認をして
その 大きな扉を開ける


まぶしい舞台へ
演奏者の背中を見ながら
僕は 大きな拍手を送る





調律師は 時々
ステージマネージャーを頼まれて
舞台袖で 照明やアナウンスの指揮をとる


静寂の密度が 
最高潮に高まった舞台へ
演奏者を送り


そのステージで 最初の音を出すのは
ステージマネージャーの拍手の音
聴衆の拍手を喚起させる きっかけの音


ふうん


昔は この役が嫌いだった
拍手って 心からするものだし
なんだか やらせみたいだったから


でも 今は 力強く 手を叩いてる
それは ただ 単なる きっかけの音でなくて
本気で 演奏者の出陣に エールを贈る気持ちを込めてるから


僕の拍手で 始まった 音楽の戦闘が
聴衆の体温の拍手で 終わった夜は
本当に 本当に 嬉しい


調律屋は コンサートで いろんなものを聞いている
演奏されていく音楽 調律した楽器の調べ
そして 聴衆の拍手の響き


その中で 一番 幸せな音は
体温のある 聴衆の拍手の音なんだ
その空間に 一緒にいられたことが
本当に 本当に 嬉しいんだ