もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

きみは赤ちゃん  川上未映子

2017-06-24 01:23:54 | BOOK
先日の旅の途中で購入。
読むものが無いと不安な活字中毒者。

川上未映子は雑誌に載っているエッセイしか読んだことがなかったが
パラパラしただけで面白い本のにおいがしたので。

妊娠が自分の人生に関係なくても、読み始めたら止まらない面白さ。
子育てエッセイでは古いところで
伊藤比呂美「良いおっぱい 悪いおっぱい」が母性ファンタジーをぶち破る面白さでしたが
抜きました。

妊娠初期からの、ホルモンによる肉体と感情の変化
出生前診断をうけるまで、うけてからの葛藤と恐れ
つわりの実態
(個人差が激しいようですが、知り合いに出産間近までつわりがあって痩せていった人あり。
あと、TVで見てた「うっ!」となるだけかと思ってたよ~、そんなんじゃなくて大変だったよ(涙)という人あり)
無痛分娩を選択して病院を決めたのに、帝王切開になる流れの
”身体のいいなり”加減。
お腹に赤ちゃんがいる時点でのホルモンによる精神の乱れと
生んでしまってからもまた、ホルモンに支配されるあのれの描写が興味深い。

友人たちから聞いていた話は、極々わずかな部分だったのだな。
もちろん、言語化する回路も必要ないからでしょうね。
「子供は血が繋がっているけれど、旦那は他人」
何人からも聞いていた言葉は、生き物の本能&ホルモンが言わせていたのか!
あと
お腹にいたときは「早く出てきて~」(赤ちゃんに会いたい&肉体的にキツイ)と思っていたが
いざ子育てに突入すると
身ひとつで移動できて、眠れていた時「お腹の中にいたほうが楽だった・・・」
というのもいろいろな人から聞いたな。

さらに、出産による肉体的、精神的負荷が
女性にばかりかけられる社会の仕組みのいびつさ。
呪い、といってもいいぐらいだ。
何せ女性が、女性であることによって自分を追い込んでしまうのだ。
それは子を成しても成さなくても同じ呪いだが
母性、という大きい呪いがひとつ増える。

本当にリアルな、妊娠子育てエッセイ。
しかし、全編シリアスの加減が絶妙で、
時折はさまる関西弁や独特の言葉遣いが作用して
大変面白い読み物になっております。
ここひと月で2回読んでしまったぐらい。

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