moiのブログ~日々のカフェ

北欧&フィンランドを愛するカフェ店主が綴る日々のあれやこれや

柳宗理とフィンランドのデザイン

2004-12-09 17:52:18 | コラム、というか
工藝でも機械製品でも、自然の摂理に合った無理のない形は、時と場を越えて、美しく輝くものだと思います-これは、柳宗理がフィンランドのデザイナー、ティモ・サルパネヴァの作品にふれて書いたエッセイからの引用です。柳宗理は、1958年に日本橋・白木屋で開催された『デンマーク・フィンランドのデザイン』展を企画し、いち早くカイ・フランク、サルパネヴァらフィンランドのデザイナーたちを日本に紹介しています。第10回ミラノ・トリエンナーレでフィンランドのデザイナーたちが《旋風》を巻き起こし、世界中のデザイン界に衝撃をあたえたのが1954年であることを思えば、彼がいかに早い段階からフィンランドデザインに着目していたかがわかります。

「用の美」、つまり実用に根ざした、作為のないモノ本来の美しさを説き一貫して追求しつづけてきた柳宗理が、フィンランドのデザイナーたちに強いシンパシーを抱いたとしても無理のない話かもしれません。実際、アルヴァー・アールト、カイ・フランク、そしてティモ・サルパネヴァの名前は、さまざまなインタビューやエッセイにひんぱんに登場します。そういえば、以前たまたま目にした彼のアトリエの写真には、試作品や資料の山に埋もれるようにしてアールトの椅子やカイ・フランクのうつわなどが置かれているのをみることができました。

冒頭で引用したエッセイでも、サルパネヴァの「ガラスの一輪ざし」の手吹きだけで生まれるその自然な造形について、作者であるサルパネヴァは「デザイン的な作為を最も嫌う人」なので、あえてこのような「かたち」を選んだのだろう、と推察しています。moiでは、椅子(アールト)、カップ&ソーサー(梅田弘樹)、グラス(カイ・フランク&ティモ・サルパネヴァ)、そしてカトラリー(柳宗理)と、フィンランドと日本のデザイナーによるプロダクトをおもにつかっていますが、それらの相性のよさは彼らの「ものづくり」への姿勢が共通しているところから生まれてくるものといえるかもしれません。