曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

将棋ペンクラブ 幹事会

2012年03月18日 | 彷徨う
 
昨日は将棋ペンクラブの幹事会で江戸川区へ。
 
ちょっと早めに家を出て、地下鉄への乗換えをいつものターミナル駅ではなく友人の飲み屋がある駅にする。そして仕込みをしている友人に「やあっ!」と一声だけかけて、「あ、すぐ……」という声を背に受けながら地下鉄駅へ向かう。
 
本当は立ち食いそばの一杯でも食べてネタの仕入れをと思ったのだけど、時間がなくて缶コーヒーだけ買って会場入り。
すでに会報の発送作業は始まっていて、コーヒーの缶を開ける間もなく手薄な場所に入って作業。ここのところ人数が多いので小一時間で終わっていたのが、この日はいつもの半分ほどだったので2時間かけて終了。
その後幹事会。湯川博士幹事がいないと静かなこと。空調の音まで聞き取れました。
1時間弱で終了し、いつものように真面目な幹事と不真面目な幹事の二手に別れる。真面目な幹事さんは会報を台車に積んで発送してもらう店舗に向かい、不真面目さん方は酒場に向かう。
 
今回は初めて錦糸町へ行ってみようということに。酒はどこで呑んでも変わらないのに、不思議と知らぬ土地で呑んでみたいものなのです。
不真面目メンバーは酒の師匠ナカノさん、ライター森さん、英国紳士もとい埼玉紳士のミカミさん。不真面目メンバーに欠かせないアカシヤ書店星野さんは神田の古書店に行かねばならぬということで幹事会後すぐに去っていった。
店内はほぼ満席ですごい熱気。それもそのはずで競馬中継を流している。このお店、土日は朝9時からの営業とのこと。
ナカノさんの話がおもしろく、食い物をつっかえてしまうほど。内容ももちろんだが、その話し方におもしろさの秘訣がある。真似はとてもできない。
7時ちょいすぎ、へべれけになったところでお会計。世間的にはまだまだの時間も、我々の一杯目は中山最終レース時だからお開きも仕方のないところ。
 
総武線に乗って帰宅。だいだい色の方と違ってすいている黄色い方は、酔った身にはやさしい電車なのでした。
 


小説・「文庫の棚を、通り抜け」 (1)

2012年03月18日 | 連載小説
 
《毎日のように書店に通う本之介が、文庫、新書以外の本を探すお話》
 
 
書店を巡って十数年。いや、数十年。本之介はすっかり文庫の棚に飽き飽きしてしまった。どういったものがどういう配置で売られているのか、あらかた把握できてしまったからだ。
もちろん多少日を置けば新刊の目新しい表紙を見つけることができるが、それだってぽつりぽつりといった程度だし、それに新鮮味を味わうために書店巡りの回数を減らすのでは本末転倒というものだ。本之介は、とにかく毎日書店を覗きたいのだ。
ということで、彼は、文庫の棚はゴトオ日以外無視することにした。ゴトオ日とは5と0の付く日にちのことで、職業ドライバー用語で道の混みあう日のことだ。もっとも本之介は職業ドライバーではなく、単に中4日間隔を取れば文庫棚にそこそこの動きがあって楽しく眺められるだろうと思ったまでだ。
 
で、この日は5も0も付かない日だったので文庫棚は通り抜けた。というより、足を踏み入れたのが大型書店だったので、文庫のある階には降りなかったというだけだ。
自然科学、歴史、経済……。眺めているだけでなんとも楽しい気分になる。いろんな形の本があるものだ。
乗り物関係の一角で立ち止まる。本之介は鉄道好きなので、ここでじっくり眺めようと思ったのだ。
大判の本が多く、背表紙を見ているだけでも面白い。平積みの本などどれも、どうです、見てくださいとばかりに表紙が美しい。鉄道本は写真が充実しているので、見た目がまず重要になる。さっき見た自然科学もそうだ。逆に経済や歴史の本だと見た目よりもタイトルやキャッチコピーが重要だ。
パラパラやっては棚に戻し、それを繰り返していたらあっという間に30分経ってしまった。間隔としては5分くらい。今、鉄道書籍は数多く出ているので興味を引いたのを次々見ていったら時間がいくらあっても足りない。
 
あまりいっぺんに見てしまっては次の楽しみがなくなってしまうと思い、本之介はこれはと思った本を棚から引き抜いてレジへと向かった。文庫以外を購入するのは久しぶりだ。
文庫は飽き飽きの本之介だが、会計時は早くも文庫のよさを再認識した。文庫であれば、ここで差し出す金額が半分程度で済んだはずなのだ。
 
帰りの電車に乗り込んだ彼は、そこでも文庫のよさを認めざるを得なかった。混んだ車内で実に読みづらい。片手で持っていると指が攣りそうになり、揺れの少ない駅間の走行中は両手で開いていたら、つり革が肩越しに奪われてしまった。で、停車する段には網棚の下の棒に片方の手を伸ばすことになるのだが、つり革につかまっていたときよりさらに条件が厳しくなる。結局彼は体勢の苦しさに耐え切れず、本を閉じてしまった。
これが軽い文庫だったら読み続けていられるのに、と思いながら彼は憮然と暗い車窓を見つめていた。