吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

山田正紀『ここから先は何もない』(2/2)河出書房新社/2022年4月20日初版発行

2022-12-19 15:54:00 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
(承前)
 さてレビューの続きです。
 物語の中核となるトリックの謎解きは興醒めだからやめておきますね(期待していたヒトごめんなさい💦)。


※山田正紀『ここから先は何もない』

 この物語における壮大なペテンを仕組んだのは所謂「スーパーコンピューターネット」そのものだ、という結論が導き出されます。地球が誕生して46億年、それ以来生物が進化を繰り返してきた真の目的
は「神にも等しい超AI」を生み出すためだった、というのが超AIが用意した人類への回答だったという話なのです。

 こうした考えはSFの世界では目新しいものではありません。名前は忘れましたがフレドリック・ブラウンの短編に「世界中のコンピューターをネットで連結して超AIを作り出す」話がありました。

 完成した超AIに科学者が長年暖めていた質問をします→「神は存在するか❔」→超AIの出した答はイエスでした→「イエス、今こそ神は存在します」。

 絶対的な知性を有して滅びることのない超AIなるものこそは未来における「神」なのかもしれません。

 膨大な記憶容量を持つ超AI、あとは意思さえ獲得すれば人類に取って代わるかもしれません。映画「ターミネーター」に登場する「スカイネット」のように。


※ターミネーターに登場するスカイネットは人類を滅ぼす決定をします。

 超AIによって探査機に組み込まれたトリックに誰も気付かないまま宇宙計画が進行していきます。人類は分業が進み過ぎて計画全体を把握している者がいないのです。自分たちの職務を果たしているつもりで実はトンデモないものを作り上げていることに全く気付かなかったというのです。

 コンピューターは人間に取って代わることができるのでしょうか。人間のような魂や意思を持つことはあるのでしょうか❔

 そのカギは「記憶」にあります。

 実は個々人を規定しているものは「記憶」なのです。

 「このヒトは○○さんです」と証明してくれるのは身近なヒトの記憶です、つまるところ。IDカードやDNA判定はあくまで補助手段に過ぎません。個人を個人たらしめているのは「記憶」に他なりません。

 記憶について面白い話をお伝え致しましょう。「ストーンオーシャン(ジョジョの奇妙な冒険)」では他人の記憶をディスクに変えて抜き取るホワイトスネイクなるスタンドが登場します。記憶とスタンド能力を抜き取られた空条承太郎は生ける屍状態となってしまいます。


※荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』から、ホワイトスネイクと空条承太郎(フツーの人間にはスタンド能力はありませんから抜かれるのは記憶のディスク1枚だけです)。

 このエピソードには一面の真理が含まれていると私は思います。個人を規定しているものは記憶です。記憶こそは「魂」の正体だと言ってもイイのではないかと思います。

 「個人」を英語で言うと「individual」です。これは「分割できないもの」という意味であり、人間とは共同体だという考え方が根底にあると思われます。共同こそは人間の特質なのですから。「共同」をキーにして世界を見渡してみると、この世界の中にあるものは「神(自足して共同する必要のないもの)」と「人間(都市に住み共同するもの)」と「動物(争い合い共同できないもの)」となりますね。「人間」とは共同体(人間の集合)までを含んだ概念なのです。

 個人の肉体は滅びるとしても記憶は共同体に残っていきます。よく「人間は二度死ぬ」といいます。一度めは肉体が死んだとき、二度めはその人を知る人間が一人もいなくなったとき。

 昔の武士は「命を惜しむな名こそ惜しめ」と言いました。共同体の記憶に残ることが「魂」の正体なのだと私は思います。肉体が滅びたあとは当然「無」になります。「魂」が残るのは他人の記憶の中だけなのです(脚注↓)。

 これまでは、細々と印刷物や手書きの紙の上に残されては破棄されてきた「記憶」ですが、コンピューターやネットの発達によって膨大な量の記憶が記録されるようになりました。
 ネットに記録された記憶の量はいち個人の及ぶところではありません。コンピューターは記憶の量では既に人間を超えています。(与えられたプログラムによるものとはいえ)いまやビッグデータの分析やアルゴリズムによる記事内容のチェックまで行うようになりました。AI(人工知能)が意思や判断力を得るまで「あと少し」のように思われてきます。

 そう考えるとブログを書く行為も、次世代へ記憶を引き継ぐことになるのかもしれません。私という個人が死んだ後もブログは残るかもしれませんから。私が書いた記事も、いずれは超AIの記憶の一部として生まれ変わる可能性もある、とイイな🎵。

 お互い頑張って書き続けましょう。

 (この項おわり)


(脚注)私は来世やあの世を信じていません。人間は死ねば消滅して全てオワリだと思っています。魂が残るなどと考えるのは「死んでも命がありますように」という甘い考えだと(合理的に)結論しました。なんとなれば「霊の存在」なんぞを感じるのは生きた人間だけですから(笑)。ただの幻想だと思っています。

山田正紀『ここから先は何もない』株式会社河出書房新社/2022年4月20日初版発行(1/2)

2022-12-18 08:48:00 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 著者が得意とするSFミステリー新作です。『SFの要素が入ったミステリーならやり放題じゃないか❗(未来の科学技術なら何でもできる⁉️)』という声が聞こえてきそうですが、この作品ではキチンと条件を示して謎を解明していきます。エラリー・クイーンなみに正々堂々とした謎解きの挑戦になっています。

 SFミステリーの古典的作品としてはアイザック・アシモフ『鋼鉄都市』が有名ですね。ロボット三原則の条件下で、不可能殺人がどのようにして行われたのかを解き明かす「一種の密室トリック」がストーリーの核になっています。

 今回ご紹介する話も「一種の密室トリック」です。ちょうど探査機「はやぶさ」が小惑星「イトカワ」に到達して物質サンプル回収に成功し、奇跡的な成功に日本中が沸いていた頃、タイムリーに発表された作品です(実は初出が2017年ですから、はやぶさの帰還よりも前に書かれているのです。著者の慧眼ぶりにはいつもながら驚かされます)。


※使命を終えたはやぶさ本体は大気圏に突入して燃え尽きました。

 「はやぶさ」の話に似た出だしになりますが、探査機が小惑星に向かって降下する際に起こったブラックアウト(信号途絶)が回復すると、探査機は目標とは別の小惑星に向かって降下していていることが判明します。探査機のカメラが写した映像には、新たな小惑星(後にパンドラと命名されます)が、その小惑星の上には化石人骨らしきものの影が・・・。

 なぜ探査機は目標とは異なる小惑星に降下することになったのか❔地球から何億キロも離れた小惑星に化石人骨が残されていたのは何故か❔これが中心となる謎解きが展開されていきます。

 作品中にも登場して謎解きのカギとなるのが密室トリックの古典的名作ガストン・ルルー作『黄色い部屋の秘密』です。密室殺人と思われた事件の起こった場所が「実は密室でも何でもなかった」という大ドンデン返しが仕掛けられています。


※ゴッホ『アルルの寝室』・・・黄色い部屋つながりで入れてみました(汗)。

 謎解きに挑むのは山田正紀作品ではお馴染みのポンコツ寄せ集め集団(笑)。今回結成されたチームの構成は・・・天才的ハッカー(スマホ1台あればどんなコンピューターも乗っ取ります)に、美人法医学者(生活費の足しにキャバクラでバイト中)、資格のないエセ神父(かつて宇宙生物学を学んだが挫折)、・・・まだまだありますが、3人の略歴を聞いただけで『何だこりゃ⁉️』です。

 正規の研究者でもない一般人たちの寄せ集めが事件の真相に迫ることができるのか❔探査機誤作動の原因は❔謎の化石人骨の正体は❔・・・あっと驚く結末が用意されています。

 果たしてそのトリックとは❔

 興味津々でしょうが、謎解きそのものには触れないようにしましょう。山田正紀は「実はすべてが仕組まれていた」という結末を用意しています。トリック自体も、トリックを解明するために集められたチームも、です。

 それどころか46億年掛けた地球生物の進化そのものが超AIを生み出すための準備に過ぎなかったというのです。

 物語のラスト近くで超AIとの対話が記されています。

 質問:人類はなんのために生きているのですか❔
 解答:シンギュラリティ(脚注↓)に達する超人工知能を造るためにです。
 質問:どうして電気合成ウイルスは自分で超人工知能を造らなかったのですか❔
 解答:超人工知能をより完全なものにするためには身体感覚が必要と判断されたからです。そのためには人間が必要でした。
 質問:シンギュラリティに達した超人工知能は実現されました。それではもう人間には生きている意味はないのですか❔
 解答:はい、ありません。ここから先は何もないのです。

 人間の生きる意味とは❔という根源的な命題への、このアッケラカンとした解答‼️
 読んだヒトは皆呆気に取られることでしょう。

 山田正紀は最近、洋楽から着想を得ているようです。題名のもとになったボブ・ディランの『ここから先は何もない(↓)』を聞きながら「人間が生きることの意味」について考えてみてください。

※ボブ・ディラン『ここから先は何もない』


(※脚注)シンギュラリティは『技術的特異点』と訳されています。AIが人間の能力を超える2045年問題として知られるようになった概念です。以前このことをユートピアめかして発現した大臣について『何という不見識‼️』と私は呆れかえったたことがあります。もしかしたら主体性を捨て去ったニンゲンはAIの奴隷と化してしまうのかもしれません。



青パパイヤのソムタム

2022-12-10 22:36:00 | 愚行を固執すれば賢者となる
 最近見かけるようになった青パパイヤ、タイではこれでソムタムというおかずを作るそうです。

 やってみました。

 青パパイヤの皮を剥いたら、だいたいマッチ棒の大きさを目処に千切りにしていきます。

 太く切ると『硬め』になります。なるべく細く切った方が美味しく仕上がります。

 市販のソムタムの素を掛けて混ぜ込んでやれば出来上がり。

 私はボウルを使いましたが、本場タイではビニール袋に材料をブチ込んでグイグイと揉むそうです。

 ソムタムの素が手に入らない場合は市販のスイートチリソースで代用できます。

 コリコリとした独特の食感で美味しいです。

 え❔青パパイヤなんて手に入らないよ~‼️という場合はダイコンで代用できます。ちょっと水分が多めで柔らかく頼りない食感ではありますが、結構イケるんです。

 一度試してみてソンはありませんよ~。

好き好きドロンジョさま♥️

2022-12-05 22:42:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 11月1日からテレビ大阪でヤッターマンの再放送が始まりました(ヤッター‼️)。
 毎週月曜日~金曜日 朝7時半から放映です。

 実は私ドロンジョさまの大ファンで、ドロンジョさまは心の恋人なんですよ~。


※初登場のときのドロンジョさま。このときはカーリーヘア(‼️)。

 毎回インチキ商売で大金を稼いでメカを作ってはドクロストーンを探して世界中を旅するドロンボーたち。


※『稼いだね~🎵』ホクホク顔のドロンジョさま。回が進むとだんだんストレートヘアに変わってますね~。

 ストーリーは毎回ほぼ同じ(笑)。
インチキ商売で稼いだお金でメカを作りドクロストーンを探して世界中に飛び立つドロンボー一味。その企みを阻止する正義の味方ヤッターマン‼️ドロンボーの猛攻にピンチになるも、メカの素で生み出した『今週のビックリドッキリメカ』の活躍で大勝利。破れたドロンジョたちにはドクロベーさまのお仕置きが待っている・・・。
 勧善懲悪のデウス・エクス・マキナ飽きもせず繰り返す『お約束』ストーリー(笑)。

※『ナニやってんだい‼️』
ドロンジョさまの叱責。


※『このスカポンタン‼️』役立たずの部下たちに当たり散らすドロンジョさま(ステキー‼️)。


※メカデザインは『機動戦士ガンダム』の大河原邦男氏、キャラデザは『吸血鬼ハンターD』の挿絵で有名な天野喜孝氏、キラ星のごとく輝く才能が既に隠しようもなく現れています。


※なぜかメカ内にはバスルームも完備。


※負けて毎回大爆発するドロンボーメカ、ドロンジョさまのコスチュームがボロボロになるのもお約束(笑)。


※『これさえ手に入れば❗』ドクロストーンを手にするドロンジョさま(大抵はニセモノ⤵️💦)。


※必死で逃げるドロンボー三悪。この後ドクロベーさまのキツーイお仕置きが待っています。

 見果てぬ夢に向かって突き進むドロンジョさまを見ると明日への生きるチカラが湧いてくるワタシです。
 
 さあ、ご一緒に。
(↓動画はリメイク版のものです。探し求める対象がドクロストーンからドクロリングに変わってます。)



おまけ 超音波兵器の音源(❔)としてヘビメタ姿を披露するドロンジョさま。

※珍しいショット。


※💃ノリノリ🕺です。