吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

『護憲』という選択肢さえ失った日本。

2017-09-28 12:19:25 | 日々の私の主張とか考察とか

 東京都知事の小池氏が『希望の党』を立ち上げて衆議院選挙の台風の目になるのでは、と囁かれている。


 これに各野党が付き従い、自民党に対抗する勢力になるかもしれない、との憶測です。

 ちょっと待てよ?小池氏といえば防衛大臣も務めたバリバリのタカ派で、実のところ安倍なんかよりもよっぽどアブない存在かもしれないのです。
 シン・ゴジラで(ゴジラへの武力行使を首相に迫ってド迫力の)余貴美子演じる花森防衛大臣のモデルになった人物なのですから。


 案の定『原発ゼロ』はイイとして、当然のごとく公約には『憲法改正』が掲げられています。
 これに今まで『憲法改正反対』を掲げていた民進党が、選挙に勝てるなら党を解体してでも合流したいとの意向を示しているのです。


 民進党には(もともと自民党だったヒトたちの集まりなので)全く期待してませんでしたが、これはあまりにも節操がない。すでに『櫛の歯を挽くように』離党者が続出しており『沈みかけた船にはネズミも残らない』といった状況で、もはや解体も間近かと思えてしまいます。
 
 こうしてみると改憲勢力は自民党公明党日本維新の会自由党に加えて希望の党が名乗りをあげ、民進党はほぼ瓦解、護憲を唱える政党はいまや虫の息の社会民主党と独自路線の日本共産党しか残っていない。

 憲法9条護持と改憲反対を訴えるという選択肢さえ失われてしまった日本の行く末が案じられてならないのです。


筒井康孝『銀齢の果て』新潮社(2006年1月20日発行)

2017-09-21 17:57:55 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 2017年敬老の日のニュースから。

 『総務省統計局は2017年9月17日、翌日の9月18日に敬老の日を迎えるにあたり、各種統計から見た日本の高齢者動向をまとめたレポートを発表した。その内容によれば日本の65歳以上(高齢者)の人口は2017年9月15日時点で3514万人となり、総人口比は27.7%となることが分かった。総人口に占める割合が1/4を超えたのは2014年から継続して4年目連続となり、前年からさらに人口・割合共に数字を上乗せし、過去最高となった

 そのうち、この小説が絵空事ではなくなるかも・・・。


 中央人口調節機構(CJCK)職員による説明

 『わたくし、厚生労働省直属の中央人口調節機構つまりCJCKの都内処刑担当官で斉木又三と申します。ご承知のように、二年前から全国で実施されております老人相互処刑制度、つまり俗にシルバー・バトルと言われておりますこの殺しあいは、今回は日本全国九十九カ所の地区、都内では三カ所で一斉に開始され、そのひとつがこのベルテ若葉台なのであります。ひひひひ。いや失礼。この制度は言うまでもなく、今や爆発的に増大した老人人口を調節し、ひとりが平均七人の老人を養わねばならぬという若者の負担を軽減し、それによって破綻寸前の国民年金制度を維持し、同時に、少子化を相対的解消に至らしめるためのものです。

 ここに『老人は老人であることそのものが罪である』という考えに基づき、老人が老人を殺し合う壮絶なバトルロイヤル(*註1)が始まったのです!

 平和なご近所が突然、マカロニ・ウエスタンばりの戦場に変貌する!

 "There can be only one."(*註2)・・・生き残れるのはたった一人だけなのだ!

 蔦屋のご隠居である宇谷九一郎は、バトルに備えて購入したワルサーを懐に着流し姿で親友宅へ赴き、世間話をしながら親友を射殺する。苦しまずに死んだことを確かめると、自宅に帰って自作した町内地図を広げ、助っ人(*註3)の猿谷甚一と作戦を検討する。そこにはゲームのように対戦相手の情報が書き込まれているのだった。

 『例えばこの是方昭吾七十四歳という人物だが、もと自衛官だったそうだから武力5、三佐だったらしいので頭はいいだろうから知力4、金はあまりなさそうだから財力1だ。この財力というのがなかなか莫迦にならぬ要素でな、金さえあれば武器が買える

 何とかして生き残りたいのは人情です。

 ある者は闇ルートで拳銃やライフルを買って武装し、ある者は趣味の猟銃を持ち出し、・・・中には捕鯨砲や重機関銃を据え付けた家まである(!)。手近なところでは包丁やナイフ,スコップなどで戦うのですが、何せ体力の衰えた老人のこと、なかなか致命傷にはならず、かなり凄惨な展開に・・・。そしてバトル終了の後、覚悟を決めた老人たちの逆襲へと物語は続きます。

 この話で描かれていくのは、もはや『誰が生き残るか』ではなく、登場人物それぞれの『死にざま』です。
 潔い死にざま、情けない死にざま、突然の死、惨たらしい死、改めて『ああ、人間は死ぬものなんだ』と思い知らされます。

 この小説、どうして映画化されないんでしょう?若い衆が孤島で殺しあうような映画は結構あるのに・・・。
 やっぱり、あまりに切実すぎるのと、70歳を超えた名優(と言われるヒトたち)が殺し合いなんか演じてくれないからでしょう。

 老人問題の解決策には・・・なりませんね。(^-^;ゞ
 ここはひとつ(現実にはありえないことと承知のうえで)アハハと笑って楽しんで読むのが一番です。





 註1:バトルロイヤルでは、最も強い者が勝つワケではありません。だいたいにおいて最初に、弱い者が2~3人で寄ってたかって最も強い(であろう)相手を倒すのがバトルロイヤルの常道なのです。で、大抵の場合3~4番目に強い者が勝ち残ります。勝ち残るために"Fate/0"や"Fate/Stay Night"なみの共闘や裏切りが行われるのがバトルロイヤルの面白みです。

 註2:これは映画『ハイランダー 悪魔の戦士』で決闘のとき使っていた台詞を拝借しました。気が付いた人は気が付きましたね。なお、映画『ハイランダー 悪魔の戦士』の音楽は、あのQueenが担当しています。
 
 註3:シルバーバトルで勝ち残った者は『特典として他地区のバトルに参加できる』との設定です。

 ご参考:老人問題に言及した過去記事大口病院 点滴連続殺人事件の深い闇


A・E・ヴァン・ヴォークト『非(ナル)Aの傀儡』創元SF文庫(新版)2016年3月25日初版発行

2017-09-15 18:28:48 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護

 以前感想を書いた『非(ナル)Aの世界』の続編です。



 『非(ナル)Aの世界』では偽の記憶を植え付けられた主人公ギルバート・ゴッセンが『自分はいったい何者なのか?』を探求するストーリーでした。
 その続編って!?『前作でギルバート・ゴッセンの主体が明らかになって一応の解決をみたのに、この後どうやって続けるんだ?』という疑問が湧くのは当然でしょう。

 今回はまったく趣を変えて自分に備わった『予備脳』の力を引き出せるようになった主人公が活躍する波乱万丈のストーリーになりました。何といっても『予備脳』の力を解放したゴッセンは瞬間移動できるようになってしまったので(人間の肉体という限界はあるものの)ほぼ無敵です。落下するエレベーターから瞬間移動で脱出()したり、毒が入っている(かもしれない)グラスを相手と入れ替えたり、できちゃうンです。

 しかし油断大敵火がボウボウ・・・『』の工作員の仕掛けた罠に陥ったゴッセンは別の惑星の牢獄へと転送されてしまうのですが、その途中で(なぜか)ゴッセンの意識だけが、敵の傀儡アシャージン殿下の肉体に移されてしまう。『』はゴッセンを捕らえたつもりだったが、牢に送られたのは意識のない抜殻の肉体だけだったという訳です。

 アシャージン殿下の躰を通して大帝国の内幕と戦争の背景を理解するゴッセンだが、時間の経過とともに、これが『何者かに仕組まれた出来事』だと確信する。『自分はクイーンのような強力な駒には違いないが、どこかにこれを操るチェスの指し手がいるはずだ』と。
 それで今回の題名は『非(ナル)Aの傀儡(かいらい)』となった訳です。

 だいたいの相関図を作ってみました。


 前作でも地獄巡りの案内役だったパトリシア・ハーディーとその夫エルドレッド・クラングが登場して重要なカギを握ってます。
 前作ではパトリシア・ハーディーは連盟大統領の娘だったはずですが・・・細かいことは気にしない(いいのか?)。
 前作とは一転して、肩の力を抜いて楽しく読める娯楽大作になっちゃいました。


『バベルの塔』展(7月18日~10月15日/国立国際美術館)

2017-09-11 19:19:09 | 日々美しいものに触れようよ
 『昨年がクラーナハの年なら、今年はブリューゲルの年だ!』誰が言ったかって!? いま私がそう決めました。



 『一生に一度は見たい名画』と銘打って来日!これは是非見ておかないと・・・いそいそと中之島に向かったのだった。

 会場前には大友克洋の図解『INSIDE BABEL』が展示され、いやがうえにも期待が高まります。


 ※大友克洋版『バベルの塔』内部構造を想像して描いたもの。

 地下3階へと降りて行き、いよいよ会場へ・・・。

 お目当ての『バベルの塔』は最後の方、最初はネーデルラント絵画を観て回ります。
 ボスの『放浪者』と『聖クリストフォロス』が最初のヤマ場。

 『放浪者

 放浪者は人生の選択にあたって、思い入れタップリに娼館を振り返る・・・うんうん分かるナアその気持ち。

 『聖クリストフォロス

 聖クリストフォロスは幼子を背負って河を渡ろうとしたら、幼子が実はキリストでだんだん重くなり・・・という漱石『夢十夜』に出てくる『青坊主』みたいなお話(近いけど・・・違うだろっ!)。

 お馴染みのブリューゲル作品をもとにした版画『大魚は小魚を呑む』にもお目に掛かれます。

 ※『大魚は小魚を呑む』円内のモンスター・・・可愛いと思いませんか!?

 さて、いよいよ『バベルの塔』ですが、本物は実に小さい!近づいてもよく分かりません。

 ここは並ぶのをやめて列の後ろから肩越しに鑑賞し『小さい絵なのに凄く存在感がある(!)』絵全体の印象を確かめるのがベスト!

 ※わざわざ並ばなくてもこの感じで見ることができます。

 長い行列に並ばなくてイイうえに、2列目から肩越しに鑑賞する分には時間制限がナイのがウレシイところです(列に並ぶとどうしても『立ち止まらないでください!』状態になってオチオチ観ていられません)。

 細部を鑑賞したい方のためには超拡大した複製画が用意されていますので、これとCG映像で確認するのが正しい鑑賞法です。


 ※『バベルの塔』は推定500メートル以上、スカイツリーよりもやや低い高さまで建設が進んでいます。

 全体に上の方が赤っぽく見えるのは煉瓦がまだ新しいから、よく見ると漆喰(白)と煉瓦(赤)を運び上げているラインが確認できます。

 細部を見ていくとキリがないくらい描き込んであり、気が遠くなりそうな労力がつぎ込まれているのが分かります。

 中央(第4層)やや右の教会部分(これでほぼ実寸大か?それより少し大きいか?くらいです)。

 さらに拡大・・・

 凄い!凄過ぎるっ!


 ※超々々拡大した複製模型でも十分鑑賞に堪えるって・・・いったいどんだけ描き込んであるんですかぁ!?と驚きます。

 鑑賞が終わったら売店へ。今回の展覧会はグッズが充実しているのも楽しい点です。

 お手頃価格のエッグスタンド。さて、どれにしますか・・・・。


 ※やっぱりコレです!

 全体の構成は少し物足りない感じがしないでもありませんが、メインの3点は掛け値なしに充実!
 見逃すと後悔する展示会です。

『開国への潮流(開港前夜の兵庫と神戸)展』8月5日~9月24日/神戸市立博物館

2017-09-04 12:31:38 | 日々美しいものに触れようよ

 神戸開港150年記念事業の一環として、兵庫と神戸の歴史に関する展示が神戸市立博物館で開催されています。


 ※入口に設置された看板

 ここ神戸市立博物館には、日本と神戸の歴史を縄文時代から現代にいたるまで示した常設展があって、これに銅鐸とか一級の資料が展示されているのですが、今回の特別展は、いってみればこの『常設展が延長して詳しく説明されている(江戸後期から明治初期)』イメージです。で、資料としては一級なのですが、実に地味~(!)な展示になってしまいました。学芸員の方も頑張っているのは判るンですが、残念なことです。

 実は併設されている『絵画と古地図で読み解く日欧交流』展の方が面白い。


 ※教科書にも載っているフランシスコ・ザビエル像はここにあります。

 ここに古地図がかなりの量展示されているのですが、西洋人にとってアジア(特に日本)がどのように捉えられていたかが分かってとても面白いンです。日本が丸い島(利尻島ですか!?)として表示されていたり、日本の東に『銀の島』なるものが描かれていたり、また世界全図には各国の風俗や服装の図示が添えられたり、この誤って捉えられた日本像を見るのが、とても面白かったのです。

 土曜日にはサタデー・トークもあり、偶然参加することができたのですが、展示品の詳細な解説も聴くことができます。幸い観覧者もそう多くないので神戸の歴史を知るいい機会になります。入館は土曜日午後2時からのサタデー・トーク狙いがベストです。


 ※8Kスーパーハイビジョンによる展示・・・8Kって一体!?
  私は4K(キツイ,汚い,危険,給料が安い)までしか思いつきません(違うだろっ!!!)。