吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

マイク・ホッジス監督『フラッシュ・ゴードン』1980年アメリカ

2021-11-29 20:30:00 | 映画・ドラマを観て考えよう
 クイーンの特集にかこつけてNHKのBSで久し振りに放映されました(楽曲がQueenでなければ再び日の目を見ることはなかったであろう映画です⤵️💦)。

 宇宙の彼方からモンゴ帝国のミン皇帝が地球に攻撃を仕掛ける。小型飛行機搭乗中に攻撃を受けたフラッシュ・ゴードンは負傷した操縦士に代わって飛行機を不時着させる(をいをい💦)。

 飛行機が胴体着陸した先に(タマタマ)あったのが『キチガイ博士(失礼‼️)』と呼ばれてNASAを追放された異端科学者の研究所。博士は『天変地異は外宇宙からの攻撃(アタック)だ』と主張し『カウンター・アタック(反撃)だ❗』と言って手製のロケットで飛び立つ(無茶でしょ❗)。

 たまたま同乗する羽目になったフラッシュと美女。冒険活劇のはじまりはじまり。・・・と言うとワクワクするようなストーリーを期待してしまいますが、私にはサッパリ響きませんでした。

 問題は脚本でしょう。50年代のパルプマガジンをなぞったストーリーはあまりにご都合主義で『そりゃないだろっ❗』とツッコミどころ満載です。

※原作となったパルプマガジンの表紙

 スターウォーズが公開されてタップリ時間が経ったアトなんですから、もう少し何とかならなかったものでしょうか❔
 レトロに振るならレトロに、現代的にアレンジするなら現代的に、徹底すれば良かったのに中途半端でどっちつかずの作品になってしまいました。

 しかしカネ掛かってますなあ、画面はムチャクチャ豪華です。さ~ら~に~❕脇役に無駄に豪華な配役陣を連ねてしまったせいで、主役のサム・J・ジョーンズの大根ぶりはかりが一層目立つ駄作になってしまいました。

※敵の宮殿に乗り込んだ一行はたちまち捕虜に(トーゼンです)。

 騒動を起こしたフラッシュは捕らわれてタチマチ死刑になりますが、フラッシュに恋した皇女のおかげで蘇る(何と執行された死刑が偽装されていたのです⁉️)。
 前フリが全然ナイので、ご都合主義の極みにしか思えません。まるで007ぢゃないですか。そういえば王子役で007俳優のティモシー・ダルトンが出演しています(これも無駄に豪華な配役⤵️💦)。

※無慈悲なミン皇帝を演じるマックス・フォン・シドー(『エクソシスト』のメリン神父やら『栄光への脱出』のドイツ軍将校と多彩な役を演じた名優です)


※鷹人間(羽根がある❕)バルタンたちの協力を得てフラッシュは反乱を指揮する

 バルタンたちの協力を得たフラッシュは帝国戦艦を乗っ取り、ミン皇帝の宮殿に特攻(‼️)。内部協力してくれた王子のおかげでバリアーが消滅し、うまうまと宮殿に飛び込んだ戦艦の衝角に突き刺され皇帝は死亡。地球は救われめでたしめでたし・・・と『これでもかっ❕』と言うほどのご都合主義😱❕

 流石『ディーノ・デ・ラウレンティス製作』だけあって実にクーダラナイ大作です。興行的にもイマイチだったと記憶しています。

 (気を取り直して)映画はともかくCDはイイですよ。
 ぜひ聴いて楽しんでくださいね。


 アルバム収録曲からフラッシュのテーマをどうぞ。


 映画のラストは謎の人物(手だけしか写らない)がミン皇帝のパワーの源だった指輪を拾いあげるシーンで、続編製作を暗示するものでしたが、続編が作られることはありませんでした(⤵️💦)。

今日はなんの日・・・今日は『フレディー・マーキュリーの命日』です。

2021-11-24 07:48:00 | 洋楽邦楽を問わず音楽はイイ
 没後30年で記録映画製作等さまざまなイベントが目白押しのフレディー・マーキュリーの今日が命日です。

 映画『ボヘミアン・ラプソディー』の大ヒットで今ぢゃ知らないヒトはいないと思いますが、伝説のロックバンド『Queen』でヴォーカルとして活躍、エイズに罹患しカリニ肺炎の悪化で亡くなりました。享年45歳(なんて若い‼️)。
※ありし日のフレディー・マーキュリー

 やっぱり髪が長かった頃の写真を飾りたいワタシです。この頃からのファンだったワタシは『ザ・ゲーム』でいきなり短髪口髭のスタイルを見て『ゲッ‼️(これじゃスーパーマリオぢゃん‼️)』と思ったクチです。

 さあ、今回はベスト盤なんかに収録されない初期の曲を聴いていただきましょう。
 『グレイト・キング・ラット』です。



※Queen『Great King Rat』

 聴きなおしてみると、歌詞が実に意味シンなのです。

 🎵
 偉大なネズミの王が今日死んだ
 5月の21日に生まれ落ち
 四十四の誕生日に梅毒で死んだ
 始終憎まれ口を叩き続けた
 アイツはそうさ
 淫売の息子で
 いつだって『お尋ね者』だった

 いま聴くとエイズで45歳で亡くなったフレディー自身と重なってくるものがありますね。

 さあ、今日はみんなで御冥福をお祈り致しましょう‼️

山田正紀『フェイス・ゼロ』(後半)竹書房文庫/2021年6月25日初版第一刷発行

2021-11-15 10:53:00 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 お待たせしました後半です。
 前半よりはやや長めの短編作品が7篇あつめられています。

7.わが魂、癒えることなく
8.一匹の奇妙な獣
9.冒険狂時代
10.メタロジカル・バーガー
11.フェイス・ゼロ
12.火星のコッペリア
13.魔神ガロン -神に見捨てられた夜-

 表題作『フェイス・ゼロ』は現代のロボット工学者が文楽に使うカシラの製作を依頼される話です。演じるときの角度やしぐさによって表情を変えられるカシラの製作を依頼された科学者は、(本来は能面のように様々な表情に見えるカシラを作るべきだったはずが・・・)見る者に特定の表情を感じさせない『フェイス・ゼロ』のカシラを製作してしまう。いわば徹底した無表情、何の感情も表さない究極のカシラを作るのですが、そのカシラはあまりの非人間性のため、見た人間の精神を破綻させてしまう。こんなストーリーの短編です。

 推理小説としては、ちょっと動機がヨワいかな~❔と思うところもありますが、意外なトリックと展開でグイグイ読ませます。

 『一匹の奇妙な獣』は作者自身が失敗作と評する珍しい作品です。確かに短編に仕立てるにはあまりに壮大なストーリーで、ぜひ長編に仕立て直して欲しいとワタシなんかは思いますが、作者自身が『忘れてしまった』という実験作です。フランツ・カフカの使用していた言語(プラハ・ドイツ語)の特殊性に注目して組み立てられたストーリーの発想にはアッと驚くことでしょう。作者の広汎な知識には毎回脱帽です。

 『冒険狂時代』は(そんなんあるワケないだろっ‼️とツッコミたくなる)スラップスティックなストーリーで『かんべむさし』風な短編です。
 手塚治虫作品へのオマージュである『魔神ガロン』も収録され、作品集に彩りを加えています。

 ワタシが一番好きなのは『わが魂、癒えることなく』です。これは作者の人気長編『火神(アグニ)を盗め』によく似た構成で、ダメ人間が集まってミッションに挑むというもの。『火神~』では知恵を集めて(手製の臼砲を作成して)敵の戦車まで撃退してしまいますが、こんなことが成功するのは小説の中だけ、『わが魂~』では主人公を除く全員が悲惨な最期を遂げてしまいます。
 『それ以外のどんな未来もなかった』という結びに無念さがひしひしと伝わってくる作品です。

 この作品は過去へのタイムトラベルを扱っているのですが、気になったフレーズがひとつ。
 『私は世界を認識する装置であり、世界を閉ざす地平線でもある』から『唯一無二の私は(中略)世界のうちに含まれているが、世界を超越して「ある」といっていいだろう』という一節です。作者はこの考えをもとに、過去に戻っても過去の自分には会えない、としています。すなわち唯一無二が2つあってはならない、と。

 実はこれはヴィトゲンシュタインの考え(世界と生はひとつである)に非常に近いのです。私がこの高名な哲学者を最初に知ったのは、やはり山田正紀のデビュー作『神狩り』でした。冒頭でいきなり登場したヴィトゲンシュタインが『語りえぬものについて、語るべき時がきたのだ』て呟くシーンから始まるこの小説は、言語(と論理)構造の解析をバックグラウンドに『ゲームの駒(人類)がゲームのプレイヤー(神)と戦って勝てるか❔』というテーマに挑戦した意欲作でした。

 山田正紀のアイデアにナマに近いカタチで触れられる特異な作品集です。
 オススメします。

山田正紀『フェイス・ゼロ』(前半) 竹書房文庫/2021年6月25日初版第一刷発行

2021-11-06 10:41:00 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 私の好きな山田正紀の、今回は短編集です。全体構造として大雑把に分けると前半と後半の二部構成になっています。

※山田正紀『フェイス・ゼロ』竹書房文庫/2021年6月25日初版第一刷発行

 前半はごく短い、いわゆる『ショート・ショート』という作品を6編集めたものになっています。どれもアイデア勝負のごく短い作品です。

〈前半6編の構成〉
1.溺れた金魚
2.夢やぶれて(あるリストラの記録より)
3.トワイライト・ジャズ・バンド
4.逃げようとして
5.エスケープ・フロム・ア・クラスルーム
6.TEN SECONDS

 タネ明かしをしてしまうと『物語の語り手だったワタシは既にもう死んでいました』という話が多く収められています(ヒトが死んだ後も意識って残るンだろうか❔その事の方がワタシには気になりました)。

 それらのストーリーは、昔あった白黒テレビ番組『トワイライト・ゾーン』に触発されたかのような作品が多いのです。あ、作者の年代のヒトには邦題として設定されていた『ミステリー・ゾーン』の方がなじみ深いことでしょう。

 書評にも『この作品を、山田正紀によるかの番組への挑戦状ではないだろうか・・・と思って読み出した読者は、やがて、あの白黒映像を遥かに超えた、とてつもない驚きに襲われることになるのですが、それはまぎれもなく・・・山田正紀ゾーンなのです』とあります。楽しんでください。

 さて、ここからは書評を離れてミステリー・ゾーンに関する私の思い出を記してみます。

 ほとんど忘れてしまいましたが、ひとつ覚えているのが二次元人のエピソードです。次元の裂け目から切り紙細工のような姿をした二次元人がやってきます。

※らくがき・・・私の記憶の二次元人(眼が4つある❗切り紙細工のようでカラダに厚みがなく、壁をスイスイ通り抜けられる)

 不気味な外見とはうらはらに敵対的ではなく、博士は帰り道がよく分かるよう二次元人に眼鏡をプレゼントするのです。今まで壁を通り抜けていた二次元人が眼鏡(モノクル)を着けた途端に(カラダに厚みができて)壁を抜けられなくなるシーンがなぜか印象に残っています。

 近年スピルバーグ監督の手で映画版が作られましたが、白黒時代の暖かみのある特撮が楽しめるシリーズだったと思います。

 後半を彩る各作品については次回また記すことに致します。乞うご期待。

 (つづく)