吉良吉影は静かに暮らしたい

植物の心のような人生を・・・・、そんな平穏な生活こそ、わたしの目標なのです。

養老孟司&中川恵一『養老先生、病院へ行く』株式会社エクスナレッジ(2021年4月22日初版第二刷発行)

2021-08-27 07:43:00 | 紙の本を読みなよ 槙島聖護
 高名な解剖学者である養老先生が心筋梗塞を発症して入院しカテーテル手術によって一命を取り留めた一件を振り替えって、文章と対談で記録したもの。
 こういう軽いエッセイ本はあまり買わないのですが、私の病気を知った人が(奇特なことに)私に『読め❕』と差し入れてくれたのです。

※養老孟司&中川恵一『養老先生、病院へ行く』株式会社エクスナレッジ(2021年4月22日初版第二刷発行)

 読んでみるとさすがに養老先生の書いた文章はとても面白い。他の部分とは大きなギャップがあり、読者を引き込む養老先生の筆力に感心する(変な)構造の一冊です。

 養老先生の洞察はさすがに鋭いです。
 『現代医療は人体を自動機械とみなして統計により判断している』と言い切り、『現代医療のシステムに取り込まれたくない』と病院に行くのを嫌がっていた先生。

 それが検診で心筋梗塞が見つかり、急遽入院となるワケです。死を強く意識して『人生に意味はあるのか』と自らに問い、『ヒトはただ生きて死ぬだけ、意味など問うのは愚かなこと』と達観する。さすがの哲学者です。

 人体を自動機械とみなすデカルト以来の伝統に疑問を投げ掛け、『世界の意味はこの世の外にある』というヴィトゲンシュタインと同じ結論に、趣味の昆虫観察を通じて至ったというのです。

 きっかけは『何でこんな変な虫がいるんだろう』と思ったことだというから笑ってしまいます。そのうえで『意味を見いだそうとするのは、きわめて都会的な行為で反自然的』でこれは人間がアタマで考えたこと、もともとの『自然には意味などない』と断じます。

 それでも病気になれば(嫌々ながらも)病院に行くしかないのが現実です。
 この本を読めば入院や手術も少しは怖くなくなるかもしれません。病気に倒れる前にお読みください(笑)。

お道具ご披見『刷毛目高麗三島手夏茶碗』

2021-08-26 10:46:13 | 日々美しいものに触れようよ
 一般に『三島』と呼ばれる茶碗です。
 夏茶碗として使っていますが、これは『見立て』によるもので、元々は普段使いの器であったはずのものでしょう。

 『三島』とは器の土に型押しして凹んだ部分に白い土を埋め込んで削り出したもので、いわば土による象嵌です。

※裏返すと刷毛目が明らかになります。

 しかし、夏茶碗はお茶が立てにくい❗
 私はともかく、盛大に泡立てる裏の茶人は毎回苦労していることだろうと、余計な心配をしています(笑)。

お道具ご披見『青磁三島茶碗二種』

2021-08-19 16:02:00 | 日々美しいものに触れようよ
 ご覧の通り量産品です。名前の通りのものかも自信がありません。私は三島を産地ではなく技法の名前と思っているので、よくご存じの方がいらっしゃればコメントでご指摘戴ければ幸甚に存じます。

 私の理解では三島茶碗は本来李朝高麗の品らしいのですが、土で象嵌する技法が日本に伝わり各地で造られるようになったと記憶しています。

 李朝のものは更にこの上から刷毛目があるものが多いのですが、これは滑らかな釉薬による仕上げになっています。釉薬が緑かとも思いましたが、ひょっとしたら釉薬は透明で土の色が緑なのかも、と思います。

 可愛い絵付けがあるように見えますが、これは器の土に型押しして、凹んだ部分に白い土を埋め込んで削り出したものです。いわば土による象嵌ですね。一般にはこの技法を『三島』と呼んでます(と記憶しています)。


※鶴3羽を表したものがコレ。

※こちらは花の意匠です。

 気軽に使える茶碗として愛用しています。




お道具ご披見『備前焼茶碗銘夕照』

2021-08-17 16:56:00 | 日々美しいものに触れようよ
 ご覧の通り備前焼の茶碗です。
 私の持つ茶碗では唯一これが木箱付き。作者の名前も入っているのでいささかマシな部類でしょう。
 土肌は備前焼独特のザラザラした感触で手に持つと指先の感覚が鋭くなったように感じます。
 片側に緋があってこの茶碗の目を引くポイントになっています。言ってみれば焼きムラなのですが、これを景色として楽しむのが茶の湯での慣わしとなっています。

※緋の入ったこの側が正面になります。

 亭主はこの正面を客に向けて勧め、客はこの正面を避けて口を付けます。

 実はこのやり取りには実にイヤらしい心根が秘められていて、亭主と客の間には丁々発止の心理戦が展開されているのです。

亭主『どうぞ(オマエ、これが分かるかな?)』
客『頂戴します(もちろん知ってますよ)』
亭主『ごゆっくり(見かけによらずナカナカやるな❗)』
客『よいお服加減でした(こんなの常識ですよ)』

 さて、このようにお互いの知識や教養を競い合うのが茶道なのですが(いってみればオタク同士の会話ですね)、時には亭主の趣向がどうしても読めないときもあります。そんなときはどうするか?

 実は素直に聞けばよろしい。亭主は内心(くっ、この客は、ワシを試すつもりだな)と思いつつも丁寧に由来を説明してくれます。それがルールなのです。

 この茶碗は私が勝手に夕照と銘を付けましたが、この大きな丸い焼きムラを日輪に見立てて付けました(実は銘は本来テキトーなのでこれで充分です)。

 亭主が銘を『夕照』と説明したら、客は『近江八景から取られましたか・・・』と応えると、亭主は(うんうん)とひとりごちる(こいつ、なかなかやるワイ)、なかなかに気の抜けない世界です。

お道具ご披見『油滴天目茶碗モドキ(笑)』

2021-08-15 15:20:00 | 日々美しいものに触れようよ
 油滴天目茶碗といえば国宝ですが、今回ご紹介するのは(もちろん)本物の、ではありません(あったらエライことです)。

 実はこの茶碗、5月に亡くなった義父から貰ったものです。退職後に趣味で始めた陶芸に打ち込むこと約20年、『ようやく会心の出来になった』と言っていた作品です。

 手にしたとき目を疑いました。
 黒釉の茶碗ですが、全体に模様が浮き出ていて、光の当たり具合で微妙に変化します。『こ、これは~‼️』名に聞く油滴天目茶碗もかくやという出来だったのです。

※こう置くとホンモノに(笑)

 やはり20年も修練を積むと大したものです。焼くときの微妙な化学反応でこのような斑文が出たに違いありません。

 まさに窯変天目茶碗(微妙に字が違うのがミソ)です。
※裏から見るとこうです。天目茶碗独特の小さな糸尻、専用の台に載せて使います。

 以来私はこの茶碗を『油滴天目モドキ』と名付けてお茶を戴くときに愛用しています。