みずいろの旅

やさしいおもいのはねをひろげて

みずいろ詩集 No.24 ~猫に手を貸したい~

2008-02-11 23:02:21 | みずいろ詩集
 猫が夜空にパンチしている。
 繰り返し繰り返し。
 見上げれば満天の星空。
 星をつかもうとでも言うのか。
 猫はこちらに一瞥をくれて去っていく。
 『悪いか?』とでも言いたそうだ。

 猫は屋根に上り、空に手を伸ばす。
 あっちがダメならこっち。
 こっちがダメならそっち。
 そんな具合に。

 誰がそれを無駄だと言い切れるのだろう。
 今はわからない。
 彼にも僕にも誰にもわからない。
 だから、疲れるまで、飽きるまで続ければいい。
 つかめないとわかって、八つ当たり目的で空にパンチするやつよりよっぽどいいだろう。

 星をつかみたい。
 その心意気は褒めてやろう。
 その気持ちは僕も同じだよ。
 だから手を貸してやろう。
 僕は屋根に上り、猫を抱えて天高く掲げた。
 どうだい。少しは近づいただろ。

 猫越しに見た空は昔と変わらない。
 星はずっとずっと遠くにある。
 降ってこない限りは触れることができそうもない。
 そう思った少年期の僕は、空を揺さぶれば星が落ちてくるんじゃないか、なんて空想していた。
 あの頃は真剣だった。
 この猫のように輝く眼差しで星を見据えていた。

 そりゃ、つかみたくもなるだろう。
 こんなにきれいなのだから。

 よし、最終手段を行使しようよ。
 僕は猫に許可を求める。
 『投げていい?君、着地得意でしょ』