かって、新宿区内で、某中華料理店の総支配人を務めていた通称「黄」さんとの付き合い関係が出来てから、もう既に40年近くになる。「黄」さんは今年満94歳だが、大変元気で、「気力を失えば老いが早まる。だから弱気は損気だよ。」というのが、先輩の口癖である。自宅居間には、皇居二重橋や昭和天皇・皇后及び今上天皇と皇后の写真を掲げている程の皇室崇拝者である。とにかく、我々以上に大和心を弁えた上海出身の帰化人である。
その「黄」さんから、老いては益々夫婦相互の愛と労りを大事にしなさいよ!と云われて5年程前に渡されたのが、「莫生気(怒ることなかれ)」と題する次の漢詩である。
中国の誰が、いつ頃読んだ漢詩なのか、「黄」さん自身も解らないとのことなので、市の図書館及びインターネットでも調べた。だが、その辺りの事情は不明のままである。
しかし、概略の意味は「黄」さんから聞いていたので、当方なりの解釈も加え次にその全文を掲載する。
昨年から、80の手習いでNHKの中国語ラジオ講座を聞いて、テキストを頼りに勉強していることもあり、静かに声を出して読む度に、年の所為か、語感と味わい深い内容が沁みてくる昨今である。
(全文は横書き、横読み)
人生は一幕の劇のようなものだ
縁あったが故に一緒になって今日に至った仲なのだ
だが、お互いに支えあって老いてゆくのは容易ではない
とは言え、だからこそ互いに労り大切に生きて行こう
日常の些細なことで気持ちを荒げたりしてはいけない
後で思い返せば、そんな必要も無かったと思うものだ
他人が気持ちを荒げても、自分は腹を立てないでいよう
腹を立てて病気になっても誰も、代わってはくれないから
もし私が怒り狂ったとしても、そんなことは誰も気にかけない
だから自分が気持ちを荒げれば、自分が傷つき無駄骨を折るだけだ
ご近所や知り合いと自らを比べてみても仕方なかろう
子供や孫のことにあれこれ口を挟まないように心していよう
苦しみも喜びもお互いに分かち合い、
神様さえも羨むような良き伴侶であり続けたいものだ
縁あったが故に一緒になって今日に至った仲なのだ
だが、お互いに支えあって老いてゆくのは容易ではない
とは言え、だからこそ互いに労り大切に生きて行こう
日常の些細なことで気持ちを荒げたりしてはいけない
後で思い返せば、そんな必要も無かったと思うものだ
他人が気持ちを荒げても、自分は腹を立てないでいよう
腹を立てて病気になっても誰も、代わってはくれないから
もし私が怒り狂ったとしても、そんなことは誰も気にかけない
だから自分が気持ちを荒げれば、自分が傷つき無駄骨を折るだけだ
ご近所や知り合いと自らを比べてみても仕方なかろう
子供や孫のことにあれこれ口を挟まないように心していよう
苦しみも喜びもお互いに分かち合い、
神様さえも羨むような良き伴侶であり続けたいものだ
前記「黄」さんの話によれば、中国では古くから伝えられている「莫生気」も、時代の変化で人口に膾炙されなくなりつつあるので、この詩も若い人はあまり知らないだろう・・とのことだ。洋の東西を問わず、これも時代の自然の成り行きなのだろうか。