1、先日の予算委員会で提起された「桜を観る会」の問題が波紋を広げている。総理はじめ関連所管の官房筋は猛省し、ことの経緯等に関する説明責任を明確にするのは当然のことである。
問題提起があった翌日、総理の決断で「来年度同会の中止」が決められた背景には、諸々の政治判断がなされたことだろう。だが、それだけでこの問題を終わりにしてはいけないだろうと当方も思う。野党各党は、挙って今後厳しい追及をすることだろう。
2、確かに、同行事の実施に伴う「国費の私物化、公私混同等々」の指摘は尤もで、問題の原因と対策はしっかり行うべきである。しかし、既に来年の行事中止が決まっているのに、野党各党は、敢えてこの時期に、この問題を内政上の重大問題であると捉え、他の諸懸案に先駆けて、何故オール野党で徹底追及する方針なのか、当方は、その点を甚だ疑問に思っている。
何故なら、野党各党が如何に意気込んで攻勢をかけても、この問題は、総理の辞任や国会解散問題に至る程の大問題ではないので、かっての「森友・加計問題」の時のように、結果的には今回の問題も「獏とした幕引き」に終わりそうな気がしてならないからである。
更に、総理・与党側には、長期に亘り政権の座にあって培ってきた諸難問・難題を乗り切って来たノウハウと実績・自負もあるようだ。悪く表すれば、習熟した「トカゲの尻尾切り的国会対策術」が身についていて、「時」「場合」に応じその術を駆使できる実績と豊富な経験があるからである。
3、今回の問題提起で、又しても明らかになったこと。その①は、この問題は、長期政権の驕りと過信に起因して派生している問題であること。その②は、一時的に国民受けする当面の問題に野党が、相乗りしオール野党で取組む姿勢を示していること。その③は、本問題の質疑が最優先されるため、今次の第200回国会の会期末(12月9日迄)が近いのに、上程中の50余の法案(IntNet調べ)審議が全て中断されていることである。
4、この秋の災害で、災害からの早期復旧を願っている該当地域住民の多くは、「桜の会追及問題」や国会での通り一遍の「被災地お見舞いの言葉」よりも、国としての具体的な早期復旧・被災地・被災者支援策はどうなっているのかそれが国会向けの最大の関心事でしょう。にも拘わらず、国会の場からは、この問題に関する「被災地支援関連の施策」は、残念ながら該当地域住民はじめ「国民に見える化」される形で伝わって来てはいない。
5、「桜を見る会問題」に関連する捉え方、考え方は立場や観方によって異なるが、この問題も広く観れば内政関連の問題の一つに過ぎない。今次国会にはNetで観ても、被災者支援・公文書管理・国家公務員の給与の一部改定・農業者個別所得補償関連法や認知症基本法案等生活関連法案等が数多く上程されている。
今後も国会等の場で与野党が真剣に検討すべきだと思う問題は、順不動で適例ではないかも知れないが、・皇室行事と国事行為の関連や大嘗祭行事関連問題・豪雨災害対策とその復旧推進問題・高齢者の医療負担問題・大学入試関連英語能力試験問題・高齢運転者関連対策問題・過疎化社会対応問題・憲法改正問題や基地負担軽減問題等々数多い。
しかし、かかる問題に関する国会での取り上げ方は少ないし、国民が望む形での国会審議も極めて不透明で不十分ではないかと思う。
6、時の内政問題となると、野党各党は党を挙げて大々的に対応する割には、その支持率は長期低迷している。その理由の一つは、野党は「時の話題には強いが、政策提言や特に外交には弱い」との国民感情が根強く存在するからだろう。確かに、野党は、与党外交の結果については、批判はするが、野党として具体的にどんな対応をしているか、この問題に関する野党の活動は国民には殆ど伝わって来ていない。
野党として、対米、日韓・日中・日露・対北朝鮮はじめ周辺国外交を、具体的にどう展開し、その努力を如何にしているのか、「全く見える化」されていない。だから、このままでは、野党に政権は任せられないとの思いは、国民各層に停滞しているのだろう。。
7、顧みれば、終戦後、我国の政党政治上「自社対決の時代」が長く続いた。その頃の野党「社会党」代議士の中には、真に国を思う国士のような存在感のある議員も多かった。
この頃は、その結果については当時から批判もあったが、野党としての外交努力も一定の評価を受け、その存在価値も高く評価されていた。
しかし、その社会党も支持母体(総評)の弱体化や内部分裂等により今では、政党としての存在価値も危ぶまれる存在に成り下がっている。
8、野党各党が「桜を見る会」関連問題を追及するのは大いに結構なことでしょう。しかし、そのことよりも、野党にとって大切なこと。
それは、多くの国民がこの国の現状や将来に関し、どんなことに関心があって、どんな政治改革や政策の推進を望んでいるのか、政権を狙う政党として、現状を見据え将来的見地からの政策提言をし、国民に判断を委ねる努力を地道にすることの方が、より重要だし、そうする努力を続けることにより、より多くの野党支持層を拡大することに繋がることになるのだろうと思う。
重ねて記すが、当面の問題追及も結構だ。しかし、健全な野党として真に国民受けする姿・方針はどうあるべきか、国民は「静かに厳しい目で」そんな野党を黙って見つめていると老生は思っている。2019.11.14記