風刺漫画家の「市原すぐる」氏は、例のマンション基礎杭の打ち込みに関する偽装問題に絡めて、次のような政治風刺画を産経新聞に寄稿(H27.10.21)している。風刺画のタイトルは「悔い(杭)の深さ不足」と「偽装」となっていた。
この風刺画は、政治の分野で最近かなり話題になっている野党連合構想を巡る主要三党首の思惑を観る者に感じさせて呉れている。その点では、確かに「尤もな指摘であり、示唆に富んだ風刺である」と思う。
この風刺画の観方やその意味の捉え方は人夫々だが、当方がこの風刺画を観て感じたことは以下のような諸点である。
1、最も意外に思ったことの第一は、日米安保条約の廃棄を党是とする党が、その党是を一時棚上げして日米安保容認の方針転換を表明したことだ。そして、当面は野党間の政策提携により来夏の参議選勝利に向けた野党共闘を推進すべきだと提唱していることだ。事ある毎に党の主張は一貫して不変であると豪語していた党としては実に大胆な豹変振りであることだ。
2、この志位の「党」は野党連携を更に進める「国民連合政府構想」なる政策提言もしている。こうした一連の動きの前提となる「野党連携・共闘」問題に対しては、野党第一党の面子もあれば、たじろぎもある筈の岡田「民主」の党は、未だ態度を決め兼ねているようである。
野党連携は是とするにしても、志位の「党」のペースに巻き込まれたくない思いもあるだろう。加えて、民主」の党内では「安保法制問題」を巡り、一部に有力な賛成派との内部確執もあり、岡田党首の思惑は複雑だろう。
3、一時は威勢の良かった維新の党も最近は、党の基盤が急に液状化している。党は西と東に事実上分かれ西の本家からは、東の維新は異端集団と揶揄され、内部分裂はもはや決定的だ。来るべきものが来た感深しのお家騒動である。当面の火を消すのに死苦八苦している状態だから、野党連携云々の話しはなお先送りせざるを得ない状況のようだ。この党は元々、民主の党以上に志位の「党」アレルギーが強い政党として誕生した党だから、今後この党が野党連携に組するとなれば、これは立党の精神に反する重大な苦渋の選択をすることになることだろう。
4、次に、この風刺画に顔のない「生活の党と○○の仲間たち」の小沢党首は、野党の中では志位の「党」と最近は蜜な関係にあるようだ。かっては自民の反共若手剛腕プリンス的存在だったが、今では軍団の輩下が悉く袂を分かち往時の面影は全くない。だが、落ちぶれても政治の裏力学に通じている同党首は、志位の「党」に同調の姿勢を示して、野党連携の隠れた推進役を演じているやに観えるのも誠に以て不可思議な政治家である。
5、いずれにしても、志位の「党」から提唱された政策提言に対し、民主・維新の両党が党内の軋轢や内紛を治め、脆弱な党の基盤を如何に固めて対応するのか、来夏の参院選に向けた野党の動きが大いに注目されるところである。
前記の風刺画が示している通り、政治の基盤再編工事に関する志位の「党」からの杭打ち戦略に他の野党が嵌ってしまったり、或いは選挙目的だけの為に、野党各党がその結党の精神に反して、後年悔いを残すような欺瞞の野党連合にならないよう切に願いたいものである。