ご機嫌いかがですか、水野春雄です。
さあ、今夜はお待ちかね・・・ではないかもしれませんが、皆さんの多くがおそらく見たことはないだろう映画をご紹介します。
実を言いますと、最初、局で用意されていたラインナップは違う作品だったのですが、ジブリ、『コナン』、『ハリポタ』ばっかりもう勘弁してください、ということで、とくに私からテレビ局にお願いして、この映画を紹介させてもらうことにしたんです。
『高地戦』、皆さん、ほとんどの方は聞いたことない作品でしょう。
これはどこの国の作品かと言いますと、韓国の映画なんですね。韓国の2011年の作品です。
皆さんの中には普段、韓国のドラマを好んでご覧になっている方も大勢いらっしゃることでしょう。そう、ヨン様以来、日本の、とくに女性の皆さんにはおなじみの、悲恋ドラマやラブコメドラマがありますね。大変な人気です。
ところが、この作品はまったく違います。だから、韓流ドラマファンの皆さんにも、韓国を憎悪する余り韓国映画・韓国ドラマに対しても食わず嫌いしている皆さんにも、ぜひ先入観なしで見ていただきたいと思って、お送りさせてもらうことにいたしました。
舞台は1950年代前半、今から70年ほど前の朝鮮半島です。
と言えば、おわかりの方も多いことでしょう。そう、朝鮮戦争の時代なんですね。これは朝鮮戦争を描いた映画です。
タイトルにあります「高地戦」というのは、米軍が加担する南側の大韓民国軍と中国の義勇軍が加勢した北側の朝鮮民主主義人民共和国軍とで、戦略上の重要な陣地となる山岳地域を奪い合った、その戦闘のことです。
朝鮮戦争がようやく終わりに近づいた時期、韓国軍の防諜部隊の青年士官であるウンピョという男が、その激戦地である高地に向かいます。防諜部隊というのは、日本で言うと憲兵隊のような、軍組織内部の粛正捜査をするチームのことです。
彼は高地で、戦争の始まった頃に生き別れたままとなっているスヒョクという戦友と再会します。スヒョクはかつて、気弱な心やさしい青年でした。今はどうでしょう。
また、イリョンという精神を病んで薬物が手放せなくなっている若い将校とも出会います。いったい、彼はなぜ精神を病んでしまったのか。彼は戦場でどんな経験をしたのでしょうか。
そして、このウンピョという主人公の目を通じて、その激戦地である高地が、敵である北朝鮮軍との末端兵士同士のある種の連絡窓口となっている特殊事情が明らかにされていきます。
同じ言語を持つ同じ民族同士による戦争。互いの「敵国」内に家族や親類や知人・友人がいるという異常な状況。
皆さんの目にはどう映るでしょうか。
この映画の舞台となった1953年、朝鮮戦争は休戦を迎えています。
今、私は「休戦」と申しました。
そうです。「休戦」です。終戦ではありません。これは意外とご存じない方もいらっしゃるかと思うので、あえて申し上げますが、朝鮮戦争の双方の当事者たる南側の大韓民国、すなわち韓国と、北側の朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮とでは、ヴェルサイユ条約やサンフランシスコ条約のような、終戦の講和条約は互いに締結していません。
ですから、法的には現在もあくまで「休戦」状態に過ぎず、正式には朝鮮戦争は「続いている」ことになるんですね。
これは、海を隔てた私たち日本人がともすれば忘れがちな、あるいは知らないままの事実と言えるのではないでしょうか。韓国の人たちは、「休戦」中に過ぎない戦争相手とずっと間近に対峙しながら日々生活しているんですね。そのあたりは、ともかくも相互に承認し合ってはいたかつての東西ドイツとは全く違います。
法的には戦争状態が続いていること、その相手は本来は同じ民族、同じ国民であったということ、そして、その敵国内に血のつながった同胞が多くいること。これらの意味をしっかりと嚙み締めずに、われわれが韓国政府の対北政策をとやかく批判することはできないのではないか。皆さんはどうお考えでしょう。
さて。
話がそれましたが、この映画の中でも、アメリカの指導のもと、韓国は休戦交渉に臨み、ともかく休戦が成約の運びとなりました。
しかし、休戦が決定したことと、その協定が効力を発揮することとは別だという点に注意しなければなりません。
これはどんな契約書でもそうですが、何月何日づけからの契約、と明記されているということは、逆に言えば、その日が来るまではまだ契約内容は生きてはこないわけです。
休戦の協定の場合であれば、何月何日の何時をもって休戦と仮に書いてあるならば、その日のその時刻まではまだ戦争は終わりません。
そして、ここが重要なところですが、もし何月何日の何時の時点での両軍の勢力範囲をもって、以後の暫定国境線とすると書いてあったとしたらどうでしょう。
休戦成立の刻限までの間に少しでも前へ前へ勢力圏を確保した上でその刻限を迎えようと、政府や軍上層部は考えることになるではないでしょうか。
休戦は決まった。兵士たちにもその朗報が届いた。でも、まだ休戦「成立」までは半日ある。その間に少しでもわが陣地を多めに確保しておけ。・・・政府や軍上層部にとっては簡単な命令です。しかし、現場にとってはどうなのでしょうか。・・・
さて。
少しくどくどと説明しすぎたようです。
百聞は一見に如かず。
私などが長々とご説明するより、この地上の地獄の凄まじさは、実際に映画を見ていただくほうが絶対に掴めるはずです。
では、どうぞ。ごゆっくりご覧ください。
さあ、今夜はお待ちかね・・・ではないかもしれませんが、皆さんの多くがおそらく見たことはないだろう映画をご紹介します。
実を言いますと、最初、局で用意されていたラインナップは違う作品だったのですが、ジブリ、『コナン』、『ハリポタ』ばっかりもう勘弁してください、ということで、とくに私からテレビ局にお願いして、この映画を紹介させてもらうことにしたんです。
『高地戦』、皆さん、ほとんどの方は聞いたことない作品でしょう。
これはどこの国の作品かと言いますと、韓国の映画なんですね。韓国の2011年の作品です。
皆さんの中には普段、韓国のドラマを好んでご覧になっている方も大勢いらっしゃることでしょう。そう、ヨン様以来、日本の、とくに女性の皆さんにはおなじみの、悲恋ドラマやラブコメドラマがありますね。大変な人気です。
ところが、この作品はまったく違います。だから、韓流ドラマファンの皆さんにも、韓国を憎悪する余り韓国映画・韓国ドラマに対しても食わず嫌いしている皆さんにも、ぜひ先入観なしで見ていただきたいと思って、お送りさせてもらうことにいたしました。
舞台は1950年代前半、今から70年ほど前の朝鮮半島です。
と言えば、おわかりの方も多いことでしょう。そう、朝鮮戦争の時代なんですね。これは朝鮮戦争を描いた映画です。
タイトルにあります「高地戦」というのは、米軍が加担する南側の大韓民国軍と中国の義勇軍が加勢した北側の朝鮮民主主義人民共和国軍とで、戦略上の重要な陣地となる山岳地域を奪い合った、その戦闘のことです。
朝鮮戦争がようやく終わりに近づいた時期、韓国軍の防諜部隊の青年士官であるウンピョという男が、その激戦地である高地に向かいます。防諜部隊というのは、日本で言うと憲兵隊のような、軍組織内部の粛正捜査をするチームのことです。
彼は高地で、戦争の始まった頃に生き別れたままとなっているスヒョクという戦友と再会します。スヒョクはかつて、気弱な心やさしい青年でした。今はどうでしょう。
また、イリョンという精神を病んで薬物が手放せなくなっている若い将校とも出会います。いったい、彼はなぜ精神を病んでしまったのか。彼は戦場でどんな経験をしたのでしょうか。
そして、このウンピョという主人公の目を通じて、その激戦地である高地が、敵である北朝鮮軍との末端兵士同士のある種の連絡窓口となっている特殊事情が明らかにされていきます。
同じ言語を持つ同じ民族同士による戦争。互いの「敵国」内に家族や親類や知人・友人がいるという異常な状況。
皆さんの目にはどう映るでしょうか。
この映画の舞台となった1953年、朝鮮戦争は休戦を迎えています。
今、私は「休戦」と申しました。
そうです。「休戦」です。終戦ではありません。これは意外とご存じない方もいらっしゃるかと思うので、あえて申し上げますが、朝鮮戦争の双方の当事者たる南側の大韓民国、すなわち韓国と、北側の朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮とでは、ヴェルサイユ条約やサンフランシスコ条約のような、終戦の講和条約は互いに締結していません。
ですから、法的には現在もあくまで「休戦」状態に過ぎず、正式には朝鮮戦争は「続いている」ことになるんですね。
これは、海を隔てた私たち日本人がともすれば忘れがちな、あるいは知らないままの事実と言えるのではないでしょうか。韓国の人たちは、「休戦」中に過ぎない戦争相手とずっと間近に対峙しながら日々生活しているんですね。そのあたりは、ともかくも相互に承認し合ってはいたかつての東西ドイツとは全く違います。
法的には戦争状態が続いていること、その相手は本来は同じ民族、同じ国民であったということ、そして、その敵国内に血のつながった同胞が多くいること。これらの意味をしっかりと嚙み締めずに、われわれが韓国政府の対北政策をとやかく批判することはできないのではないか。皆さんはどうお考えでしょう。
さて。
話がそれましたが、この映画の中でも、アメリカの指導のもと、韓国は休戦交渉に臨み、ともかく休戦が成約の運びとなりました。
しかし、休戦が決定したことと、その協定が効力を発揮することとは別だという点に注意しなければなりません。
これはどんな契約書でもそうですが、何月何日づけからの契約、と明記されているということは、逆に言えば、その日が来るまではまだ契約内容は生きてはこないわけです。
休戦の協定の場合であれば、何月何日の何時をもって休戦と仮に書いてあるならば、その日のその時刻まではまだ戦争は終わりません。
そして、ここが重要なところですが、もし何月何日の何時の時点での両軍の勢力範囲をもって、以後の暫定国境線とすると書いてあったとしたらどうでしょう。
休戦成立の刻限までの間に少しでも前へ前へ勢力圏を確保した上でその刻限を迎えようと、政府や軍上層部は考えることになるではないでしょうか。
休戦は決まった。兵士たちにもその朗報が届いた。でも、まだ休戦「成立」までは半日ある。その間に少しでもわが陣地を多めに確保しておけ。・・・政府や軍上層部にとっては簡単な命令です。しかし、現場にとってはどうなのでしょうか。・・・
さて。
少しくどくどと説明しすぎたようです。
百聞は一見に如かず。
私などが長々とご説明するより、この地上の地獄の凄まじさは、実際に映画を見ていただくほうが絶対に掴めるはずです。
では、どうぞ。ごゆっくりご覧ください。