長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

193. 水彩画・『わし座』を描く。

2015-05-16 21:04:26 | 絵画・素描

今月は絵画作品として星座の中の『わし座』をテーマとした水彩画を1点制作した。神話・伝説シリーズの星座編、第1作である。

「夏の大三角」の最後の星と言えば、わし座の1等星アルタイルである。天の川の中で、対岸の星ベガとともに輝くこの星は両側に一つずつの小さな星を従えている。少し崩れた十字形をした、わし座の姿は大きな翼を広げ、空を飛翔する鷲の姿を連想させる。アルタイルという名は砂漠の上空を飛翔する鷲の姿を想わせるということで、アラビア語で「飛翔する鷲」という意味を持っているという。古代ギリシャ神話では、わし座の鷲はゼウス神の武器である雷電を運ぶ黒鷲とされている。この鷲は神の使者であり、人間の住む地上を飛び回っては多くの情報をゼウス神に報告したとされている。

水彩画作品は天体や宇宙を想起させる「円窓」の構成をとった。この小さな円形の窓から大宇宙が広がっているような思いを込めて描き進めていった。宇宙空間を飛翔する鷲はやはり白色の羽衣がよく似合う。わし座だけでは寂しいので、同じ天の川のわし座アルタイルのすぐ東に、菱形に並ぶ小さな星座『いるか座』も画面の隅に描いた。

そう言えば僕の工房のある町は少しはずれると、人家もまばらで大気の澄んだ夜には星がクッキリとよく観られる。朝から制作をつめて疲れるとベランダや外に出て星空を見上げるのが、日課となっている。天体に詳しいわけでもなく、星座を観察するわけでもない。ただなんとなく見上げるのだが、気が付くと次から次へと空想が膨らみ、けっこう時間が経っている。その時、この太陽系の小さな塵のような青い星に奇跡のように生きている自分自身をいつも想う。宇宙の広大な空間と気の遠くなるような時間的なレベルから観れば、この小さな星の人間の一生もシャクトリムシの一生も誤差範囲のわずかな時間でしかない。『一刹那』ということに何の変わりはないのである。それなのにいつまで経っても自分たちの小さな物差しで測っては、どっちが長いの、優れているのとワイワイ騒いでいる。なので、紛争は絶えない。いったい、僕たち人類はなんのために、この一瞬の生を授かっているんだろうか。答えなど出るはずもない問い、一瞬一瞬の思いを形にするために、しばらく『星座編』を描き続けることにするか。画像はトップが制作中の水彩画作品『わし座』の部分。下が同じく作品の部分、仕事机の上の使用した画材など。