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トヨタ自動車と日産自動車

2014年01月18日 18時44分24秒 | 学習支援・研究
トヨタ自動車と日産自動車を分析する
なぜ日産は、「独り負け」しているのか

小宮 一慶 :経営コンサルタント
小宮一慶の会計でわかる日本経済の論点 -
東洋経済オンライン
2014年01月08日


写真:豪腕ゴーンCEOの「コミットメント経営」が裏目に出ている?(撮影:大澤 誠)

自動車メーカーの中間決算を見渡しますと、
円安や北米などでの売上増を受けて、総じて好調です。
トヨタ自動車やホンダなど大手自動車メーカーは
大幅な増収増益となり、特に富士重工やマツダなど4社では、
過去最高の営業利益を更新しました。

ところが、そういった中で唯一、日産自動車が減益となっています。
なぜ、同社だけが苦戦しているのでしょうか。
今回は、好業績が続くトヨタ自動車(以下、トヨタ)と、
残念ながら“独り負け”している日産自動車
(以下、日産)の決算内容を分析していきます。

「円安・北米好調・コストカット」で好業績続くトヨタ

まずは、引き続き好業績を維持しているトヨタの
2013年4~9月期の決算内容を見ていきます。

損益計算書(9ページ参照)を開きますと、
「売上高合計」は前年同期の10兆9,083億円から12兆5,374億円まで約15%増となっています。
「営業利益」も6,937億円から1兆2,554億円まで、約81%という
大幅な伸びを見せています。
さらに最終的な利益である「当期純利益」も5,482億円から1兆0006億円まで、
ほぼ倍増しています。それによりトヨタは増配をしました。

参考までにキャッシュ・フロー計算書(同13ページ)にも目を通しますと、
営業活動から得られる現金の収支を示した
「営業キャッシュ・フロー」の「営業活動から得た現金<純額>」も、
1兆2,395億円から1兆9,670億円まで約59%も伸びています。
さらに、売上高がどれだけ効率的にキャッシュ・フローを稼いでいるのかを示す
「キャッシュフローマージン(営業キャッシュ・フロー÷売上高)」を計算しますと
15.7%となり、キャッシュフローから見ても、
非常に収益性が高いことがわかります。

なぜ、これほどまでに業績が大幅に改善しているのでしょうか。
もう少し詳しく分析するために、
地域別の生産実績(2013年4~9月)を見てみましょう。

生産台数が大幅に増えているのは、北米と欧州です。
北米は、前年同期より約5万台の増加。
欧州は、約6万台増加しています。一方、
日本は6万台近く減少しているのです。

これと併せて、地域別の収益を見てみます。
最も売上高が伸びているのが北米です。
「売上高合計」は前年同期より1兆円近く増えており、
その内訳によると、特に伸びているのは
北米内での売り上げを示す「外部顧客への売上高」です。

絶大な円安効果

ただし、北米は「営業費用」も1兆1,000億円ほど増えてしまっていることから、
「営業利益」は約2000億円減となりました。

その一方で、驚異的な増益となっているのが日本です。
まず「売上高合計」を見ますと、前年同期より5,000億円以上伸びています。
その中でも特に伸びているのが、日本から海外への
輸出による売上高を示す「所在地間の内部売上高」です。

そして「営業費用」はほぼ変わらないわけですから、
そのまま「営業利益」に反映して、5,800億円の増加となりました。
前年同期より3倍以上伸びています。(同15~16ページ参照)

先ほど生産実績を見ましたが、日本の生産台数は減少していましたね。
それにもかかわらず、大幅な増収増益となっているのです。
さらにその内訳を見ると、輸出での売り上げが伸びていることを考えますと、
この大幅な業績の伸びは円安の影響が大きいと言えます。

ここ1年間のドル/円相場を振り返りますと、
昨年の9月は1ドル=79円前後で推移していました。
そして2013年の9月時点では、1ドル=99円前後ですから、
前年より約25%も円安が進んだことになります。


写真を拡大
つまり、北米に向けた輸出による売上高や利益の円換算額が増えているのです。
トヨタの発表によると、為替変動の影響による営業利益の押し上げ額は5,400億円ということです。
決して日本での生産台数・販売台数が増えたわけではない、
という認識が必要です。

もうひとつ、業績の押し上げ要因として、
米国の自動車市場が回復してきているという点もあります。
米国の「自動車販売台数」の推移を見ますと、
2012年8月は年換算で1442万台、9月は同1,471万台という水準でしたが、
2013年8月は1603万台まで回復していました。
こちらも、北米での販売が伸びた要因になっているのです。

そのほか、トヨタの発表によりますと、
営業利益が伸びた理由として、コストカットによる原価の改善が
1,400億円、営業面の努力による影響が400億円あったということです。
円安や北米の自動車市場の回復という環境要因に加え、
トヨタが得意とするコストカットなどの自社努力も業績に貢献したのです。

ヒット車種をつくれなかった日産自動車

次に、日産自動車の2013年4~9月期の決算内容を分析していきます。
冒頭でも触れましたが、大手自動車メーカーが軒並み増収増益となっている中で、
なぜ日産だけが業績を落としているのでしょうか。

まず、損益計算書(6ページ参照)から見てみましょう。
「売上高」は4兆6,36億円から4兆7562億円まで増えています。
「売上原価」は微増していますが、
「売上総利益」は6,968億円から8,330億円まで伸びています。

ただし、「販売費及び一般管理費」が4,690億円から6,111億円まで大幅に増えてしまったため、
「営業利益」は2,277億円から2,219億円まで減少してしまいました。
為替変動の好影響はあったものの、リコール費用や
メキシコ工場の償却負担が営業利益を押し下げてしまったということです。

業績自体は悪い水準ではありませんが、
前期より落としてしまっていることは間違いありません。
その結果、日産は今期の業績予想を2期連続で下方修正しました。
先にも述べたように、ほかの日本の自動車メーカーが
軒並み好決算を出している中では、かなり異例だとも言えます。

もう少し詳しく分析してみましょう。
所在地別の業績をまとめたセグメント情報
(2012年4~9月と2013年4~9月、17~18ページ参照)を見てください。

「売上高合計」を見ますと、日本は2兆2,560億円から2兆3,108億円まで少し伸びています。
前半で分析したトヨタほどの伸びはありません。
「営業利益」は、878億円から1,742億円という、まずまずの伸びです。

では、どこで利益が落ち込んでいるのかといいますと、
「北米」「欧州」「アジア」、中近東や中南米を含む「その他」の地域です。
日本を除くすべての地域で、売上高は増えているものの、
営業利益が減少しているのです。

この理由は、なぜでしょうか。ひとつめのポイントは、
好調であるはずの北米市場での営業利益が減少しているという点です。
北米市場というのは、高級車や高性能車が売れる最大の高収益市場です。
ここで利益が稼げないということは、
米国市場に対しての魅力的な車がそれほど出ていないと言えるのではないでしょうか。

これは、北米市場だけでなく、日本市場でも言えることです。
確かに日本のメーカーを見渡しても、高級車が売れているメーカーは
レクサスを持つトヨタくらいしかありません。
そこで、ホンダは軽自動車「N BOX」で成功しました。
スズキやダイハツなども軽自動車に力を入れていますし、
マツダや富士重工業は高性能車のラインナップを充実させるなど、
各社で目玉商品やヒット車種を作り上げています。

一方、日産は現在、目玉と言える商品がそれほどありません。
ハイブリッド車も北米市場で売れるようなハイテクの高級車も、
人気のある車種がほとんどないのです。

ゴーン氏のコミットメント経営が裏目に出ている!?

2つめのポイントは、日産は新興国市場に懸けていた部分があったのですが、
頼みの新興国経済が減速傾向にあるということです。
日産は、それほどの付加価値を要求しない新興国市場、
特に中国などで売り上げを伸ばしたいと考えていました。
ところが、今年6月あたりから米国のQE3(量的緩和第3弾)縮小予測が広がってきたことで、
新興国への投資資金が引き揚げられ、
成長率が鈍化してきているのです。

さらに、日産のパートナーであるルノーの本拠地、
欧州の経済も、財政縮小の影響で景気が低迷しており、
デフレ傾向が進みつつあります。このように、
注力しているアジアや欧州の経済成長が停滞していることが、
日産の戦略に合わなくなってきていることも、
業績悪化の原因となっているのです。

その裏側にあるのは、カルロス・ゴーン社長の
コミットメント(必達目標)経営にあるのではないか、という話もあります。
1999年にゴーン氏が社長に就任する前、日産の経営は極めて厳しい状況に陥っていました。
そこでルノーから派遣されたゴーン氏はコミットメント経営を行い、
日産を見事に立て直したのです。

ところが、こうした数値目標の達成がだんだん「目的化」してきてしまったことで、
会社の中で自由度が失われてしまったり、
必要な投資ができなくなってきてしまったのではないかと私は感じています。
その結果、魅力的な高性能車や高級車、
はたまた今、日本で人気のある小型車の開発が遅れてしまったのではないかと思われます。
何が何でも数値目標を達成するという、
ゴーン氏のコミットメント経営が、徐々に裏目に出てきたと言えます。

さらに、欧州債務危機の影響でルノーの業績が低迷していることで、
余計にルノーが日産の収益に頼ってきているという点も、
日産を苦しめる原因のひとつとなっています。

しかし、いずれにしても、日産はお客様にとって
魅力のある車を作らない限り、業績を改善させることは難しいでしょう。
私の師匠の藤本幸邦先生は、いつも
「おカネを追うな、仕事を追え」とおっしゃっていました。
確かに日産を立て直した当時は、コミットメント経営という手法は正解でしたが、
今は景気が回復してきたわけですから、状況が変わっているのです。
それでもなお、数字を追いかけてばかりで、
お客様が欲しい商品をつくらなければ、結局、
うまくいくことはありません。

今後、日産の経営方針がどのように変わっていくのか。
お客様にとって魅力ある車を開発していくのか。
それらの点が、業績回復のカギを握るのではないかと思います。

http://toyokeizai.net/articles/-/27834?page=5

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イオンとダイエーの関係は

2014年01月18日 14時58分24秒 | 学習支援・研究
スーパーが苦戦、通期利益計画は未達も
イオンの第3四半期決算は増収だが減益

東洋経済オンライン
2014年1月11日(土)09:00



2014年2月期の通期営業利益見通し2,000億円~2,100億円(前期比4.9%~10.2%増)の達成は難しい状況となった。
イオンは1月10日に第3四半期決算を公表。
中間期まではかろうじて増益だったが、今回、
9カ月累計の営業利益は948億円(同4.1%減)だった。

営業利益実績を個別に見ると、国内事業では
総合金融事業を筆頭に好調な一方、GMS(総合スーパー)が
65億円(前年同期比横ばい)、SM(食品スーパー)は
37億円(同67%減)と本業の不振が目立った。
GMSでは2013年年8月から子会社化したダイエーや、
衣料品が不振だったイオン九州の営業損失が響いた。

SMではコンビニエンスストア、ドラッグストア、ディスカウントストアなど
他業態との競争激化に加え、2012年4月にJ.フロントリテイリングから
買収したイオンマーケット(旧ピーコックストア)の改装など、
先行投資負担による業績低迷が影響した。
さらに中核小売会社のイオンリテールでも、GMSの既存店売上高が
第2四半期まで1%増だったが、第3四半期は衣料品の不振から1.3%減となり、
衣料品だけでは第3四半期までの累計で3.6%減となった。
値下げによるロス率も0.7ポイント上がり、採算を圧迫した。

「トップバリュ」の拡販にも懸念

イオンの森美樹副社長は1月10日の決算会見で、
「第2四半期はぎりぎり増収増益だったが、
その第2四半期でも消費環境は厳しく、第3四半期も厳しかった。
資産効果も家庭まで波及しなかった。
そこへダイエー、ピーコックの影響が加算された」と説明。

業績見通しを変えなかったことについては、
「昨年12月から駆け込み需要の数字が出ている。
これで2月ぐらいにはかなりの売上高が出る。
(第4四半期は)ダイエー、イオンマーケットも
ぼちぼち現場力がついてくる」と述べた。

一方、PB「トップバリュ」の拡販に若干の懸念がある。
今期は年商1兆円を目標としていたが、
第3四半期までの合計で5463億円。「確かに1兆円は厳しい。
農水畜など相場変動の商品の開発が遅れ、この影響が出ている。
(開発を)断念した商品もある4月以降の対策をしっかりしていきたい。
商品を全面的にリ ニューアルして新商品として展開していく」
(横尾博専務)とする。

GMSは第3四半期までに全344店のうち
51店を改装し、改装後の売上高実績は3.4%増と、
非改装店と比べ4ポイント向上しているという。
同様に、SMも800店のうち290店を改装し
「残りの店舗も着実に改装を進める」(森副社長)。
イオンマーケットは全81店のうち20店を改装し、ワオンカード、
自動発注システムやイオントの共通レジの導入を進めている。

第3四半期までの改装効果と改装の継続、また消費増税前の駆け込み需要の取り込みで
期初の業績計画の達成を図るのがイオンの基本戦略だ。
しかし、9カ月累計の営業利益が948億円であり、
さすがに第4四半期の3カ月だけで営業利益を1,000億円強を叩き出すのは難しく、
期末に向け下方修正の可能性が高そうだ。

今期に子会社化したダイエーに目を向けると、
第3四半期は営業損失79億円、最終損失191億円を計上し、
2014年2月期の業績計画を黒字見通しから
営業損失60億円(最終損益は未公表)に下方修正した。

今期の営業利益は黒字見通しから一転赤字予想へ
減額の最大の理由は、衣料品の不振。
当初計画では第3四半期に衣料品は既存店ベースで
前年同期比横ばいを計画していたが、天候不順や
商品・売り場改革が途上にあることから、5%減で着地。
値下げロスから粗利率が悪化した。

また、食品も2012年9月から2013年11月まで合計7回に及ぶ
1,000品目単位でのナショナルブランド商品の大量値下げを行っている。
計画には織り込み済みだが、これも粗利率低下の一因だ。
また、夏場の猛暑で光熱費を中心に販管費も計画比で増加した。

既存店売上高全体では衣料品の不振から
第3四半期1%増計画が0.1%減となり、第4四半期も
当初4%増計画を2%増に修正し、下期(2013年9月~2014年2月)1%増、
通期横ばいを計画。12月実績は3%減だったが、
「消費増税前の駆け込み需要を考えれば、十分に達成可能」(ダイエー)としている。
また、衣料品の値下げロスの平準化で、第4四半期は
営業黒字化する公算だが、これも前年同期の営業利益を前提にしており、
「売上高が達成できれば可能」(同)としている。

イオン傘下「ダイエー」の屋号はどうなる?



今期は新店13、退店16、改装40を予定し、第3四半期までに、
それぞれ8、13、30が実施された。
第4四半期は衣料品の商品・売り場改革を進め、
2014年度に予定する東京・碑文谷店など旗艦店の大型改装につなげていく見通し。
現状では改装店舗は改装前に比べ20%増の売上高の実績があり、
これによって2014年度は営業黒字化を目指す。

イオンとのシナジーとしてリファイナンスや借入金利の低下、
またPB統合などが実施されたが、
今後の注目は店舗の屋号の統合や店舗閉鎖がどうなるかだ。

この点について、10日のイオンの決算会見で
村井正平ダイエー社長は「屋号の統合については決定していない。
店舗閉鎖は、耐震面などで今後、対応できない出来ない店舗を除き、
できる限りしたくない」と話すにとどめた。
イオンPB「トップバリュ」の品目数は、
2013年2月期が3,500品目(年商180億円)だったが、
第3四半期末で4,800品目となり、2014年2月期末には5,000品目に増える公算だ。
ダイエーにとって、来期の営業黒字は至上命題であり、正念場の1年になる。

(撮影:尾形文繁)

http://toyokeizai.net/articles/-/28166より

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