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移動販売でも利益を出す方法

2014年01月03日 01時36分13秒 | 学習支援・研究
規模追わず黒字出す
ローカルスーパー
2013年12月13日(Fri) 
WEDGE編集部

少子高齢化に伴う市場縮小、コンビニなど異業種との競争激化─。
再編が進み、売上は上位に集中。
弱者淘汰に拍車がかかるスーパー業界。
果てなき価格競争をよそに健全経営を続ける、
ローカルスーパーの独自戦略とは。


1軒1軒の玄関先まで食料品を売り歩く移動販売車(撮影:編集部)
 
石川県小松市。郊外の住宅地を、移動スーパーのカラフルなトラックが走る。
運営するのは、自動車販売を生業とするシブヤコーポレーション。
移動販売車を製作し、各地の事業者に納品する中で、
徳島県の移動スーパー「とくし丸」の事業理念に共感。
畑違いながら、小売の世界に足を踏み入れた。

事業の最大の特徴は、黒字運営を大前提としている点だ。
近年、高齢化や商店の淘汰などによる買い物弱者の急増が問題となっており、
地域密着を謳う地場スーパーが移動販売事業に続々乗り出している。
だが、採算性のなさから本業の収支を圧迫するケースが大半で、
行政からの補助金をあてにする事業者も少なくない。

30年ほど前から、いち早く移動販売事業を展開してきた
高知県のスーパーの担当者は「点在する集落を回り、
高齢者を中心に消費財を売るこの事業は、
非効率で客単価も低く採算が合わない」と嘆く。
販売人件費、食品ロス、車両の燃料代に維持管理費。
年間1,000万円単位の赤字を店舗の収益で補填する状況が続く。
生活弱者を支える使命感から続けているが
「県からの補助金が下りなくなれば、どうにも続けられない」と頭を抱える。

強みを持ち寄り リスクは分散

シブヤの黒字の秘訣は事業運営主体の分割にある。
商品調達は地元の商店に依頼。
販売実務はパートナーと呼ばれる個人事業主に委託。
車両は本業を活かし、パートナーへリース販売を行うことで
初期費用を軽減、起業ハードルを下げた。
シブヤは事務局として販売ルート開拓、運営ノウハウ提供と車両製作を担当し、
売上は3者で分ける。徳島の事業モデルを参考に、
一括運営が定石の事業を因数分解し、異なる特性の者同士が組むことで、
コストの分散に加え仕入れの手間や在庫リスクを縮減。
経費面から採算性を向上させた。

黒字のカギは1軒1軒を訪れる販売手法にもある。
運営に先立ち、事務局は近隣に商業施設のない地域の家を訪ね回り、
約1,000軒をリサーチ。販売実務を切り離し、
調査に専念できる環境を整えたことで可能となった。

澁谷武彦社長は、地域の家々を回るうち、
家から数十メートルの距離でさえ動けない人たちがこんなにいるのか、と驚いた。
「玄関まで伺わなければ、事業をやる意味がないと感じました」。


移動スーパーで買い物をする高齢者。
施設で食事は満たされているが、選ぶ楽しみは何物にも代えがたい
(撮影:編集部)


大多数の同業者が公民館など、特定の地点に人を集めて販売を行う中、
訪問希望があった約50軒を戸別に回るルートを作り、
呼び鈴を押して販売するスタイルが定まった。

常連の80代夫婦は「必要なものがあっても我慢しとったけど、
軒先まで来てもらえるで、今は雨や雪の日でも好きなものが買える」
「欲しいものを頼むと、すぐ積んできてくれて助かる」と笑顔を見せる。

当初は主に高齢者の利用を想定していたが、
自営業で店を空けられないなど、様々な事情から外出できない人も想像以上に多く、
事業開始から1年足らずで客単価は2.5倍に、
訪問先は5倍まで伸びた。無理しながらの奉仕に陥らず、
しくみの工夫で社会貢献活動に儲けの芽を見出している。

潜在価値を可視化し、値下げ競争から脱却

固定店舗でも安定経営を続けるスーパーもある。
愛知県豊橋市の「一期家一笑」は、大きめのコンビニ程度(約80坪)の売場面積しかない
個人経営スーパーだが、近隣1キロ圏内にスーパー1店、
コンビニ4店がひしめく中でも、これまで一貫して黒字経営を達成している。

店内で目をひくのが、所狭しと貼られたPOP。
一期家のスタッフと並んだ生産者の笑顔が印象的だ。

一期家のスタッフは、普段から自治会や地域イベントに積極的に参加している。
学校行事の前日にはお弁当に入れやすい惣菜や
お寿司を用意するなど、そこでのコミュニケーションを品揃えに活かしている。
店頭でも、消費量の少ない独居の高齢者には包装を開けてバラ売りし、
食べたいおかずを聞けば翌日には店頭に並べる。
対応は迅速で個別具体的だ。小規模経営の特性を活かし、
顧客一人ひとりを尊重する接客は、
お年寄りを中心に多くの固定ファンを獲得している。

その姿勢は生産者に対しても貫かれている。
地元の農家や卸業者からの仕入れにこだわり、
彼らのもとに足を運んでは、生産過程を直接見聞きして確認する。

20年以上前から取引のある丸梅伊藤米店の伊藤秀信さんは
「ほとんどのスーパーが買い叩いてくるが、
一期家さんに値下げを求められたことは一度もない」と話す。
卸値は他と比べて5キロあたり200円程度も高いが、
安心して食べることができるお米を、との要望は揺るぎない。

生産者と価値観を共有し、良質な商品を仕入れたら、
それを丁寧に紹介する。

「丸梅伊藤米店さんが今朝準備してくれた、
つきたてのお米で作ったお寿司です!」
商品の作られ方や、作り手の努力を伝えることで、
消費者は安さに代わる価値を感じ、値段に納得して買える。
ここが低価格競争と一線を画す強みになっている。

他にも、農家見学ツアーを開催し、顧客と生産者が直接交流できる場を提供したり、
近隣の小学生に生産者の思いを伝えるなどの取り組みも積極的に行う。
今や若い家族にも顧客層が広がってきている。

膨大な購買データや資本力を持つ大手は強い。
しかし、小さな店には詳細な顧客情報と人間関係、
組織に縛られない柔軟さがあり、マクロ経営では見えてこないニーズや
物の価値に気づくことができる。

一期家店長の杉浦國男さんは「経営理念は特に持っていません。
マニュアル化できない接客を目指し、いろいろ試みていますが、
まだまだ道半ばです」と謙遜する。
刻々と果てしなく変化する顧客ニーズに沿い続けることが命脈を保つ術と悟る、
具眼の経営者の言葉である。

20年以上前から取引のある丸梅伊藤米店の伊藤秀信さんは
「ほとんどのスーパーが買い叩いてくるが、
一期家さんに値下げを求められたことは一度もない」と話す。
卸値は他と比べて5キロあたり200円程度も高いが、
安心して食べることができるお米を、との要望は揺るぎない。

生産者と価値観を共有し、良質な商品を仕入れたら、
それを丁寧に紹介する。

「丸梅伊藤米店さんが今朝準備してくれた、
つきたてのお米で作ったお寿司です!」

商品の作られ方や、作り手の努力を伝えることで、
消費者は安さに代わる価値を感じ、値段に納得して買える。
ここが低価格競争と一線を画す強みになっている。


一期家一笑の店内には、生産者の商品へのこだわりを伝える 手作りのPOPがずらり
(撮影:編集部)

 
他にも、農家見学ツアーを開催し、顧客と生産者が直接交流できる場を提供したり、
近隣の小学生に生産者の思いを伝えるなどの取り組みも積極的に行う。
今や若い家族にも顧客層が広がってきている。

膨大な購買データや資本力を持つ大手は強い。
しかし、小さな店には詳細な顧客情報と人間関係、
組織に縛られない柔軟さがあり、マクロ経営では見えてこない
ニーズや物の価値に気づくことができる。

一期家店長の杉浦國男さんは「経営理念は特に持っていません。
マニュアル化できない接客を目指し、いろいろ試みていますが、
まだまだ道半ばです」と謙遜する。
刻々と果てしなく変化する顧客ニーズに沿い続けることが
命脈を保つ術と悟る、具眼の経営者の言葉である。


◆WEDGE2013年12月号より

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3392?page=3より

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