ひとり井戸端会議

主に政治・社会・法に関する話題を自分の視点から考察していきます。

真榊料奉納で騒ぐことの愚・・~真榊料奉納の真の狙いとは~

2007年05月10日 | 靖国神社関係
 一昨日、安倍首相が靖国神社に春季例大祭期間中に、真榊料として、内閣総理大臣の名で5万円を奉納していたことが判明したらしいです。以下、そのことに関する読売新聞の記事。


 安倍首相が4月下旬の靖国神社の春季例大祭に、真榊(まさかき)料として5万円を納めていたことが7日、分かった。
 「内閣総理大臣 安倍晋三」名で私費を出した。政府関係者が明らかにした。靖国神社に参拝する代わりに真榊料を出したと見られる。
 首相は官房長官時代の昨年4月に靖国神社に参拝したが、参拝の有無については公式には認めていない。 
 安倍首相の靖国参拝については、首相就任前から中国は折に触れ警戒感を示していた。今回の内閣総理大臣名での奉納に対し、中国などからの反発も予想され、調整が進められている首相の訪中や中国の胡錦濤国家主席の来日にも影響を与える可能性がある。


 まず、真榊とは、神事の場で祭壇の左右に立てる祭具であり、五色の絹の先端に榊を立てて、三種の神器を掛けたものを言います。今回の件は、この真榊のための費用を、安倍氏が内閣総理大臣名で支出したものであります。

 一国の首相として、祖国のために亡くなった方に哀悼の意を捧げるのは当然ですし、しかも、現在の微妙な中国との関係上、日中関係に亀裂が入ることを避けつつ、国内の参拝支持派までをも考慮した、今回の安倍首相の行為は極めて適切なものであったと思います。

 しかしながら、野党(国民新党除く)ならびに一部のメディアは、この行為までも糾弾しようとしています。その彼らの主張とは、主に次のようなものです。

1、首相の今回の行為は、憲法の定める政教分離(20条)に反する。
2、修復しかけたアジア外交に亀裂を生じることになる。

 まず、1について検討していきましょう。確かに、一見、彼らの主張は最ももように聞こえます。しかし、彼らが首相の行為に政教分離を持ち出して批判するのは、殆ど靖国神社に関してだけです。

 例えば、今年はじめに安倍首相は明治神宮を参拝しましたが、このとき、野党からはおろか、今回の件で青筋立てて批判した一部のメディアも、「政教分離に反する」などとは言わず、むしろ明治神宮参拝を好意的にすら報道していました。

 そして、以前、小泉氏が首相だったとき、アメリカのブッシュ大統領と金閣寺で会談を行いましたが、このときも「政教分離に反する」という主張は、どこからも聞こえてきませんでした。無論、金閣寺は「寺」ですから、宗教施設なのですが・・・。

 更に、小泉氏が首相のとき、彼が尊敬する吉田松陰を祀ってある神社に氏が参拝したとき、氏はマスコミの目の前でニ礼ニ拍手一礼という神道形式で参拝をしたのですが、このときそこにいた記者の誰もが「政教分離上どうなのか」と質問してこなかったため、氏自ら「今私は神道形式で参拝をしたのですが、政教分離に反すると言わないのですか?」と聞いたところ、記者たちはグウの音も出なかったと言います。

 このように、今回の件で批判者が声高に使う「政教分離に反する」という主張は、露骨なまでのダブルスタンダードであることは、既に枚挙に暇なく証明され尽くされています。

 もっとも、法的な立場からの検証では、確かに判例や学説に照らして考えれば、違憲、もしくは極めて「グレーゾーン的」なものであると言わざるを得ないでしょうが、思うに、政教分離に関する学説や判例も、過剰に政治と宗教を峻別しようとしている感が否めません。

 愛媛玉串料事件は、最高裁では違憲とされましたが、二審の高松高裁では、玉串料の金額が「社会的な儀礼の程度」の些細なものであり、合憲と判断しました。こちらの判断のほうが、常識に適っていると思います。今回の安倍首相の行為も、戦没者の慰霊を国家の指導者が行うという、ごく自然なことをしたのみであり(このような行為までも政教分離違反とする国は、世界広しと言えども他に聞いたことがありません。)、しかも5万円という金額は、特定の宗教団体を援助するとは到底言いがたいものであり、政教分離上、何ら問題のないことであると思います。

 続いて2の主張の検討をしましょう。これもまた、一見もっとものように聞こえるのですが、既にこれもまた指摘されて久しいのですが、アジア広しといえども、首相の靖国神社への関与を表立って非難している国は、中国と韓国という、この二つの国しかありません(北朝鮮は、日本は国家として承認していため、除く)。

 むしろ、こうやってせっせと火を点けて回ることのほうが、逆に中韓との関係上、マイナスです。「中韓との関係を損なうな」と言いながら、そこに亀裂を作っているのは、他ならぬ批判者たち自身なのです。中韓との関係を重視したいのならば、ここは騒がず放っておくのが、一番賢明なのです。騒げば騒ぐほど、中韓はそれを利用し、日本に対して居丈高になるのですから。

 以上、今回の真榊料奉納の件における批判者たちの矛盾を批判しましたが、実はこの今回の件は、もっと別の思惑があったのではないかと思うのです。それはつまり、憲法改正についてです。

 産経新聞客員論説員の花岡信昭氏が指摘しているように、ここ最近、護憲派勢力が勢いづき、一時は後退したかのように見えたが台頭しつつあります。このような世論の背景を考慮し、今ここで真榊料奉納という情報をメディアに流したのではないか、というものです。

 すなわち、これを報道すれば間違いなくマスコミは首相の採った行為を「政教分離」を引き合いに出し、非難します。しかし、世論は靖国参拝に関しては、憲法9条改正よりも穏やかに捉えているので、政府サイドが、「こんな程度のことでも憲法違反になる今の憲法は、やっぱりおかしいとは思いませんか?」とアピールしたかったのではないか、と。

 政教分離について「こんな憲法おかしい」と国民が考えるようになれば、政府の側としては、護憲派を牽制できるのと同時に、改憲派の巻き返しまでも狙える、ということを目論んでもおかしくはないでしょう。

 少し邪推が過ぎたでしょうか。

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