カナダ・エクスプレス

多倫多(トロント)在住の癌の基礎研究を専門にする科学者の自由時間ブログです。

私の好きな古都の寺

2007年06月18日 | 日本
東大寺、東寺、高雄山神護寺。私の好きな奈良・京都のお寺である。この三つの寺にはある人物を通して共通点がある。お分かりでない方がいらっしゃれば、これに高野山金剛峯寺を加えれば、ほとんどの皆さんがおわかりになるだろう。弘法大師こと空海のことである。

ちょうど司馬遼太郎氏の名著『空海の風景』を再読し終えて、また空海という人物のスケールの大きさに感動しているところである。中学か高校の教科書で教わった真言宗の開祖ということよりも、私は、空海こそが日本に膨大な文化的遺産を残し、その後の日本人の精神的自己形成にも大きく影響を及ぼした、日本人最初の海外留学生であったことに、甚だ感嘆するのである。空海の中国留学は二年足らずであったが、その間彼の得たもの、身につけたものは筆舌に尽くしがたいものがある。それは真言密教の経典に止まらず、土木、灌漑、建築、衣食住にかかわる様々な最先端の技術を、当時世界中で最も先駆的であった大都市・長安から取り入れたのである。讃岐に残る満濃池は空海が建築に携わった灌漑用ため池で、今でも讃岐の国の田畑を潤すのに利用されている。時は1300年以上も前のことである。

最初に触れた三つの寺は、どれも空海にゆかりのある寺である。幼いころからこれらの寺に惹かれてきた私の心には、空海という人物に対する興味がとめどもなく湧いてくるのである。