よしだハートクリニック ブログ

 院長が伝えたい身近な健康のはなし

脂肪の話(2)

2015-03-03 15:44:45 | 健康・病気
 さて脂肪(脂質)の種類について考えてみましょう。

 血液中には、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4つの脂質成分が含まれています。脂質は基本的に脂なのでそのままでは水に溶けません。コレステロールや中性脂肪をリン脂質と特殊なたんぱく質(アポ蛋白)で包み込み血液中に溶け込めるようにしたものをリポ蛋白といいます。リポ蛋白には、その比重と大きさにより5種類(カイロミクロン、VLDL、IDL、LDL、HDL)に分類されています。皆様も血液検査で聞いたことがある、HDLコレステロールやLDLコレステロールはそのリポ蛋白中のコレステロールの量です。
 体の中には、中性脂肪として脂肪細胞の中に脂肪滴の形で蓄えられています。中性脂肪は、遊離脂肪酸3つとグリセロール(アルコールの一種)が結合した物質です。この貯蔵中性脂肪は、長時間エネルギーの補給がない時に分解され、遊離脂肪酸がエネルギーとして使われます。

 血液中の脂質の量が正常より多いあるいは少ないと脂質異常症と呼ばれます。ご存知のとおり、動脈硬化を引き起こす大きな要因であり、心筋梗塞、脳卒中といった命にかかわる病気に関係します。例えば、悪玉コレステロールと言われるLDLコレステロールが多い場合や善玉コレステロールと言われるHDLコレステロールが少ない場合は動脈硬化を促進させると考えられています。その他脂肪肝、膵炎などの原因になります。
 体中の脂質が多いのを肥満症といい、内臓脂肪型と皮下脂肪型にわけることができます。特に、内臓脂肪型はメタボリック症候群と関連し高血圧、糖尿病といった同じように動脈硬化を促進する生活習慣病の原因となります。
 
一方、最近の研究では、脂質の「量」だけでなく「質」も問われており、より細かい検査やそれに対する治療(食事・運動・薬物)が求められるようになっています。   次回から、「質」と食事(食物)の話をします。

脂肪の話(1)

2015-03-03 15:33:38 | 健康・病気
 脂肪と聞くと皆様は何を思い浮かべるでしょう。非常に高価ですが芸術的で美味しい霜降り肉を思い出して唾をごくっと飲み込む方もおられるでしょうし、おなか周りの脂肪をつまんでため息をつかれている方もいるかもしれません。さらに、美の象徴としてふくよかな女性が賞賛されたり、メタボの元凶として忌み嫌われたり、文化や時代背景により様々な評価がされる体脂肪は社会学的にも興味があります。 今回は知ってるようで意外に誤解も多い脂肪について医学的・栄養学的に考えてみます。

 まず脂肪の役割ですが、①体の貴重なエネルギー源でありかつ余分なエネルギーを貯蔵する、②体の構成成分(細胞膜、ホルモンなど)になる、③体を衝撃・寒さから守る緩衝材・断熱剤としての働き、などがあります。

 エネルギー源としての脂肪ですが、1gあたり9Kcal(他の三大栄養素の糖質、蛋白質は4kcal/g)と非常に熱効率がよいです。このため、余ったカロリーは主に脂肪として蓄えられることになります。水分さえあれば飢餓状態でも2~3ヶ月は生き延びることが可能なのは体脂肪のおかげです。話はそれますが、糖質は食事としてとらなくても他の栄養素から合成することができますが、脂肪と蛋白質は生きていく上で必須の栄養素です。
 次に体の構成成分としても重要な役割を果たしています。人の体は約37兆個の細胞からできていますが、その細胞は細胞膜により囲まれています。細胞膜には、①外部と内部を隔絶するバリア機能と、②外部と内部の物質の交通を適切に制御する機能が必要となりますが、これは、親水性と疎水性の性質を併せ持つリン脂質が二重構造をとることにより営まれています。また体の恒常性(ホメオスターシス)を維持するのに重要な働きをするステロイドホルモンや脂肪の吸収を助ける胆汁は、コレステロールから作られています。

 ここでリン脂質やコレステロールといった脂肪に関連した言葉がでてきましたが、次回でもう少し詳しく説明します。