戦国時代の軍(いくさ)の進行について
1)まえがき
様々な小説・テレビドラマで、戦国時代の戦闘シーンが
幾度となく描かれている。きちんと時代考証家の監修に
よって作られているはずだが、実は小説は販売部数・TV
は視聴率をかせぐ必要があり、かなり現実の軍を無視
したキャッチーな描写になっている。実際の軍(いくさ)
とはどういった流れで行われていたのか、具体的に説明
していきたい。
2)軍の大義名分
軍をおこすにあたっては、『大義名分』があることが条件
である。
①敵が自領に攻め込んできたのを撃退する
②自領に混乱を起こす後ろ盾となっているものの本拠
をつきとめ、そこを叩く
③同盟国からの参戦要請に応じる。ただし、その同盟
国の敵方に明らかに非があることがわかった場合
④幕府(あるいは時の政権)の下知に従わないものを
征伐する
⑤帝(あるいは帝の信任する大臣ら)の下知に従わ
ないものを征伐する
⑥同盟国の領主が内乱により弑逆されたときは、その
主謀者に対して自動的に征伐の大義名分が発生する。
ただしこの大義名分も、諸国から「まあ致し方あるまい」
と判断される程度の合理性が必要で、あまりに強引過ぎ
ると諸国から「それはやりすぎであろう」という悪評と反発
を招く。
このように、当時の軍については、当事国同士の争いと
いう側面のほか、「あそこの国はどういう大義名分を得て、
どういう戦い方をした」という諸国の研究材料としての側面
もあった。諸国が「それはないだろう」とおもうほど、「認め
ようのない」大義名分で開戦するのは、まず第一の軍の
無作法といえる。
3)軍の目的
大まかに分ければ、軍は平地戦・山岳戦・海戦・攻城戦
に分けられるが、極論すれば平地戦・山岳戦・海戦は互い
の勢力範囲の最前線にある城同士から出陣するわけで
あり、攻城戦の一つのバリエーション(過渡的状態)と考え
られる。
軍の究極の目的は、『戦闘に勝つことによって、目的と
した地域(あるいは城)を自らの勢力範囲に組み込むこと』
である。ただ単に戦闘に勝つだけでは、軍によって失われ
た人命・田畠・武器・金・資材・時間をリカバーするだけの
経済的余得がなく、国力が疲弊してしまうだけである。
4)軍の進行パターン
軍はどのようなパターンで進行されるのか?攻城戦の
場合と平地戦の場合に分けて記したい。
①攻城戦の場合
大義名分を得る
↓
軍の準備を行う
↓※和議により軍を回避するオプションあり
宣戦布告を行う
↓
STAGE1《陽動と脅迫》
1.文書による通告
2.あからさまに物見を出す
3.調略を試みる、または和議を試みる
4.敵城の周りで田畠なぎ・放火を行う
↓
STAGE2《攻撃の意思表明》
5.敵城の周囲に要害を築く
6.敵城の周囲に鹿垣を作り包囲する
↓
STAGE3《戦闘と処理》
7.城攻めを行う
8.決着をつける(退却か攻略か)
9.戦後処理を行う
以上のとおり、人・金・資材をなるべく浪費しないで最高
の結果を得られるよう、段取りを慎重に進めて行く。この
意味からいえば、戦闘を行わず敵城を調略により攻陥
するのが最高のパフォーマンスといえる。
②平地戦の場合
大義名分を得る
↓
軍の準備を行う
↓※和議により軍を回避するオプションあり
宣戦布告を行う
↓
STAGE1《行軍》
1.進軍路の安全確認(伏兵がいないか、路地の民家は
協力的かどうかなど)
2.進軍距離は1日8里(約31km)程度
↓
STAGE2《布陣》
3.食事の用意
4.先陣・本陣・伏兵・兵站などの位置決め
5.戦闘及び戦闘後の段取りの確認
6.敵陣に和議勧告し、拒否した場合自動的に戦闘の
意思ありと判断される
↓
STAGE3《開戦》
7.開戦
8.一般的に全兵力の5~10%が損なわれれば終了
※純野の推計による
9.退却・進軍・一時駐留など
以上どの段階でも細心の注意を払いながら、最小の
被害で最大の効果を目指していく。この意味からいえ
ば、戦闘を行わず敵軍を調略により撤退させるのが
最高のパフォーマンスといえる。ただし伏兵を用意
しておきわざと撤退する場合もあるので、戦闘勝利後
の進軍については、敵軍の布陣等すばやく調査・
検討することが肝要となる。
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1)まえがき
様々な小説・テレビドラマで、戦国時代の戦闘シーンが
幾度となく描かれている。きちんと時代考証家の監修に
よって作られているはずだが、実は小説は販売部数・TV
は視聴率をかせぐ必要があり、かなり現実の軍を無視
したキャッチーな描写になっている。実際の軍(いくさ)
とはどういった流れで行われていたのか、具体的に説明
していきたい。
2)軍の大義名分
軍をおこすにあたっては、『大義名分』があることが条件
である。
①敵が自領に攻め込んできたのを撃退する
②自領に混乱を起こす後ろ盾となっているものの本拠
をつきとめ、そこを叩く
③同盟国からの参戦要請に応じる。ただし、その同盟
国の敵方に明らかに非があることがわかった場合
④幕府(あるいは時の政権)の下知に従わないものを
征伐する
⑤帝(あるいは帝の信任する大臣ら)の下知に従わ
ないものを征伐する
⑥同盟国の領主が内乱により弑逆されたときは、その
主謀者に対して自動的に征伐の大義名分が発生する。
ただしこの大義名分も、諸国から「まあ致し方あるまい」
と判断される程度の合理性が必要で、あまりに強引過ぎ
ると諸国から「それはやりすぎであろう」という悪評と反発
を招く。
このように、当時の軍については、当事国同士の争いと
いう側面のほか、「あそこの国はどういう大義名分を得て、
どういう戦い方をした」という諸国の研究材料としての側面
もあった。諸国が「それはないだろう」とおもうほど、「認め
ようのない」大義名分で開戦するのは、まず第一の軍の
無作法といえる。
3)軍の目的
大まかに分ければ、軍は平地戦・山岳戦・海戦・攻城戦
に分けられるが、極論すれば平地戦・山岳戦・海戦は互い
の勢力範囲の最前線にある城同士から出陣するわけで
あり、攻城戦の一つのバリエーション(過渡的状態)と考え
られる。
軍の究極の目的は、『戦闘に勝つことによって、目的と
した地域(あるいは城)を自らの勢力範囲に組み込むこと』
である。ただ単に戦闘に勝つだけでは、軍によって失われ
た人命・田畠・武器・金・資材・時間をリカバーするだけの
経済的余得がなく、国力が疲弊してしまうだけである。
4)軍の進行パターン
軍はどのようなパターンで進行されるのか?攻城戦の
場合と平地戦の場合に分けて記したい。
①攻城戦の場合
大義名分を得る
↓
軍の準備を行う
↓※和議により軍を回避するオプションあり
宣戦布告を行う
↓
STAGE1《陽動と脅迫》
1.文書による通告
2.あからさまに物見を出す
3.調略を試みる、または和議を試みる
4.敵城の周りで田畠なぎ・放火を行う
↓
STAGE2《攻撃の意思表明》
5.敵城の周囲に要害を築く
6.敵城の周囲に鹿垣を作り包囲する
↓
STAGE3《戦闘と処理》
7.城攻めを行う
8.決着をつける(退却か攻略か)
9.戦後処理を行う
以上のとおり、人・金・資材をなるべく浪費しないで最高
の結果を得られるよう、段取りを慎重に進めて行く。この
意味からいえば、戦闘を行わず敵城を調略により攻陥
するのが最高のパフォーマンスといえる。
②平地戦の場合
大義名分を得る
↓
軍の準備を行う
↓※和議により軍を回避するオプションあり
宣戦布告を行う
↓
STAGE1《行軍》
1.進軍路の安全確認(伏兵がいないか、路地の民家は
協力的かどうかなど)
2.進軍距離は1日8里(約31km)程度
↓
STAGE2《布陣》
3.食事の用意
4.先陣・本陣・伏兵・兵站などの位置決め
5.戦闘及び戦闘後の段取りの確認
6.敵陣に和議勧告し、拒否した場合自動的に戦闘の
意思ありと判断される
↓
STAGE3《開戦》
7.開戦
8.一般的に全兵力の5~10%が損なわれれば終了
※純野の推計による
9.退却・進軍・一時駐留など
以上どの段階でも細心の注意を払いながら、最小の
被害で最大の効果を目指していく。この意味からいえ
ば、戦闘を行わず敵軍を調略により撤退させるのが
最高のパフォーマンスといえる。ただし伏兵を用意
しておきわざと撤退する場合もあるので、戦闘勝利後
の進軍については、敵軍の布陣等すばやく調査・
検討することが肝要となる。
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