『いいかよく聞け、五郎左よ!』 -もう一つの信長公記-

『信長公記』と『源平盛衰記』の関連は?信長の忠臣“丹羽五郎左衛門長秀”と京童代表“細川藤孝”の働きは?

戦国データ篇VOL.1【軍(いくさ)の進行方法】

2007-06-25 23:22:31 | 戦国データ篇
戦国時代の軍(いくさ)の進行について

1)まえがき

 様々な小説・テレビドラマで、戦国時代の戦闘シーンが

幾度となく描かれている。きちんと時代考証家の監修に

よって作られているはずだが、実は小説は販売部数・TV

は視聴率をかせぐ必要があり、かなり現実の軍を無視

したキャッチーな描写になっている。実際の軍(いくさ)

とはどういった流れで行われていたのか、具体的に説明

していきたい。

2)軍の大義名分

 軍をおこすにあたっては、『大義名分』があることが条件

である。

 ①敵が自領に攻め込んできたのを撃退する

 ②自領に混乱を起こす後ろ盾となっているものの本拠

  をつきとめ、そこを叩く

 ③同盟国からの参戦要請に応じる。ただし、その同盟

  国の敵方に明らかに非があることがわかった場合

 ④幕府(あるいは時の政権)の下知に従わないものを

  征伐する

 ⑤帝(あるいは帝の信任する大臣ら)の下知に従わ

  ないものを征伐する

 ⑥同盟国の領主が内乱により弑逆されたときは、その

  主謀者に対して自動的に征伐の大義名分が発生する。

ただしこの大義名分も、諸国から「まあ致し方あるまい」

と判断される程度の合理性が必要で、あまりに強引過ぎ

ると諸国から「それはやりすぎであろう」という悪評と反発

を招く。

 このように、当時の軍については、当事国同士の争いと

いう側面のほか、「あそこの国はどういう大義名分を得て、

どういう戦い方をした」という諸国の研究材料としての側面

もあった。諸国が「それはないだろう」とおもうほど、「認め

ようのない」大義名分で開戦するのは、まず第一の軍の

無作法といえる。

3)軍の目的
 大まかに分ければ、軍は平地戦・山岳戦・海戦・攻城戦

に分けられるが、極論すれば平地戦・山岳戦・海戦は互い

の勢力範囲の最前線にある城同士から出陣するわけで

あり、攻城戦の一つのバリエーション(過渡的状態)と考え

られる。

 軍の究極の目的は、『戦闘に勝つことによって、目的と

した地域(あるいは城)を自らの勢力範囲に組み込むこと』

である。ただ単に戦闘に勝つだけでは、軍によって失われ

た人命・田畠・武器・金・資材・時間をリカバーするだけの

経済的余得がなく、国力が疲弊してしまうだけである。

4)軍の進行パターン

 軍はどのようなパターンで進行されるのか?攻城戦の

場合と平地戦の場合に分けて記したい。

 ①攻城戦の場合

 大義名分を得る
   ↓
 軍の準備を行う
   ↓※和議により軍を回避するオプションあり
 宣戦布告を行う
   ↓
 STAGE1《陽動と脅迫》
 1.文書による通告
 2.あからさまに物見を出す
 3.調略を試みる、または和議を試みる
 4.敵城の周りで田畠なぎ・放火を行う
   ↓
 STAGE2《攻撃の意思表明》
 5.敵城の周囲に要害を築く
 6.敵城の周囲に鹿垣を作り包囲する
   ↓
 STAGE3《戦闘と処理》
 7.城攻めを行う
 8.決着をつける(退却か攻略か)
 9.戦後処理を行う

 以上のとおり、人・金・資材をなるべく浪費しないで最高

 の結果を得られるよう、段取りを慎重に進めて行く。この

 意味からいえば、戦闘を行わず敵城を調略により攻陥

 するのが最高のパフォーマンスといえる。

 ②平地戦の場合
 大義名分を得る
   ↓
 軍の準備を行う
   ↓※和議により軍を回避するオプションあり
 宣戦布告を行う
   ↓
 STAGE1《行軍》
 1.進軍路の安全確認(伏兵がいないか、路地の民家は
 協力的かどうかなど)
 2.進軍距離は1日8里(約31km)程度
   ↓
 STAGE2《布陣》
 3.食事の用意
 4.先陣・本陣・伏兵・兵站などの位置決め
 5.戦闘及び戦闘後の段取りの確認
 6.敵陣に和議勧告し、拒否した場合自動的に戦闘の
 意思ありと判断される
   ↓
 STAGE3《開戦》
 7.開戦
 8.一般的に全兵力の5~10%が損なわれれば終了
 ※純野の推計による
 9.退却・進軍・一時駐留など

 以上どの段階でも細心の注意を払いながら、最小の

 被害で最大の効果を目指していく。この意味からいえ

 ば、戦闘を行わず敵軍を調略により撤退させるのが

 最高のパフォーマンスといえる。ただし伏兵を用意

 しておきわざと撤退する場合もあるので、戦闘勝利後

 の進軍については、敵軍の布陣等すばやく調査・

 検討することが肝要となる。

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