戦国時代の軍(いくさ)の進行について
5)軍の作法
軍については、明文化されていないながらも守らなけれ
ばいけない作法がある。
①開戦の通告
軍の進行パターン中『開戦』は、必ず敵方に文書あるいは
実際行動を通じて通告してから行うのがまず第一の作法
である。また古風にのっとれば、互に鏑矢を射合い鬨の声
を上げてから戦闘開始という手順である。戦闘開始の
場所・時刻が上記のとおり互いに察しがつく状態で
開戦されるのが普通なので、突然聞いたことも無い敵
が聞いたことも無い方面から攻め込んでくることはあり
えない。もしこの作法を破れば、『戦国の無作法』という
悪評が京都を含む諸国へ広がってしまう
②連絡係を攻撃してはならない
戦闘の途中で和議の勧告や降参の意思表示をする
とき、連絡係としては使番などが用いられる。『五』の字
の書かれた旗などを翻して馬で行きかうため『番五の
使い』と呼ばれるが、彼等に対して絶対に攻撃しては
ならないし、『番五の使い』を装って敵陣に攻め込んだ
りしてはならない。もしこの作法を破れば、激怒した敵
から徹底的な殲滅戦に持ち込まれる可能性が出てくる
③報告時の作法
『番五の使い』の側にも作法があり、まず敵陣の外交
担当者(いわゆる『取次ぎ衆』)あてに面会したい旨
申上し以下のような作法で面会する。
*取次ぎ衆の手前で馬から下りる
→攻撃の意志がないということを示す動作
*敵武将の右手側から乗っている馬の背後を回り込み
武将の左手側に出てひざまづいて物を申上する
→武士は普通右手で左腰につけた刀を抜き右手で
打つ。それ故馬の左正面から近づく敵を切るのは
難しい。したがって馬の左正面から近づくと攻撃の
意志ありとみなされる
*ひざまづくときには右ひざをつき左ひざを立てる
→左ひざをつき右ひざを立てるとすぐに刀を抜ける
姿勢となり、攻撃姿勢とみなされる
*両手とも手のひら側を敵将に向けて地面につく
→手の中に小さい武器さえ持っていないことを相手
に示すための動作
*もし兜をかぶっていた場合は右脇に抱える
→兜を右脇に抱えれば刀が抜けない姿勢となり敵意
のないしるしとなる
これらの報告時の作法は普遍的なものであり、敵軍相手
だけではなく自軍の内部でも同様である。報告時の作法
を破った者はいつでも切り捨てられてよいことになっている
④調略に応じた敵将は厚遇すること
戦闘開始前、寝返りや内応を起こさせるため様々な調略
が行われるが、事前の打ち合わせどおり寝返り・内応を
行なって効果をあげた敵将は、戦後厚遇する作法になって
いる。ただし、寝返ってきた敵将は、その後の軍で最前線
に置かれる場合が多く、また最前線を志願して戦功を立て
ることによって新しい主君に忠誠心をあらわすのが普通で
あった。
なお寝返りや内応に応じるときには、互に有力・著名な
武将に取り次いでもらい、事前に確認しあっておくことが
重要。戦闘中に前打ち合わせなく寝返った者は、もっとも
な理由(例えば守備が厳重で連絡することができなかった
など)が無い限り許されない。逆に調略に応じ自軍のため
にきちんと功績を挙げてくれた武将を殺害したりするのは、
『戦国の無作法』という悪評を受けることになる
⑤平地戦で捕虜になった場合
一つの戦闘のあと、武士らしく戦って捕虜になったものに
ついては、放れ馬同様時期を定めて互いに交換し合うの
が作法である。戦わずに逃げ落ちた者は卑怯者とされ、
切り捨てられても仕方ないということになっている
⑥攻城戦の戦後処理
攻城戦の後降参してきた者の扱いについてはいくつかの
暗黙のルールがある。原則は「武士らしく命を惜しまず
戦った者」が対象となるが、
イ.明確に降参の意志を示してきた場合、それ以上攻撃
せず話し合いに応じる。降参の詫び言に筋が通っていれ
ば、戦後の扱いについては取次ぎ衆一任の形で保留とし、
一度生きたまま捕虜とされる
→連絡係としては、取次ぎ衆・同朋衆・使番・軍使など
ロ.ただしその打ち合わせでさまざまな詫び言に合理性が
無かったり、ただ助かりたいだけの為に無謀な交換条件
(金銭・財物・土地など)を出してきたりする者は許され
ない
ハ.二度以上叛逆し降参してきた者は、いかなる理由が
あろうとも許されない
ニ.城あるいは取手全体の降参が許された場合、守備方
の取る方法は二通りある。
1.近くの自領あるいは同盟国領に退却の上、後日戦後
処理(人質の提出・補償金等の交換条件)をとり行う
2.開城及び交換条件を実行した上で、新しい主君に
服従する。ただし、一国の代表者(国司・守護など)
クラスの者が強い意思によって籠城戦を行なった場合、
全んど許されていない。したがって、守備方全滅か
城主の自害を条件に開城・降参という進行となる
⑦降参した者への作法
基本的に『降参』は上記のように筋道だった進行でとり
行われるので、その取り扱いについてもいくつかの暗黙
のルールがある。
*明確にしかも筋道を立てて降参してきたものを私的
怨恨で許さないのは『軍の無作法』
*降参が認められ城外に出てきたものを討ち取ったり
するのは『軍の無作法』
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5)軍の作法
軍については、明文化されていないながらも守らなけれ
ばいけない作法がある。
①開戦の通告
軍の進行パターン中『開戦』は、必ず敵方に文書あるいは
実際行動を通じて通告してから行うのがまず第一の作法
である。また古風にのっとれば、互に鏑矢を射合い鬨の声
を上げてから戦闘開始という手順である。戦闘開始の
場所・時刻が上記のとおり互いに察しがつく状態で
開戦されるのが普通なので、突然聞いたことも無い敵
が聞いたことも無い方面から攻め込んでくることはあり
えない。もしこの作法を破れば、『戦国の無作法』という
悪評が京都を含む諸国へ広がってしまう
②連絡係を攻撃してはならない
戦闘の途中で和議の勧告や降参の意思表示をする
とき、連絡係としては使番などが用いられる。『五』の字
の書かれた旗などを翻して馬で行きかうため『番五の
使い』と呼ばれるが、彼等に対して絶対に攻撃しては
ならないし、『番五の使い』を装って敵陣に攻め込んだ
りしてはならない。もしこの作法を破れば、激怒した敵
から徹底的な殲滅戦に持ち込まれる可能性が出てくる
③報告時の作法
『番五の使い』の側にも作法があり、まず敵陣の外交
担当者(いわゆる『取次ぎ衆』)あてに面会したい旨
申上し以下のような作法で面会する。
*取次ぎ衆の手前で馬から下りる
→攻撃の意志がないということを示す動作
*敵武将の右手側から乗っている馬の背後を回り込み
武将の左手側に出てひざまづいて物を申上する
→武士は普通右手で左腰につけた刀を抜き右手で
打つ。それ故馬の左正面から近づく敵を切るのは
難しい。したがって馬の左正面から近づくと攻撃の
意志ありとみなされる
*ひざまづくときには右ひざをつき左ひざを立てる
→左ひざをつき右ひざを立てるとすぐに刀を抜ける
姿勢となり、攻撃姿勢とみなされる
*両手とも手のひら側を敵将に向けて地面につく
→手の中に小さい武器さえ持っていないことを相手
に示すための動作
*もし兜をかぶっていた場合は右脇に抱える
→兜を右脇に抱えれば刀が抜けない姿勢となり敵意
のないしるしとなる
これらの報告時の作法は普遍的なものであり、敵軍相手
だけではなく自軍の内部でも同様である。報告時の作法
を破った者はいつでも切り捨てられてよいことになっている
④調略に応じた敵将は厚遇すること
戦闘開始前、寝返りや内応を起こさせるため様々な調略
が行われるが、事前の打ち合わせどおり寝返り・内応を
行なって効果をあげた敵将は、戦後厚遇する作法になって
いる。ただし、寝返ってきた敵将は、その後の軍で最前線
に置かれる場合が多く、また最前線を志願して戦功を立て
ることによって新しい主君に忠誠心をあらわすのが普通で
あった。
なお寝返りや内応に応じるときには、互に有力・著名な
武将に取り次いでもらい、事前に確認しあっておくことが
重要。戦闘中に前打ち合わせなく寝返った者は、もっとも
な理由(例えば守備が厳重で連絡することができなかった
など)が無い限り許されない。逆に調略に応じ自軍のため
にきちんと功績を挙げてくれた武将を殺害したりするのは、
『戦国の無作法』という悪評を受けることになる
⑤平地戦で捕虜になった場合
一つの戦闘のあと、武士らしく戦って捕虜になったものに
ついては、放れ馬同様時期を定めて互いに交換し合うの
が作法である。戦わずに逃げ落ちた者は卑怯者とされ、
切り捨てられても仕方ないということになっている
⑥攻城戦の戦後処理
攻城戦の後降参してきた者の扱いについてはいくつかの
暗黙のルールがある。原則は「武士らしく命を惜しまず
戦った者」が対象となるが、
イ.明確に降参の意志を示してきた場合、それ以上攻撃
せず話し合いに応じる。降参の詫び言に筋が通っていれ
ば、戦後の扱いについては取次ぎ衆一任の形で保留とし、
一度生きたまま捕虜とされる
→連絡係としては、取次ぎ衆・同朋衆・使番・軍使など
ロ.ただしその打ち合わせでさまざまな詫び言に合理性が
無かったり、ただ助かりたいだけの為に無謀な交換条件
(金銭・財物・土地など)を出してきたりする者は許され
ない
ハ.二度以上叛逆し降参してきた者は、いかなる理由が
あろうとも許されない
ニ.城あるいは取手全体の降参が許された場合、守備方
の取る方法は二通りある。
1.近くの自領あるいは同盟国領に退却の上、後日戦後
処理(人質の提出・補償金等の交換条件)をとり行う
2.開城及び交換条件を実行した上で、新しい主君に
服従する。ただし、一国の代表者(国司・守護など)
クラスの者が強い意思によって籠城戦を行なった場合、
全んど許されていない。したがって、守備方全滅か
城主の自害を条件に開城・降参という進行となる
⑦降参した者への作法
基本的に『降参』は上記のように筋道だった進行でとり
行われるので、その取り扱いについてもいくつかの暗黙
のルールがある。
*明確にしかも筋道を立てて降参してきたものを私的
怨恨で許さないのは『軍の無作法』
*降参が認められ城外に出てきたものを討ち取ったり
するのは『軍の無作法』
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