経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

米中接近は日本への警報

2009-02-05 00:01:57 | Weblog
   米中接近は日本への警報

 09年2月2日読売新聞朝刊の一面トップに
 
   米中首脳級で定期対話 「副大統領・首相」調整 軍事面含め

という記事が載っていました。予想されたことですが、オバマ民主党政権の親中非日外交が始まりました。これは強者同盟であり、また弱者同盟です。アメリカ経済は破綻寸前で、それを打開する新しい政策は打ち出されていません。中国の実質的失業率は10%近くにのぼり、従来から頻発していた暴動(?)が激増しているといわれます。世界金融危機の影響は日本よりはるかに中国の方に甚大です。それでなくとも中国は資本の輸入国です。アメリカは世界最大の資本輸入国です。反対に日本は最大の資本輸出国です。こう考えますと経済的状況最悪の二国が手を結んだと解釈できます。困窮者同士が経済危機に際して取りうる有効な手段の一つが軍事的圧力です。軍事的圧力を背景にして経済的利害を調整することが考えられます。どんな事が考えられるでしょうか?不気味です。2月中旬に来日するというヒラリ-・クリントン国務長官は何を言いにくるのでしょうか?

 歴史を100年近く遡ってみましょう。30数年前の米中和約、キッシンジャ-外交による(日本頭越しの)米中の接近、の時、両国間で日本を叩くいう合意があったそうです。(キッシンジャ-・周恩来密約説)中国は当時から反日です。アメリカは日本の経済力の台頭を恐れていました。以後の経過はアメリカによる日本叩きと中国の台頭です。この事は米国にとっても歓迎すべきことでした。なぜなら紙屑同様になりかけたドルは中国などの新興経済に投資されることにより、世界貨幣としての役割を従来以上に果たせる事ができたからです。そのドルをうまく使って、金融投機でアメリカはなんとかしのいできました。その下支えを日本はさせられたようなものです。@破綻が昨年のサブプライム・ロ-ン以後の危機です。世界貨幣ドルの安定供給により発展してきた中国経済が最悪の状態になるのは当然でしょう。こういう時の二国の接近は何を意味するのか?

 1931年に満州事変が勃発します。14年にわたる日中戦争が始まります。この事変は関東軍の一部による陰謀で起こりましたが、その背後には深刻な経済摩擦があります。当時日本は下関条約により、満州鉄道の運営権@を獲得していました。そこへ米英が割り込みます。満州鉄道に沿って東西の両側に新しい鉄道を建設する。もしそうなら日本の満州経営は破綻します。満蒙は帝国の生命線、は事実です。二本の鉄道建設の資本は米英から供給されるはずでした。一応蒋介石の国民党政権によるとなっていますが。当時は世界不況の只中、米英とも新しい資本の投下場と市場を求めていました。こうして米英という当時の二大強国と人口大国中国により日本は挟撃されることになりました。結果は1945年の原爆投下と日本の降伏です。


 日本はその地政学上の位置ゆえに、中国とアメリカという大国の圧力を腹背に受けねばなりません。またこの両国には著しい類似点があります。まずなによりも両国は多民族社会です。そして国内の経済格差は著しい。均一で平等になりがちな日本とは全く違います。国内の紛争には事を欠きません。

 両国ともジェノサイドのヴェテランです。アメリカの事は、インディアンの居留地への追放と黒人奴隷制だけ見ればわかりやすいでしょう。中国の歴史は易姓革命による王朝の興亡の連続です。その度に人民の大量殺戮が起こります。状況如何では人口が1/5-1/10になることもあります。太平天国の騒乱では5000万人死んだとか言います。国共内戦、大躍進、文化大革命などの内乱(革命?)も大量の死者を出しています。毛沢東指揮下に行われた大躍進なる政策では2000万人から5000万人が餓死したといわれます。@アメリカに関して言えば原爆投下・ヴェトナムの枯葉作戦・イラクへの劣化ウラン弾発射などはジェノサイドの一種です。

 米中両国はその倫理のあり方でも似ています。中国の歴代の皇帝にとって自分が支配している領土は中華の国であり、他は恩恵を与えて服属させる蛮邦に過ぎませんでした。だから潜在的には世界全体が領土になる可能性があります。現在の中国共産党の指導者もこの考えを受け継いでいます。毛沢東は赤い皇帝でした。

 アメリカ外交の基本は3つの信条からなります。まずモンロ-主義、つまりアメリカ(大陸)のことはアメリカで、よそは口出しするな、ということ。2つ目が門戸開放です。最後が「manifest destiny」、邦訳すると「明白な使命」@です。アメリカ合衆国はメイフラワ-以後、欧州大陸からの移民で成立しました。彼らは西へ西へ開拓地を広げてゆきます。当然先住民であるインディアンは駆逐され衰亡します。移住民の西方への進出と開拓、そして彼らが持参する文明と倫理をそこに敷衍する事は、神が与えた明白な使命だそうです。換言すればそれを阻むものは殺戮してもいいことになります。なにしろ神様の命令を聞かぬやからだからです。

 使命遂行の行程は大陸西岸にまで達します。しかしそこで行き止まりではありません。太平洋のかなたも射程に入ります。日本が開港してまもなくハワイ王国はアメリカに併呑されました。スペインからキュ-バそしてフィリピンを盗り、帝国主義への仲間入りをします。この時の国務長官であるジョン・ヘイが門戸解放を宣言します。宣言の意味は、英仏蘭などの先進国は植民地の利益を独占するな、アメリカにも与えろ、です。20年前から喧伝されたglobalizationはこの宣言の亜種です。

 アメリカはモンロ-主義と門戸開放を都合よく使い分けます。典型が第一次大戦後のアメリカの挙動です。国際連盟の提唱者になったが批准せず、大戦で稼いだ金(当時は金本位制)は不胎化して貨幣量を収縮させ、一方的に金本位制を放棄するなどです。一番被害を受けたのは、当時の指導国イギリスとその優等生の日本でした。

 一番の問題は「明白なる使命」です。この意識はアメリカ人特に指導社会層の潜在意識にはあるはずです。この意識がある限り、アメリカは何をしてもいい、という事になります。

 このような米中二国の接近はなにを意味するのでしょうか?大衆デモクラシ-と共産主義@は結構似ています。日本はじっくり考えてそれに対処しなければなりません。対処の仕方はあります。


@満州への日本侵略がよく言われますが、これは間違いです。満州は女真民族の故地です。彼らが中国に侵入して清王朝を建てました。王朝は漢人の満州への移住を禁止していました。19世紀後半清王朝の威力が衰えてから中国北部の漢人の満州への移住(侵入)が増えます。満州は基本的には日露両国の資本で開発されました。日露は一度戦争しましたが、その後は日露協商を結び仲良くやっていました。(日露戦争当時の満州の人口は100万程度)現在の中国政府は辛亥革命で清王朝を打倒したのですから、満州の領有権は本来ならありません。満州は無主の地でした。早く移住したものが占有したというわけです。移住者の数で漢民族に勝てる民族はありません。

@台湾が中国の領土であるか否かは問題があります。台湾を領土だと主張する中国政府は時には、今から1800年前呉の孫権が台湾らしい島に遠征したのを根拠にもちだすこともあります。この伝でゆくと日本も中国固有の領土という事になりかねません。

@日米構造協議やス-パ-301条に関してはすでに述べました。クリントン政権は就任時円高容認論を展開しました。95年4月ドル79円になります。二期目には逆にドル高を主張します。98年8月ドル147円を記録しています。

@第二次大戦後の日本は未曾有の食糧危機に襲われました。当時の政府の計算では1000万人の餓死が予想されました。結果は極めて稀な例外を除いて餓死は避けられました。

@この使命なるものの一つがキリスト教宣教です。アメリカ独立当時のヴァ-ジニア州では非キリスト教徒は奴隷にされました。

@「天皇制の擁護、第十章、アングロ・サクソンの思想」の解説で述べましたが、民主主義特に議院内閣制の理論的指導者であるロックの考えと共産主義の元祖マルクスのそれは似ています。ロックは国王追放を容認した理由で母校のオックスフォ-ド大学の卒業生名簿から除籍されています。今どうかは知りません。


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