おーちゃんぶろぐ。-まっすぐ歩いてる?-

人生は『ロード・ムービー』

喜び悲しみ
ひとコマひとコマ紡ぎ合わせて…
いつしか、ハッピーなエンドロールを。

『荒川で恋をして。』 第9話

2008-04-02 08:51:57 | Weblog
上州(群馬県)からの風が 少しだけひんやりと感じ始めた頃


いつものように 
左衛門の小屋の中では 左衛門と周、邦男の三人での朝の食事が行われていた


『ふぅ、喰った喰った‥ご馳走様。』湯を啜る左衛門の横で邦男は周に言った


『邦男、今日は山に猪豚を追うぞ』左衛門は邦男に今日の山狩りの話をした




『あの‥ 今日はお二人にお話があります‥。』

周がうつむいたまま どこか寂しげに話し始めた



只ならぬ気配を感じ取った左衛門と邦男は 周の話を聞くことにした





『私は、今日‥お二人にお別れをしなければなりません‥』

周は涙を瞳に溜めて 思わぬ言葉を口にし始めた



左衛門、邦男の二人は口をポカンと開けたまま 言葉が見つからない




周は続けた

『私は‥龍宮城の〝乙姫様〟に仕える鯛なのです‥ 粗相をした罰として
仮の姿で地上界へと参りました

先程、龍宮からのお許しを戴き 戻らなければなりません‥
お二人との思い出は決して忘れません‥。』 


と、立ち上がり振り向き

二人を見つめると鯛の姿になり 小屋の下の堀から川に向け、飛び込み泳いで行ってしまった



『左衛門!!』邦男は左衛門と共に 周の後を追い、堀へと飛び込んだ




すると‥



どうだろう‥ 川の中には大海原へと続く〝水路〟が続いており
二人は凄いスピードで 目の前を泳ぐ周の姿を捉えた




一瞬 スピードが緩やかになり 周がこちらを振り返った





そして


その後ろには 海底の奥底に眠る鯨の様にとても大きな建造物が
ぼんやりと‥微かに確認できる





周はまるで 左衛門と邦男の二人を導くかのように
ゆっくりとゆっくりと‥ さらに泳いでいった



周の後を泳ぐ二人は 水中でお互いに眼を見開いたまま、顔を見合わせた








二人の目の前には



この世の物とは思えない とてつもなく大きな御殿  




                  


                  〝龍宮城〟がその姿を現した













                         つづく




〝町の情報ジャンクション・大橋理容室〟