井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

白衣で手術室に入ったこと

2013年10月10日 | ドラマ

小児病棟(という言葉は実はない)の連続ドラマを書いた時、
手術室に入れてもらったことがある。

大丈夫かなあと危惧していたのだが、患部以外は覆われていて、
相手が人間という感じはせず、また大手術でもなかったせいで
何とか持ちこたえた。

オペ室に入る時着せていただいた白衣で廊下を歩くのは
なぜだろう、気分が良かった。「役柄」としては頼られる存在だからか。

白衣を制服とは言わぬだろうが、制服には制服のよさがある。
皆、きりりと見える。専門領域と責任感の所在だからなのだろうか。
制服をいったん身につけたら「私」を離れ、職務に生きるという
姿勢が清々しいのかもしれない。

これも制服ではないが、式年遷宮の折りの神官の皆様の
浅沓と衣冠束帯にはさやかな威厳が添い、見惚れた。


再放送派

2013年10月10日 | ドラマ

ズボラで、新作ドラマを決まった日の定時に見ることもしないし、
録画予約することもしないので、私が見るドラマは「たまたま」か
午後なんとなくテレビをつけてみる再放送時間帯の
ドラマが多い。最近は韓流が少なくなり、でもBSではやっていて
「イ・サン」などという時代劇をチラッと見たら、面白かった。
エグくて分かりやすい。悪者はいかにも憎々しい顔をしていて
ヒロインをいびるのが楽しい。かといって、次を追いかけてみるかというと
それはない。大体局も覚えていないし、時間帯も忘れた。

そんな中で、比較的見るのが(全部ではなく切れ端である)「相棒」と
「Dr.X外科医大門ミチコ(字を忘れた」である。
切れ端でも面白いから、ヒットした作品はそうしたものなのだろう。
相棒の主人公をやる役者さんは、あ、水谷豊さんか、は
さすがだし、何と言っても・・・・えっと名前が・・・・うーん。
昔から名前を覚えない人間なのだが、このところひどくなっているのか。
昔もこの程度だったかなあ? 方向音痴と共に病的にだめだったのが、
顔と名前の記憶である。

え・・・・ファンなのに名前が出てこない。とにかく・・・・・いまあらゆる俳優女優さんの
中で注目している人なのに? ま、いいや。

医療もの、外科医者の走りを書いていたのが私で、外科医なんとかとか
タイトルに主人公の名を織り込むのも、私というか当時のドラマチーム始めた。
日テレの「外科医有森冴子」という作品だが。

医療ものは見ていて、大変だろうなあと思うのは経験済みだからで、
私は日赤の外科部長についていただいたが、間に立ってくれる
スタッフの有能さもあって、2回、3回と回を重ねるうち、慣れて行った。
麻酔から覚める時間がどのくらいかとか、痛みの程度はとか
専門知識がないと書けないのが医療もの弁護士ものである。
知識はほぼ忘れた。いや各回書くつど忘れて行った。

書いている最中は私が病院に行くと医師が緊張していた。
いや、ドラマを書いているだけだって。書くはしから
忘れていって知識なんてありませんてば。まあ、
じろりと観察だけはさせていただいていたが。

あ、米倉涼子さんだ、今名前が出てきた、困ったもんだ。
一視聴者としてうっとり眺めている女優さんなのに、困ったもんだ。
一線売れっ子の頃なら、この人欲しいで結構叶い、呼んで頂いて書いていたのだが、
今はそうも行かぬので、でもかえって1ファンでいられる。
仕事で組めば仕事相手である。カチンと来ることもあるし、
まあ楽しいこともあるが。俳優さんたちと親しくなるのは連続で
今みたいに単発だと、せいぜいロケ現場か本読みの席で
一度顔を合わせればいいほうである。テレビ小説など長いものを書いていて、
しかも大阪局でホテル住まいであったりすると、部屋に役者連中が
わいわい集まって、楽しかった。浅野ゆう子ちゃんもその中にいた。
若かった。この間浅野温子さんとペアで出ていて、しかも昔共演した
ドラマの数十年後という設定で、これは脚本家にとっては羨ましい試み。
当時の若い浅野さんたちのからみが、回想で使われ、
外科医有森冴子でずっとお付き合いのあった岩城滉一さんが
素敵に若かった。
「おれ朝鮮人だからさ」といきなり言われて、特に驚きもしなかったけれど
「俳優はバイト」発言はいささか、むっとしたが、しかし手抜きを
なさることはなく、極めて良好な俳優さんで、一度飲む席では相当
密接にお話をして、楽しかった。朝鮮人云々は岩城さんはとりわけ
隠していらっしゃるわけではないので、書いた。
書いていけないことは別にある。いや危なげな話ではなく
某女優さんから聞いた色っぽい話である。書きたくて
うずうずするがそれはご法度。

シリーズを書くと俳優諸氏とお付き合いが生じ楽しい。
喧嘩も仲違いもするけれど、しかしもうこの歳では出来ないな。
それでも楽しかった。

今はお母さんの介護に追われてテレビには余り顔を出さなくなった人もいれば
残念ながら自ら命を断った人もいる。いい子だったのに。
長く仕事をすればするほど、見送る俳優さんたちも多くなる。
もうたぶん10本の指ではきかない。
しかしスターさんの場合は画面でお目にかかることも多い。
不思議な感覚である。感覚の中では亡くなってはいない。