記憶の彼方へ

カラーとモノクロの写真と一緒に 日頃のなにげないエピソードやホッとするコトバを♪

三途の川

2009年03月14日 00時06分45秒 | Weblog
確か5年前の冬。珍しく高熱が長引き、仕事を休めなかった私は近くの内科で処方された解熱剤を一日三回飲む生活を送っていた。日中は薬が効いていたが、夜になると体がやかんみたいに熱くなった。パジャマも汗でグッショリ。汗をかいたまま寝るのも気持ちが悪いのでお風呂に入るともうへとへと。体力消耗でぐったり。
そんなある夜、夢を見た。
中学校の体育館に私はいた。なつかしいと感じていた。不思議なことにこれは夢であること理解していた。
体育館の中から校庭を見渡すと、あの時好きだったNの姿が見えた。嬉しくなって思わずNの名前を呼んだ。そして体育館シューズを脱ぎ捨て、外履きに履き変えようとするのだが、うまくはけない。早くNのそばに行きたいのに足が絡まって動かない。焦ってNを見ると、声は聞こえないが、手を広げ、寂しそうに制するジェスチャーをしている。聞こえないから「聞こえないよ!」と叫び、Nの口元をみると「こっちに来ちゃダメだ」と言っている。なんで来るなと言うのかが理解出来なかった。すごく哀しくなって泣きそうになっていたら、ガラリと場面が変わった。
今度は高校の自転車置き場にいる。友人とE先生の姿が見えた。駆け寄って話しかけたと同時位に目が覚めた。
汗びっしょりだった。シーツも広範囲に濡れている。
熱は下がっていた。いつもとは違う感覚だった。自分でも明日は復活出来る自信があった。

卒業後、Nとは別々の高校になってしまった。たまに駅で会うとそこで立ち止まり長話をするだけで楽しかった。しかしお互いの居場所をみつけると、それぞれの道を歩き始めた。

高校卒業後、浪人二年目の春、鼻の手術の為、地元赤十字病院に入院していた。
入院当日、自宅に電話が入りNが交通事故で亡くなった事を見舞いに来た母親から知らされた。

しばらく私の記憶から消えていたN。その夜は眠る事が出来なかった。

あれは多分三途の川だったのだ。

亡くなってからは一切夢に出てこなかったNが、熱でうなされていた私の前に現れたのだ。


fine ART photographer Masumi
コメント
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