本朝徒然噺

着物・古典芸能・京都・東京下町・タイガース好きの雑話 ※当ブログに掲載の記事や写真の無断転載はご遠慮ください。

というわけで……

2004年12月31日 | つれづれ
家に戻ってきた。

せっかく外に出たので、デパートで買い物をし、お茶を飲んでから帰ったのだが、数時間で雪が結構積もっていたので驚いた。

都心でも、みるみるうちに道路がシャーベット状になっていた。
自宅の最寄り駅付近では、ほとんどの車がタイヤチェーンをつけていたほどだ。
明日の朝、外は一体どうなってるんだろう……。

これは、京都・伊勢バスツアー、キャンセルしておいてよかったかも……。
お金が戻ってきたので得した気分だし(払ったぶんが戻ってきただけなので別に得をしたわけではないのだけど 笑)。
ツアーの目玉の一つである京都に行かれないんじゃ、あまり意味ないもんなあ。

家に帰ってニュースを見ていたら、東名高速も通行止めになっているとか。
キャンセルせずにそのまま出発した人たちは大丈夫だろうか。
このぶんだと、ひょっとして、ツアー自体が中止になったのでは……!?

今日は紅白歌合戦でも見ながら、お正月の着物の半衿つけでもしようかな。



がーん……

2004年12月31日 | つれづれ
無事バスに乗り込んだのもつかのま、添乗員さんから衝撃の言葉が。
雪のため名神高速が通行止めになっていて、京都にたどりつけるか微妙とのこと。
最悪の場合、伊勢だけ行くことになるが、その場合も予定の日に戻って来られる保証はないらしい。
出発前なら全額返金するので、参加をとりやめる人は言ってください、とのこと。
2日は朝から予定が入っているため、戻って来られないと困るので参加をとりやめた。残念!
昔、車で山梨へ旅行した帰りに大雪で中央道が全線通行止めになり、大渋滞の一般道を夜通し走ったという悪夢を経験している私としては、リスクを覚悟で参加することはできない……。



うっかり……

2004年12月31日 | つれづれ
東京駅に着いて、10分カットで毛先を切りそろえてもらって(これも髪結いに備えて)、東京駅の中にあるレストランミクニでお昼ごはんを食べて、デザートも食べて(笑)、まだ時間があるなあと思っていたら、ふと気づいた。
出発場所は東京駅じゃない、浜松町だ!
あぶないあぶない。
幸い、早くに気が付いたし、東京から浜松町はたった3駅で5分くらいなので、余裕で間に合ったが、勘違いしたままだと大変だった。ほっ。
早くも正月ボケかしら……。

よいお年を

2004年12月31日 | つれづれ
大そうじも昨日で何とか完了。
今日は、お正月の髪結いに備えて朝から床屋さんで襟足を剃ってもらった。
それから、東京駅へ。
京都・八坂神社のおけら参りと伊勢神宮初詣のバスツアーに参加するのだ。
こんなふうに、休みになるとあちこち動き回ってるから、体が休まらないんだろうなあ……。
でも、「甘いものは別腹」と同じで「休みの日は別体力」なのかも。(笑)
東京は昼ごろから雪になるらしい。高速道路の通行に影響がなければいいが。

みなさまどうぞよいお年を。


仕事納め

2004年12月29日 | つれづれ
私の勤めている会社は、今日が仕事納め。
東京では初雪が降り、「雪の仕事納め」となった。

さすがに今日は、定時そこそこで仕事を終え、帰宅することができた。
明日は、家の大そうじの仕上げをしなければ……。

それにしても、29日の仕事納めは、ちょっときびしいなあ。
大そうじもろくにする暇がないじゃないか。
せめてもう一日早くしてくれないかしら。
「苦がつく」29日に仕事納めなんて、ゲンが悪い(縁起が悪い)。
ここは一つ、末広がりの八がつく28日でめでたく仕事納めにしてもらいたいところ。
このご時世だからこそ、縁起をかつぐくらいのゆとりが必要だと思うが。

すでに休みに入っている会社も多いらしく、昨日あたりから電車が空いている。
普段の満員電車と同じ時間帯とは、とても思えないくらいだ。

そのぶん、普段は乗らない人が電車に乗っているらしかった。
昨日の帰りも、地下鉄が空いていたので座っていたら、疲れが出たのかウトウト。
すると、途中の駅から、休みで出かけた帰り道と思われる親子3人連れが乗ってきたようだった。
子どもは座っていたのだが、両親は立っていた。

すると、こともあろうに、母親のほうが、「もう~、座れると思ったのにぃ~~」と、大きな声で子どものようにだだをこねていた。
さらに、父親のほうも、それを制するどころか、同調するようなことを言っている。
あげくのはてに、寝ている人を見ては、酔っ払って寝ているかのように言い出す始末。

何を言ってやんでぇ、べらぼうめ、こちとらみんな仕事して疲れて帰るところなんだよ、そのへんの酔っぱらいと一緒にしてもらっちゃ困るってもんよ、第一、ガキでもねぇくせに座りたいだの何だのほざいてんじゃねぇ、ちったぁ辛抱しろい!

……と、言いたいのはヤマヤマだったが、そんな女の人を相手にまともに喧嘩してもしかたがないし、周りのサラリーマンからの冷たい視線に本人もそのうち静かになってしまったので、黙っていた。
だだをこねてるのが男性のほうだったら、まちがいなく喧嘩してただろう。

物事は重なるもので、今朝の車内でもそれに似たようなことが。
家族そろって帰省するところだったようで、おそらく東京駅まで行くらしかったのだが、これもやはり母親が、座れないことを不満に思っているらしく、座っている人たちに対するひがみめいたことを聞こえよがしで言い出す始末。
しかも、座ってること自体を言うのではなくて、座って寝ている人の容姿のことまで持ち出すから、見苦しいことこのうえない。
その家族は大阪へ帰省するところらしく、その母親は微妙な大阪弁をしゃべっていたが(標準語と混じってヘンな大阪弁になっていたので、生粋の大阪人かどうかは不明)、そういえば大阪に行くとたまにこういう人を見かけるなあ、と、ふと思った。
大阪の名誉のためにことわっておくが、いわゆる「大阪のオバちゃん」というのとは違う。いわゆる「大阪のオバちゃん」は、ずけずけしているが不快感はない。そういうのとはちょっと違って、何と言うか……まあ、こういうのは地域性ではなく本人の性格の問題なのかもしれんが。

でも、「県民性」というのは、多かれ少なかれあるのかも。
関東でも、東京、埼玉、神奈川と、それぞれ微妙に雰囲気が違うのと同じで、関西でも、大阪、京都、神戸では雰囲気が異なる。

面白いたとえ話を聞いたことがある。

たとえば、着ている物を見たとき。
東京の人(この場合は、いわゆる「江戸っ子」を指す)だったら、いいと思ったときだけ「あら、いいの着てるわねえ」と言う。
京都の人は、「ええのん着てはる」と言いながら、上から下まで見る(これはイカニモという感じだが、生粋の京都人の市田ひろみさんも言ってたくらいなので、信ぴょう性は高い 笑)。
大阪の人は……ご想像におまかせします(笑)。


何はともあれ、今年一年、大きな病気やケガをせず元気に働けたのが何よりだった。



羽織の衿(えり)

2004年12月28日 | 着物
今朝、地下鉄の中で、ピンクの地色に黒のバラ模様の羽織を着た女性を見かけた。

40代くらいの女性だと思われるが、落ち着いた色合いのピンクの羽織が、よく似合っていた。
素敵な色だなあと思い、失礼かとは思ったがついつい見ていると、その女性は、しきりに羽織の衿もとを気にしている様子。

「あれ?」と思ってよく見てみると、羽織の後ろ衿が折り返されていない。そのため、当然のことながら前の衿もともきれいに折り返されない状態になってしまっていた。
着る時にうまく折り返されてなかったのかなあ、と思っていたのだが、前の部分の衿を折り返さずにしきりに広げようとしていたところを見ると、その女性は、羽織の衿を折り返すことを知らなかったもよう。

羽織の衿は、ちょうどジャケットの衿と同じように、折り返す。
後ろ衿の部分を折り返せば、前の衿もそのまま自然に折り返される。

どうしようかなあ、教えてあげようかなあ、でもこういうのって、教えたら教えたで、小姑みたいに思われちゃう場合があるしなあ……。
でも、どう考えてもこれからどこかへ出かけるのだろうし、もしもそこが着物のベテランが集まる場だったら、この人が恥かいちゃうしなあ……。
うーん。やはり「聞くは一時の恥、聞かぬはマツタケの……じゃなかった、末代の恥」って言うからなあ。よし。ここは一つ、さりげなく教えよう。

一大決心をし、その人が再び衿を気にしている瞬間を見計らって、後ろから遠慮がちに声をかけた。
「失礼します……衿もと、手で失礼ですが……」と言いつつ、コートやジャケットの衿を直してあげるのと同じようにして後ろ衿を折り返し、「これで、前の部分がきれいに折り返せると思いますよ。素敵な羽織ですねえ」とだけ言って、そそくさと元の位置に戻った。
その女性は、羽織の衿の始末が違っていたことがわかったらしく、ナットクしたような表情で御礼を言ってくれた。
はじめは気恥ずかしそうにしていたのでこちらもちょっと気が引けたのだが、降りる時にもう一度御礼を言ってくれたので、教えてあげてよかった、と思った。

私も、着物を着ている時、洗面所などでオバサマから声をかけられることがある。
たいがいは、お太鼓のタレがはね上がってしまっている場合。
お手洗いに行って、はね上がってしまったのをうっかり直さないままにしている場合だが、こういうのは、気づかずにそのまま歩くと恥ずかしいので、言ってくれるととてもありがたい。
さらには、はね上がったタレを直すついでに、「ちょっとタレが大きいかしら。直してあげるわね」と言ってくれる人もある。
私は、こういうのもありがたい。なぜなら、着付けの時の癖というのは、自分ではなかなかわかりにくいからだ。特に帯結びの場合、自分では真後ろから見ることができないので、他の人に見てもらって初めて気づくこともある。

とある着物の本を読んでいたら、電車の中で着物のことを教えられてムカついたという着物初心者の話が書かれていた。
それに対して筆者は、そんな「教えたがりおばさん」には、負けずにこうやって反論してやんなさい、というようなことを書いていたが、私はそうは思わない。
着物に限らず何事も、初心者のうちは、いや、ベテランになってからだって、「謙虚さ」がなければ上達しないからだ。
心の間口を広くしておくことが、うまくいく秘訣なのではないかと思う。

ちなみに、その本に書かれていた着物初心者は、慣れてきたころになると今度は自分が「こないだ、どこそこで見た女の子の着物の着方がなってなかった」と言っていたらしい(笑)。
誰しもそんなものなのかも。



ネットオークション戦利品

2004年12月26日 | 着物
インターネットのオークションで落札した商品が届いた。

五つ紋入りアンティーク色留袖


アンティークの色留袖で、地色はいわゆる「江戸紫」と呼ばれる濃い紫色。
色留袖だが袖丈が64センチと長めなので、小振袖代わりにも着られそうでうれしい。
色留袖は、母から譲り受けたものが1着あるのだが、それはさすがに普段から着て歩くわけにはいかないので、ちょっとした時に着られそうな素敵なアンティークものがあればいいなあ、と前々から思っていたのだ。

胴裏(裏地)は「紅絹(あかもみ)」と呼ばれる赤の正絹なので、たもとの部分から赤い色が見える。白の胴裏が主流になっている現代、これはなかなか貴重。

下がり藤の五つ紋が入っており、紋の大きさは、現代の女性用の着物の家紋に比べると少し大きめになっている。

松に鶴などの裾模様


裾の模様は、松に鶴、舟、さんごなどの吉祥文様。松の緑色が、紫に映えている。
前身頃だけに柄が入っているので、後ろから見ると色無地の小振袖のように見える。
このように前身頃だけに模様が入っている柄ゆきのことを「江戸褄(えどづま)」と言い、アンティークにはよく見られるが、現代ではあまり見られない。

裾の部分には綿が入っており、少しふっくらとしている。
これも、現代の着物ではなかなかない。

アンティークの着物を落札したのは初めてだが、入札の決め手となったのは、「家紋」。
アンティークの色留袖はよく出品されているが、自分の家の紋と同じものはなかなか見つからない。それが今回、父方の家紋と同じだったので、この時とばかりに落札した。
下がり藤の紋には周りに丸があるものとないものとがあり、我が家の場合は丸のないほう。
「家紋」は「家の顔」というくらいで、丸の有無だけでもまったくちがったものになるので、安易に妥協できないところ。

ちなみに、西日本では女性の場合、「女紋」と言って母方の実家の家紋も用いることが多い。
私が母からもらった色無地にも「女紋」が入っている。

今回落札した商品の状態は、思っていたよりもよかった。アンティークなので、多少のしみやほつれなどは当然あるが、目立つようなひどいしみや色あせはない。ほつれも直せば充分着られそうだ。
さすがに正式な場には着て行かないが、おしゃれ着として、パーティーなどちょっとした集まりくらいなら着て行けるかも。
おめでたい柄なので、お正月にちょっと出かける時にもいいかもしれない。
これに合った袖丈の長襦袢を誂えて、再来年のお正月にはぜひ着てみたい。

落札価格も、アンティーク着物の販売会などで売られている物に比べるとずっと安かったので、良い買い物だったと思う。
今回の落札は、私としてはかなりうまくいったほうかも。



年の瀬の午後、向島でお座敷を楽しむ

2004年12月25日 | 伝統文化あれこれ
向島の料亭へ行った。

と言っても、個人で行ったわけではなく、「はとバス」主催のツアーに参加したのである。
向島の老舗料亭「桜茶ヤ」で昼食をいただき、向島芸者衆の踊りを見て、お座敷遊びを楽しむというツアー。

個人で行く場合、一見さんでも入ることはできるが、料理代、飲み物代、芸者さんの花代、芸者さんやお店への祝儀など諸々の料金がかかる。
しかし、団体でのバスツアーなら、個人で行くよりもずっと安い料金で楽しめる。
もちろん、個人で行くほうがじっくりと楽しめるのだろうが、入門編としてはこういった団体ツアーがちょうどよいだろう。

よく考えてきたら、はとバスに乗るのは、東京に出てきて以来初めての経験。
「はとバス」と言うと、ひと昔前までは「地方から旅行に来た人が東京観光のために使うもの」というイメージが強かったが、今は、東京在住の人や東京近郊在住の人が利用することも多いらしい。
今回のツアーも、東京近郊から参加している人がほとんどだったようだ。
「はとバス」であらためて東京の街を走ってみると、何だか新鮮な感じがした。

お昼過ぎに東京駅前を出発し、一路、向島へ。
向島で最も大きな料亭「桜茶ヤ」へ到着。
到着すると、玄関先で芸者さんが出迎えてくれていた。

舞台のある大広間へ上がり、飲み物を注文し、食事をいただいていると、芸者さんや半玉さん(芸者の見習いさんで、京都で言う「舞妓さん」にあたる。「玉代(ぎょくだい)」が芸者さんの半分であることからこのように呼ぶ)がお酌をしに回って来てくれた。
芸者さんが3人、半玉さんが1人、地方(じかた)さん(唄と三味線を担当する人)が1人という構成。

食事が進んだころ、舞台で芸者さんたちが鳴り物(太鼓、鼓)や踊りを披露。
それが終わると、「お座敷遊び体験」ということで、「トラトラ」という遊びを伝授してくれた。
これは、お座敷遊びのなかでも最も有名な遊びの一つで、簡単に言うと、「踊りとジェスチャーで楽しむジャンケン」のようなものである。

まず、真ん中に屏風を立てる。
その屏風を隔てて、2人が立つ。
2人はそれぞれ、唄と三味線にあわせて踊る。
「千里走るような薮の中をみなさんのぞいてごろうじませ 金のはちまきたすきで 和藤内がえんやらやっと とらえしけだものは とらと~らと~らとら~」
最後の「とらと~らと~らとら~」のところで、次の3つのうちどれかのジェスチャーをし、屏風の前へ出る。
・虎
・槍を持つ和藤内(向島では「加藤清正」にしている)
・杖をつくおばあさん

和藤内は虎に勝つが、おばあさん(和藤内のお母さん)には頭が上がらないので負けてしまう。おばあさんは、和藤内には勝つが、虎には食べられてしまうので負けてしまう。虎は、おばあさんには勝つが、和藤内には退治されてしまうので負けてしまう。
つまり、ジャンケンと同じである。
ただし普通のジャンケンと違って、唄と踊りが入るし、当事者同士は間に屏風を隔てているのでお互いの「手」がわからないが周囲の人にはそれがわかるため、みんなで楽しめる。

ひとしきり「トラトラ」を楽しんだ後、三本締めでおひらき。
全部で一時間半くらいだったが、楽しいひとときだった。

桜茶ヤを出た後、バスは隅田川を渡って浅草へ。
一行は雷門・浅草寺付近を自由散策して東京駅へ戻る、というスケジュールだったのだが、私と友人は、そのまま浅草で下車させてもらい、「勝手知ったる」浅草でそのまま買い物をしたりお茶を飲んだりした。

何かと慌ただしい年の瀬に、いろいろなことを忘れてほっと一息つける一日だった。

明日は大そうじをがんばろう……。

ちなみに今日は、縞の小紋を着て出かけた。
ただし、縞の着物は芸者さんも着ておられる可能性があるので、帯をシロウトっぽい柄のものに……。

うさぎの柄がアップリケ風に入った、ちりめんのなごや帯 前の部分にもアップリケ風のうさぎ



クリスマスもいいですが……

2004年12月24日 | 伝統文化あれこれ
まったく、いつから日本では、「クリスマスイブには予定を入れるのが当たり前」のようになってしまったのだろう。
テレビでは朝からアナウンサーが「今日はクリスマスイブ。みなさんはどのように過ごしますか?」と、どのチャンネルでも判で押したように言っている。

キリスト教信者の人たちがミサに行くというならともかく、キリスト教と何ら関係ない人たちが「恋人と食事」だの「恋人がいないから友だちどうしで飲む」だの「合コンする」だの、そんなことは別にクリスマスでなくてもできるのでは?

そりゃあ、私だって子どものころは家でささやかなクリスマスパーティーをするのが楽しみだった時期もあったが、さすがにそんなことはなくなって久しい。
そう言えば小学生のころ、何を思ったか、覚えたての落語「寿限無(じゅげむ)」をクリスマスパーティーの余興でやりたくて、家族や親戚の前で披露したことがある。
クリスマスに「寿限無」……。
今思えば、変わった子どもだったのかも、というか、現在の私の片鱗が見えていたのかも(笑)。
そもそも何で「寿限無」なんて覚えたのかという、至極ごもっともな疑問を持つ方もいらっしゃるだろうが、ちょうどそのころ学校の図書館で借りた子ども向けの落語の本を読んで、「面白いなあ」と思い、がんばって覚えたのだ。図書館で落語の本を借りたこと自体、変わっていたのかもしれないが……。

話がそれたが、だいたい、「クリスマスイブ」が市民権を得てからというもの、街なかで正月飾りが飾られるのがすっかり遅くなってしまっているように感じられる。
そりゃそうだ、「クリスマスツリー」が飾られている横で「繭玉」とか「餅花」とか「門松」を飾っているのは違和感があるに決まっている。
必然的に、正月飾りは、クリスマスが終わって26日あたりから一気呵成(いっきかせい)に飾り始めることになる。

しかしですね。
そうすると、お正月を迎えるまでに、わずか5~6日間しかお正月飾りを飾らないことになるのですよ。
年が明けてからは、7日を過ぎれば外されてしまい、年末年始あわせても2週間くらいしか飾らないことになるのですよ。
クリスマスの装飾は、ややもすると11月に入ったとたんに始めるというのに、お正月の支度にこんなわずかな期間しかあてられなくて、いいのでしょうか!?

ひと昔前までは、この時期はもう門松を立てていた家も多かったはず。
商店街では、繭玉や餅花などを飾っていた(ただし、餅花や繭玉については、地方によって、正月前から飾るところもあれば、1月15日の小正月から飾るところもある)。
今でも、昔ながらの商家ではもうこの時期に門松を立てている。
先週、浅草に行ったときも、仲見世や新仲見世では繭玉(このご時世、もちろん本物の繭ではなく作り物だが)を飾っていた。

京都の商家や花街では、12月13日が「事始め」つまりお正月の準備を始める日で、それから餅花などのお正月飾りが飾られる。そして松の内が過ぎ、しめ飾りや門松がとれた後も、小正月あたりまでお正月の雰囲気は続く。
別に京都に限らず、ひと昔前まではどこもこんな感じだった。
12月も半ばに入ったら少しずつお正月の支度を始めながらお正月が来るのを心待ちにし、お正月にはゆっくりとその雰囲気を味わう。
これこそが、「新年」という節目に対して敬虔な気持ちで臨む、日本人の伝統的な姿だったのではないのか。

日々の仕事に追われ、クリスマスが過ぎて慌てて正月飾りを出し、3が日が過ぎたらすぐ仕事始めでまた慌ただしい日々に戻る……、日本の年末年始がそんなふうになり始めた時期と、日本人の心からゆとりがなくなり始めた時期とは、もしかしたら重なっているのかもしれない。

蛇足だが、鏡餅やしめ飾りを含めた「正月飾り」は、29日に飾るのは忌まれているらしい(地域によって異なるとは思うが)。9だから「苦がつく」とされるのだ。
また、「一夜飾り」と言って、31日に飾るのもよくないとされている。
お正月を迎える「心の準備」は、余裕を持って整えておくべきだ、そうしてこそゆったりした大きな気持ちを持てるのだという、昔の人の戒めなのかもしれない。



国立劇場の舞台に上がります

2004年12月22日 | 歌舞伎
以前の記事でも少しふれたが、国立劇場初春歌舞伎の初日に、「仕初式(しぞめしき)」が行われる。
「仕初式」とは、新年最初の芝居の前に行われる、言ってみればその年の「舞台びらき」のようなもの。
この伝統行事が、百数十年ぶりに復活されるというのだ。

これを観られるのは、初日の観劇チケットを持っている人のみなので、発売と同時にがんばってチケットをとった。
これでめでたく仕初式を観られる……と安心していたところ、たまたま「歌舞伎モバイル」という携帯電話サイトを見ていたら、ある告知が目にとびこんできた。

何と、この「仕初式」に参加できるチャンスがあるというのだ。
当日のチケットを持っている人で、あらかじめ往復ハガキで申し込んでおいた人は、仕初式に参加でき、舞台に上がれるのだという。
応募者多数の場合は抽選とのことだったので、無理かもしれないと思ったが、外れても仕初式を観ることはできるのだしまあいいか、と、ダメモトで申し込んでみたのだった。

すると驚いたことに、見事に当選してしまったのである(応募者が少なかっただけかも……)。

あの国立劇場の舞台に上がれて、しかも「仕初式」という貴重なイベントに参加できるとは、うれしいことこのうえない。
具体的にどんなことをするのかがまだわからないので、緊張するが……。

当日は和服で行くことが条件になっているので(まあ、これがなくてもどうせ和服で行くことになっていたのだが)、何を着ようか思案中である。

本当はこういう「式」の場合、私くらいの年齢の未婚女性は「色留袖」を着るのが正式なのだろうが、周りの人がどういう格の着物で来るかわからないし(たぶん色留袖の人はいなさそうな気が……)、第一、式が終わった後は普通に観劇をするので、ちょっと大げさかな、という気もする。あとは紋付の色無地か、せいぜい訪問着くらいまでだろうか。
訪問着は、まだ一度も袖を通していないものがあるので、こういうハレの席で着られるといいなあとは思うが、紋がついていないので、紋付に比べると少し格が下がってしまう。
紋付の色無地が無難なのかもしれないが、母から譲り受けたもので、しかも私自身も何度も袖を通しているので、「新しさ」「きれいさ」という点でいささか気になる。京洗い(「着物のクリーニング」みたいなもの)はしてはいるが。

通常、お正月に観劇する場合は、訪問着か付け下げがよいとされている(席にもよるが)。
今回は、舞台に上がって「式」に参加するので、付け下げはさすがに避けておいたほうがいいとは思うが、何を着ようか、はたまた何がいいのか、迷ってしまう。

でも、小紋の人も意外にいるのかも。

期日は迫っているが、よく考えてみよう……。
どなたかいいアドバイスがあったら教えてください。


<着物のことを知らずにこの記事を読んでくださった方のための解説>

着物の種類と格

1.振袖:未婚女性の第一礼装、黒留袖:既婚女性の第一礼装、色留袖:未婚・既婚女性の礼装

※「留袖」とは、裾にだけ模様が入った柄ゆきの着物のこと。地色が黒ならば「黒留袖」、地色が黒以外なら「色留袖」

2.色無地(紋の入ったもの):未婚・既婚女性の略礼装、訪問着:未婚・既婚女性の盛装

※「訪問着」とは、肩と裾に模様の入った柄ゆきで、絵羽(絵がひと続きになっている状態)模様の着物のこと。

3.付け下げ、色無地(紋の入っていないもの)

※「付け下げ」とは、肩と裾に模様が入っている着物だが、反物の状態から仕立てるので、訪問着のように「絵羽」になっていない。ちょっとあらたまった場所に着ていける。

4.小紋、色無地(紋の入っていないもの)

※「小紋」とは、全体に柄が入っている着物。反物の状態から仕立てるため、柄はひと続きにはならず途切れる。普段着・街着。

5.紬

※織りの着物(糸の段階で染めてから、着物に織り上げていったもの)。普段着・街着。

このほかウールや木綿など普段着用の着物がある。