本朝徒然噺

着物・古典芸能・京都・東京下町・タイガース好きの雑話 ※当ブログに掲載の記事や写真の無断転載はご遠慮ください。

クリスマスもいいですが……

2004年12月24日 | 伝統文化あれこれ
まったく、いつから日本では、「クリスマスイブには予定を入れるのが当たり前」のようになってしまったのだろう。
テレビでは朝からアナウンサーが「今日はクリスマスイブ。みなさんはどのように過ごしますか?」と、どのチャンネルでも判で押したように言っている。

キリスト教信者の人たちがミサに行くというならともかく、キリスト教と何ら関係ない人たちが「恋人と食事」だの「恋人がいないから友だちどうしで飲む」だの「合コンする」だの、そんなことは別にクリスマスでなくてもできるのでは?

そりゃあ、私だって子どものころは家でささやかなクリスマスパーティーをするのが楽しみだった時期もあったが、さすがにそんなことはなくなって久しい。
そう言えば小学生のころ、何を思ったか、覚えたての落語「寿限無(じゅげむ)」をクリスマスパーティーの余興でやりたくて、家族や親戚の前で披露したことがある。
クリスマスに「寿限無」……。
今思えば、変わった子どもだったのかも、というか、現在の私の片鱗が見えていたのかも(笑)。
そもそも何で「寿限無」なんて覚えたのかという、至極ごもっともな疑問を持つ方もいらっしゃるだろうが、ちょうどそのころ学校の図書館で借りた子ども向けの落語の本を読んで、「面白いなあ」と思い、がんばって覚えたのだ。図書館で落語の本を借りたこと自体、変わっていたのかもしれないが……。

話がそれたが、だいたい、「クリスマスイブ」が市民権を得てからというもの、街なかで正月飾りが飾られるのがすっかり遅くなってしまっているように感じられる。
そりゃそうだ、「クリスマスツリー」が飾られている横で「繭玉」とか「餅花」とか「門松」を飾っているのは違和感があるに決まっている。
必然的に、正月飾りは、クリスマスが終わって26日あたりから一気呵成(いっきかせい)に飾り始めることになる。

しかしですね。
そうすると、お正月を迎えるまでに、わずか5~6日間しかお正月飾りを飾らないことになるのですよ。
年が明けてからは、7日を過ぎれば外されてしまい、年末年始あわせても2週間くらいしか飾らないことになるのですよ。
クリスマスの装飾は、ややもすると11月に入ったとたんに始めるというのに、お正月の支度にこんなわずかな期間しかあてられなくて、いいのでしょうか!?

ひと昔前までは、この時期はもう門松を立てていた家も多かったはず。
商店街では、繭玉や餅花などを飾っていた(ただし、餅花や繭玉については、地方によって、正月前から飾るところもあれば、1月15日の小正月から飾るところもある)。
今でも、昔ながらの商家ではもうこの時期に門松を立てている。
先週、浅草に行ったときも、仲見世や新仲見世では繭玉(このご時世、もちろん本物の繭ではなく作り物だが)を飾っていた。

京都の商家や花街では、12月13日が「事始め」つまりお正月の準備を始める日で、それから餅花などのお正月飾りが飾られる。そして松の内が過ぎ、しめ飾りや門松がとれた後も、小正月あたりまでお正月の雰囲気は続く。
別に京都に限らず、ひと昔前まではどこもこんな感じだった。
12月も半ばに入ったら少しずつお正月の支度を始めながらお正月が来るのを心待ちにし、お正月にはゆっくりとその雰囲気を味わう。
これこそが、「新年」という節目に対して敬虔な気持ちで臨む、日本人の伝統的な姿だったのではないのか。

日々の仕事に追われ、クリスマスが過ぎて慌てて正月飾りを出し、3が日が過ぎたらすぐ仕事始めでまた慌ただしい日々に戻る……、日本の年末年始がそんなふうになり始めた時期と、日本人の心からゆとりがなくなり始めた時期とは、もしかしたら重なっているのかもしれない。

蛇足だが、鏡餅やしめ飾りを含めた「正月飾り」は、29日に飾るのは忌まれているらしい(地域によって異なるとは思うが)。9だから「苦がつく」とされるのだ。
また、「一夜飾り」と言って、31日に飾るのもよくないとされている。
お正月を迎える「心の準備」は、余裕を持って整えておくべきだ、そうしてこそゆったりした大きな気持ちを持てるのだという、昔の人の戒めなのかもしれない。



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2 コメント

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メインはお正月 (ruka)
2004-12-31 21:00:31
全く同感です、クリスマスによって、お正月のありがたみが薄れているようですね。



我が家は、私がお正月重視ですので、着物や正月飾りに力を入れ、クリスマスはケーキとプレゼントのみです。



クリスマスも楽しいイベントですが、和を楽しむお正月、特に大事にしたいです。
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ありがとうございます (maikoplasma)
2005-01-01 12:33:09
>rukaさま



明けましておめでとうございます。

(お返事が遅くなり年を越してしまって申し訳ありません……)



コメントありがとうございます!

ご賛同くださる方がいて、ほんとにうれしいです(うるうる)。



私の勤務する会社の入ったビルでは、クリスマスが終わってからいきなり門松だけどどーんと立っていて、何だか「とってつけた」みたいでした……。

でも、それでも、お正月飾りが立つと「いよいよお正月だなあ」と心が躍るので、不思議です。



ブログで拝見しましたが、rukaさんは、東京のご実家に帰省されて、みなさまで楽しくお正月をお迎えのこととおよろこびいたします。

(ふだんなかなか会えない方たちに会えたり、旧知の友人から年賀状で近況報告が来たりするのも、お正月ならではの楽しみですよね~)

みなさまにとってすばらしい年となりますよう、お祈りしております。

ご実家でのお正月、ゆっくり楽しまれてくださいね。



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