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本朝徒然噺

着物・古典芸能・京都・東京下町・タイガース好きの雑話 ※当ブログに掲載の記事や写真の無断転載はご遠慮ください。

九代林家正蔵襲名披露興行

2005年03月21日 | 落語
3月21日、「林家こぶ平改メ九代林家正蔵襲名披露興行」の初日に、鈴本演芸場へ。

前日の「中村勘三郎襲名披露興行チケット日付かんちがい事件」の教訓から(?)、今度はチケットの日にちを間違えず、無事に出かけることができた(笑)。
といっても、寄席の場合は、毎月1日~10日(上席:かみせき)、11日~20日(中席:なかせき)、21日~30日(下席:しもせき)の10日間ずつの興行と決まっているので、「3月下席の初日」とおぼえておけば日付を間違いようがないのだけれど……。

こちらの襲名披露興行も、あっというまにチケットが売り切れたようだ。当日券は立ち見のみらしい。
初日は、後ろにマスコミが入るため、立ち見も用意されていなかったようだ。
テレビ局や新聞社など、たくさんの報道陣がつめかけていた。

鈴本演芸場へ到着すると、「林家正蔵賛江」と書かれたのぼりが立っていたり(冒頭写真)、お祝いの酒樽が積まれていたりと、襲名披露興行の雰囲気が漂っていた。
入口横の番組案内板には、「正蔵」と書かれた真新しい「まねき」がかけられていた。

新正蔵の「まねき」


寄席では、襲名披露や真打昇進披露の興行のとき、各方面から贈られたお祝いの品を高座の両端に並べる。
新・正蔵師匠にも、歌舞伎俳優や有名タレントから様々な品が贈られたようで、華やかな高座になっていた。
また、贔屓(ひいき)などから贈られる後ろ幕もたくさんあった。後ろ幕は重ねてかけておき、頃合いのよいところで、前座さんが上の幕を手早く外していくという仕組み。
松嶋屋さん(片岡仁左衛門丈・片岡孝太郎さん)から贈られた後ろ幕もあり、正蔵師匠の交友範囲の広さをうかがわせた。

仲入(なかいり。寄席では休憩時間のこと)の後、いよいよ襲名披露の口上。
幕があくと、黒紋付に袴で正装した噺家さんが、深々と頭を下げて座っている。
真ん中に、九代正蔵師匠。

落語の世界の場合、歌舞伎とはちがって、本人は口上を述べない。ほかの師匠が口上を述べる間、ずっと手をついて頭を下げているのだ。
口上は、義兄である春風亭小朝師匠、先代の正蔵師匠(林家彦六師匠)の弟子である林家木久蔵師匠、橘家圓蔵師匠、落語協会会長の三遊亭圓歌師匠がつとめた。
どの師匠の口上もとてもすばらしかったが、なかでも特に印象に残ったのは、木久蔵師匠の口上である。
木久蔵師匠は、新・正蔵師匠のお父さんである林家三平師匠にいただいた袴の話を、なつかしそうに語っていた。

圓歌師匠の口上が終わったところで、客席へ手ぬぐいがまかれた。
寄席では、節分の日に客席へ豆や手ぬぐいをまくのだが、襲名披露興行でまくのはめずらしいかも。
まるで豆まきのときのように観客が殺到していた。
私は、たまたま近くに落ちてきた手ぬぐいをゲット。ラッキーだった。
手ぬぐいまきが終わったあと、恒例の三本締め。

口上の後、紙切りの師匠の高座があって、それが終わるといよいよ林家こぶ平改メ林家正蔵師匠の登場。

ネタは、人情噺の「子は鎹(かすがい)」であった。
「子は鎹(かすがい)」のストーリーについては、このブログの2004年11月1日の記事でも紹介しているので、そちらをご参照ください。

以前の記事でも少し述べたとおり、新・正蔵師匠は、「こぶ平」時代から古典落語の下地はできていた。
今回の高座も、噺の下地はしっかりとできていたと思うが、まだまだ改善の余地はあるかなという感じ。
人情噺の場合、どうしても情に訴えるような描写をしがちなのだが、それをやりすぎると、却って噺の本質が伝わりにくくなってしまう場合がある。
「言い過ぎる」と却って核心からはずれてしまうのだ。
今回の正蔵師匠の高座も、残念ながらそう感じられるところが少々あった。
逆に、「ここはこの噺の人物の心情を押さえるのに肝心なところ」という場面では、描写が足りなかったように思われる。

個人的には、当代の噺家さんのなかでは、「子は鎹」をやらせたら三遊亭圓彌(さんゆうていえんや)師匠の右に出る人はいないと思う。
以前にも書いたとおり、三遊亭圓彌師匠は故・三遊亭圓生師匠の弟子である。
「子は鎹」は圓生師匠の十八番だったが、その圓生師匠の芸を忠実に受け継いでいながら、それでいて、圓生師匠を超えているのだ。
とにかく、噺に「過不足」がないのだ。
無駄を省いていながら、なおかつ、噺の本質と登場人物の心理を見事に突いているのだ。

新・正蔵師匠には、持ち前の熱心さを生かして、いろいろな師匠の噺を聴き、いろいろな師匠に稽古をつけていただいて、研究を重ねていってもらいたいな、と思う。

何はともあれ、九代林家正蔵師匠の誕生、本当におめでとうございます。


<本日のキモノ>

紺の江戸小紋に白の長羽織

紺の江戸小紋に、松の柄の織り名古屋帯、白地に四季の花模様の長羽織。
襲名披露興行なので、長羽織を脱げばきっちりとした格好になるようにした。
家を出てバス停に立っていると、年配のご婦人がこのコーディネートをほめてくださったので、とてもうれしかった。
羽織と着物の色合わせだけでなく、江戸小紋をとても喜んでくださったのが印象的だった。
東京では、江戸小紋を着ていると年配の女性が喜んでくださることが多い。若い人が地味めの色を着ていても割に好意的に受け止めてくれる。
白の長羽織は、仕立て上がりで結構安かったのだが、いろいろな着物に合わせやすい色柄の「万能羽織」なので重宝。道行コートを着ないこれからの時期に活躍しそうである。
そういえば、上野の山(上野公園)の入口にある「エドヒガンザクラ」が満開になっていた。「エドヒガンザクラ」は早咲きの品種なので、ソメイヨシノよりも一足先に咲く。
これからいよいよ春本番。着物を着てお花見に出かけるのも楽しみである。



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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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うれしいですね (ruka)
2005-04-01 12:36:56
「あら、着物?」「どうして着物?」という反応が多い中、コーディネートや柄をほめれもらえるとうれしいですね。

私はセンスが悪いのですが、一度だけ(爆)ほめられたことがあります。これからは取り合わせを勉強せねば。
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ありがとうございます! (maikoplasma)
2005-04-06 13:14:36
rukaさま、コメントありがとうございます!

(お返事たいへん遅くなり申し訳ございません……)



若いかたももちろんですが、ご年配の方にほめていただけると、特にうれしいですね~。

それがきっかけで見知らぬかたと話が弾んだりするのも、うれしいです。洋服だとなかなかないことですよね(私の洋服のセンスがダメダメなだけかもしれないのですが……)。



私の場合、あまり数を持っていないので(汗)、とにかく色柄あわせで何とかして着回そうと、必死で策を練っているという感じです……(^ ^;

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