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アニメ及び周辺文化に関する雑感

【Kanon】鯛焼きと羽根リュックをめぐる冒険 #11

2008年06月26日 | アニメ
北国の少女・月宮あゆは力を二つ持っている。
一つは「うぐぅ」。いかなる相手にでも不服を言える絶対拒絶の力。
一つは羽根リュック。鯛焼き屋のおじさんの追跡を逃れるための彼女の翼。
食い逃げ犯というコードネームを使い、月宮あゆは動き出す。
秋子さんの手料理を食べるために。そして、何か忘れてしまった大切な探し物を見付け出すために。
その行動がいかなる結果を生んでいくのか、今はまだ誰も知らない。

(元ネタは某日曜夕方の深夜アニメの1作目の方ですね)


 第11話「光と影の間奏曲~intermezzo~」

【ストーリー雑感】

 今回の冒頭ナレーションは田村ゆかり。ま、今回から舞シナリオに突入だからそう来るのが妥当だわな。
 真琴の部屋を片付けたみたいで、マンガの本とかも積んであるんだけど、しばらくこのままにしておいて良いかと聞いてる祐一。名雪は真琴がいつ戻ってきても良いようにとか言ってるけど、それは無いだろ。
 今日は部活を休むとか言ってる名雪に挨拶していく後輩たち。ま、陸上部の後輩ってことだろうね。
 久々に登校した祐一。制服姿の北川に今日も同じ服だなとか言ってるけど、それって空しくないか?
 久しぶりといえば栞もかなり久しぶりね。完全に真琴と接触の無いキャラだから真琴シナリオでは真っ先に出番が無くなってたからな。嫌がる栞に無理やり帰れとか言ってるけど、風邪じゃないんだから家に帰ったところで治るってもんでもないんだけどね。
 しかし、お腹が鳴ったから何か食わせてやると言われて、アイスを注文するか? ま、流動食しか咽喉を通らないのかもしれないけど。それにしても、雪の積もった真冬の寒空で、屋外でアイスを食うなんて常人には真似できないな。
 昼休み、いつもの階段のところで佐祐理さんたちと昼食を食おうとした祐一だけど、2人の姿は見えず。何か舞が職員室に呼び出されたという噂を聞いたら、職員室の前には佐祐理さんが。夜中に校舎を壊したとかで怒られてるみたいだけど……。そういえば廊下にみかんのダンボール箱を貼り付けてる窓があるけど、これが舞の仕業だってか。
 舞の人気を出させようと名雪に相談する祐一だけど、名雪が示したのは学園舞踏会の張り紙。ドレス着て舞踏会に出れば女の子っぽく見えるってか。忘れ物をしたと教室に戻る名雪に昇降口で待ってると言いながら、張り紙を勝手に剥がして舞のところに持っていく祐一。
「これを見ろ!」
「近過ぎて見えない……」
 おまいら漫才コンビかい。ドレスを持ってないという舞に、そこらから借りるあてを探してどうしても参加させようとしてる祐一と佐祐理さん。本人の意思はお構い無しですか、そうですか。
「うそつき」
 名雪と待ちぼうけは付き物だな。

 苺サンデーで機嫌を直した名雪にドレスのことを訊く祐一だけど、秋子さんも持ってないだろうって話。ま、庶民に舞踏会なんか縁が無いからねぇ。
 で、そこに現れたのがやはりひさびさのあゆ。いや、こいつにドレスのことなんか訊いても無駄だろ。
「そんなことではいつまでも、うぐぅ、のままだぞ」
 散々な言われようだな。で、祐一の態度に反発して意気投合してるあゆと名雪だけど……おいおい、おまえら面識無かったのか? 真琴でさえあゆとは会ってるのに……と思ったら、名雪はいつも朝寝坊で寝てたからかい。朝練で不在とかじゃないのね。
「私のことも、なゆちゃんで良いよ」
 ま、名雪の名前なら「名雪」って呼び捨てにされることの方が多いだろうから、自然とちゃん付けで呼ばれるような名前に憧れてたのか?
 で、あゆを連れて帰宅したら、ピロが帰ってきてたって話だけど、それを一目見て鯛焼き盗んだ猫だと言ってるあゆ。やっぱし、あのときの猫はピロだったのか。いや、あゆの記憶力が信用に足るものだという保証は無いけど。
 晩飯を食ってってもいいけど家の人に電話しろと秋子さんに言われて電話を掛けるあゆだけど、空しくコール音が続くだけ。家の人はみんな旅行に行ってるって思い出したと言ってるあゆだけど、何かとってつけたような弁解だな。結局、家の人が戻ってくるまで水瀬家にいて良いってことになってるけど……要するに真琴の身代わりだな。それにしても名雪の喜びようが尋常じゃない気がするけど。

 名雪たちと一緒に風呂に入らせてもらえないからって、夜の学校に赴く祐一。毎度のごとく魔物と戦ってる舞。真琴のことを訊かれたので語ってたみたいだけど……

 翌朝、朝食を作ったあゆだけど、悲惨な出来。おかげで遅刻しそうになった名雪と祐一だけど、走った結果は10分の余裕。それを奇跡と呼んだ祐一だけど、それを聞いて奇跡はそんな安っぽいものじゃないときつく語る香里。ま、栞の絡みなんだろうけど……
 授業中から熟睡して、昼休みになっても起きない名雪。よく教師に怒られたりしないものだね。そんなところにいきなし佐祐理さんが祐一を呼びに来てるけど……要するにドレスが借りられそうだという話。ま、祐一よりはまともな人脈を持ってるって話だね。
 その夜、舞に牛丼を差し入れる祐一。無愛想な舞に「はちみつくまさん」と「ぽんぽこたぬきさん」を押し付けてるけど、舞の反応を見るまもなく魔物が出現。牛丼が口に入ったまま斬りかかる舞だけど、逃がしたって感じね。

 とりあえず、真琴がいなくなっただけで以前の日常に帰ったって感じだけど……


【サブタイトル解題】

 間奏曲とは文字通りの意味で、多楽章構成の楽曲の楽章間とかオペラの幕間に演奏される楽曲です。あくまでメインの楽曲の間の小休止とか口直しとかいう位置付けの曲なので、軽く聞き流したり、興奮を鎮めたりするような小品が多いようです。また、次の楽章への前奏曲として用いられることもあるようです。
 「影」というのが舞(の魔物退治)を指してるのは間違いないと思いますが、それと対立させてる「光」とは何でしょうか。
 今回を真琴シナリオと舞シナリオの間の小休止だと考えるなら、舞と対峙する「光」というのは、あゆなり栞なりの陽性のヒロインのことかも知れません。また、今回を舞シナリオの序章だと考えるなら舞と対峙する「光」は佐祐理さんを示すものだと考えられるでしょう。


【使用BGM】

01.「約束」
  舞の声による夢の光景。
02.「Last Regrets」
  OP
03.「朝影」(アレンジ版)※
  真琴の部屋の片付け
04. 「笑顔の向こう側に」
  栞とアイスクリーム
05. 「雪の少女」
  3人の昼食会~放課後
06. 「パッヘルベルのカノン」(ピアノ演奏)
  百花屋の店内BGM
07. 「日溜まりの街」
  あゆと名雪
08.「朝影」(アレンジ版)※
  水瀬家に住み着くあゆ
09. 「Last regrets -acoustic version-」(末尾)
  夜の舞と真琴の話
10. 「木々の声と日々のざわめき」
  あゆの作った朝食
11. 「2 steps toward」
  3人の昼食会~夜の牛丼
12.「風の辿り着く場所」
  ED
13.「Last Regrets」(イントロ)
  予告

 「朝影」のアレンジ版はアレンジアルバム『recollections』に入ってるのと、イベント販売のマキシシングル盤に収録されてるのがあって微妙に違ってるんですが、Aパート冒頭ではマキシシングルに収録されているのが使われてます。
 一方、Bパートの方は少しボサノバ掛かった感じのアレンジですが、これはKeyのコンピレーションミニアルバム『Ma-Na』に収録されてるバージョン。
 久々に日常が戻ったという感じで、各キャラクターのテーマも復活しています。しかし、舞と佐祐理さんとの昼食会で「雪の少女」を掛けるのは思いっきり反則ですね。ま、そのまま放課後の名雪の出番まで続いてはいるんですが……


【水瀬家の居候問題】

 自分の家に電話したけど不在で、名雪が「留守なんじゃ…」とかつぶやいた途端、取ってつけたように家の者は旅行で不在だと言い出したあゆの言葉を疑いもせず、居候を認めてる秋子さん。いくら真琴がいなくなって寂しいからって安易な気がします。
 それにつけても疑問に思うのは、こいつらの食い扶持をどうやって工面してるかということですね。祐一の分は両親からちゃんと出てるだろうとは思いますが、真琴にしろ、あゆにしろ出してくれるような人はいません。
 母子家庭で名雪一人を食わせて行くだけでも大変だと思うのですが、秋子さんは経済的な負担は感じていないのでしょうか? ま、こいつらは学費が掛かるわけじゃないから、主に食費だけあればいいといえばそうですが。でも、真琴には小遣いまで渡してたようですが……

1.真琴もあゆも小食

 男である祐一や陸上部員の名雪に比べたら、真琴もあゆも小食だから経済的にあまり負担を感じないという説です。
 確かに真琴も(祐一と同い年だと自称する)あゆも小柄だし、真琴に関してはどうみても中学生以下としか考えられない言動をしています(それでよく働きに出させたものだけど)から、食事の量が少なくて済むという可能性は考えられます。しかし、ご飯の量は少なくても一品物のおかずは人数分必要だろうから、小食はあまり影響しないような気がします。
 それより、真琴は小遣いをもらって豚まんを食ってるくらいだから小食かどうかも疑わしいものですし、小遣いの分だけ余計に掛かってます。風呂を味噌汁にした真琴も、朝食を真っ黒にしたあゆも、その分だけ経済的損失も与えているわけですから、これが負担にならないと考えるのは嘘になるでしょう。

2.祐一のおこぼれ

 実は祐一の家庭は裕福だったので、相沢家から仕送られてくる祐一の生活費は実際に必要な額よりかなり多くなってるという説です。そこで、余った分で水瀬家の家計の赤字を補填したり、真琴やあゆを食わせてるのではないかという話ですね。
 祐一の偉そうな態度はそういう経済力を背景にしたものではないかと考えられないこともないですし、秋子さんが祐一の言うことに反対したりもせず何でも聞くのもそれが理由ではないかと……
 でも、秋子さんの場合は相手が祐一じゃなくても1秒で「了承」って気がしますから、とくに経済的な負い目を感じてるということも無さそうな気がします。

3.死んだ夫に多額の保険金を掛けていた

 作品中では夫と死別したとかは明確には語られてないので、単に離婚しただけだとか、最初から未婚のシングルマザーだったとかいう可能性もあるのですが、割と堅実な秋子さんの生活から考えると、夫とは死別という可能性が高そうです。
 単純に夫の遺産が多くて経済的に不自由してないとも考えられますが、名雪や秋子さんの年齢を考えると夫の死亡時年齢も高く、そんなに財産を貯められる状態だったとも思われません。もちろん、資産家の息子だったりしたら話は別ですが、現在の水瀬邸が一般的な民家であることを考えると、普通のサラリーマン家庭だったと考えた方が良いでしょう。(夫の死後、家屋の管理が面倒なので転居したという可能性もありますが)
 ここでキーになるのは秋子さんの職業です。出勤時間が遅いことや、夕方には帰宅してることを考えるとパートタイム勤務なのは間違いありませんが、出勤時にスーツ姿で出掛けてるところを考えたら、スーパーなどで働いてるわけでもないようです。真琴に保育所を紹介した時のような人脈の広さも職業で培ったものだと考えてみると、その有力な候補として考えられるのは保険外交員です。
 水瀬邸は都会のように地価は高くないとしても町の中の住宅地の一角にある家だから、住宅ローンを組んだとしても若いサラリーマンの給料で簡単に買えるような買物では無いでしょうから、夫の生存中から共働きで働いていたものと考えられます。保険外交員として手っ取り早く売上げ成績を増やそうと思えば、身内から契約を取っていくのが常套手段です。もちろん、身内の需要には限りがありますし、保険外交員としてのスキルが上がればそんなものに頼らなくても良くなります。しかし、秋子さんも手馴れないうちは身内に頼っていたのでしょう。
 そんなわけで、けっして保険金目当ての殺人を目論んでいたというわけでもないのですが、夫に掛けられた保険はいつしか高額のものになっていて、夫の死によってそれが転がり込んできたために、自分が働きながら名雪を育てても、居候の1人や2人が増えたぐらいで負担を覚えないだけの蓄えはあったということです。