まど

細く開いた窓を覗いてみると、そこにはNikonD70Sを前に困惑している女がひとり・・・

暮春嘆息

2007-03-29 21:59:52 | Weblog

以前聞いた、とある古本屋での常連客と店主の会話。
「あの、ここの棚にあった○○の本(理系の解説書の名)売れちゃったかな?」
「あー、あれね、売れちゃいました。」
「そうか・・・、理系の人の文章って、簡潔で文として面白いんですよね。」
「そうそう。」と二人の話はさらに迷宮へ・・・。
ふーん、なるほど・・。そんな味わい方もあるのか。・・・・・・。

立原道造という人がいました。
今日は彼が24歳で亡くなった日です。
少女だった頃より何故か惹かれ、常に最上のうつくしいものとして自分の中で向き合う存在。
多分どんなにおばあさんになっても、ずっとそれは変わりません。

彼は、 詩、建築、そして絵画にまで類まれなる才能を発揮して、たった24歳でこの世を去ってしまいました。
やはり一人の人間に抱えきれないほどの才能を持った人というのは夭折するしかないのか。
彼の詩を読むと、彼がなにか夢の中でみた美しい情景を追体験しているような心地がする。
かといって、ふわふわと朧げなのではなく、きちんとした実像を結ぶのは、理系の人らしく、理性的に詩を結晶させてあるからなのか。
彼と全く対岸の人間である私には、わかりようもないのですが。


私が立原道造に惹かれるのは彼との間に絶望的な距離感があるからなのでしょう。
あこがれとは、本来そういったものなのでしょう。
彼と自分との距離を味わいつつ、ため息をつく。

 

 

 I ひとり林に‥‥


 
だれも 見てゐないのに
 
咲いてゐる 花と花
 
だれも きいてゐないのに
 
啼いてゐる 鳥と鳥

 
通りおくれた雲が 梢の

空たかく ながされて行く
 
青い青いあそこには 風が
 
さやさや すぎるのだらう

 
草の葉には 草の葉のかげ
 
うごかないそれの ふかみには
 
てんたうむしが ねむつてゐる

            しじま
うたふやうな沈黙に ひたり
 
私の胸は 溢れる泉! かたく
 
脈打つひびきが時を すすめる


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2 コメント

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共感します (ラグタイム)
2007-04-01 13:41:36
 うしろの正面さんの感性にも。あなたを支える立原道造にも。 
 命日は旅行中、 昨日の風信子忌に参りました。 会食しながら懇親会も盛会でした。
講演は話の半分が聴き取れず残念です。 折々のうた を終えられて お疲れでしたか。お声がよく通らない。 部分的にしか理解できません、蛙の頭には。 鮮度が大事、想像をたくましくして記事を書きました。
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水の流れるような。 (うしろの正面)
2007-04-02 13:02:33
早速のレポート、拝見しました。
うーん、講演の内容、目新しい解釈が聞けるものと期待していましたが、ちょっと違っていましたね。
ですが、会の雰囲気、よく伝わりました。
静かに流れる水のように、絶え間ない、終わりのないファン達の思いがずっと、そっと流れているようです。
って、それはラグタイムさんの立原に対する気持ちそのものだから、ですね。
私もそうありたいです。

・・・・・・・もしかして、私達、ネクラなんでしょうか?(笑)
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