昨年末から今年の始めにかけての2ヶ月、最も寒い季節。
「原発」の是非を問う都民投票の条例を直接請求するための、署名運動。
こんなよく分からないことに理解を示し、個人情報が云々と言うご時世に
名前のみならず住所、生年月日、あげくに印(拇印も可)まで押してくださった都民有権者のみなさん。
地方自治法に則った、市民に保障された権利の行使、だから堂々と街頭で語りかけた。
無関心で通り過ぎるのもそれは無理も無い。何言っているのかまだ理解できないんだから。
ブログ、東京新聞、朝日新聞、ツイッター、口コミ、拡声器、旗、ピンクの上着、ちらし、ポスター、画板、署名用の冊子、ボールペン、朱肉、帽子、マフラー、手袋、手にカイロ、足にカイロ、鼻水を拭くティッシュ、大きな声、小さな声
2ヶ月の法定期間が終わりそうになった頃ようやく何をしているのかが知られてきたなあと感じていた。
特に、子育て世代の若い人たちが駆け寄ってくることが増えた。
個人情報保護法の名の下に多くの人が自分の情報をなるべく漏らさないように注意を払う時勢になって、
そんな時にこの署名は、そうでもなかった頃の何倍も勇気のある署名だったと思う。
346820筆。(のちに選挙人名簿と照合して確認できたのは323076筆)
6月20日。条例の原案は、反対票が2倍あるという否決。
20日の本会議の現場に私はいなかった。
翌日の朝日新聞と東京新聞に知事のあるまじき姿が掲載されたと聞いた。
前日、傍聴した人から、申し合わせたように立てた親指を下に向けてにやつく石原知事と土屋都議を見たと聞いた。
新聞写真を見た人は憤慨していた。
否決されたという事実よりも鮮烈な印象を残すその有様を、私は未だ目にしていない。
すこしずつ幻滅が積み上がって、主権者の行く手を阻む無用の壁の形になってきた。
ひょっとしたらと目の前の霧を払ったら、そんなものが見えてきた。いやな霧だった。
これほど住民をこけにするのなら、彼らもそれ相当の覚悟をしているのだろう。
われわれも、負けない覚悟を固めよう。
(お)