極楽とんぼは風まかせ

東は東、西は西。交わることなき二つとはいえ、
広い太平洋、東の風が吹き、西の風が吹き・・・

不惑どころではない男の更年期

2011年09月12日 | 今日の風の吹きまわし
月曜日。きのうは精神的にすごく疲れた。でも、やっぱりひとつの節目だったんだという気がする。
今日はちょっとどよ~んとした気分で眠い。それでも正午前に起きて、先に起きていたカレシを
探して裏のポーチに出たら、うわっ、風だ。それもそよ風なんてやさしいものじゃなくて、本気で
吹いている。日本の「秋のイメージ」で描写するなら、一面のすすきをなぎ倒すように野原を渡っ
て行く秋の風というところかな。(実際にすすき野原の風景を見たことはないんだけど。)季節が
変わる前兆を肌で感じるような風・・・。

今日はカレシの弟ジムの67歳の誕生日なので、ハッピーバースデイのメールを飛ばした。「いく
つなのか忘れちゃったって?自分がいくつなのかもう考えなくてもいいってことで、いいじゃない
の。自分の年を覚えていないのは、覚えているには若すぎるってことだから」と。もう20年くらい
前、ある日突然ジムは真っ赤なスポーツカーを買った。みんなが仰天しているうちに、不倫が始
まって、夫婦でカウンセリングを受けてみたりしたけど結局は離婚。でも、2人はそれぞれできた
新しいパートナー(とその子供の家族)/ガールフレンドもひっくるめて和気藹々の関係。まあ、
離婚したおかげで「家族」の人数が増えるなんて珍しいだろうと思うけど、そこはマリルーの人徳
と、未婚の母だった彼女の幼い息子を養子にしてかわいがって育て(実父がわかったときには
会いに行かせ)たジムの懐の深さによるところが大きい。

そういう人が何で浮気なんかと思うけど、やっぱり「中年の危機」で血迷ったとしかいいようがな
いだろうな。かってはジョークのネタでしかなかった「男の更年期」が最近やっと「LOH症候群」と
して医学的に認知されたそうだけど、生理的な変化である更年期は「老化」を意識させられると
いう点で男女を問わず精神的にかなりのストレスだろうと思う。で、ずっと見ている『ストレスと身
体』の講義で、サポルスキー先生が「強いストレスがかかると衝動をコントロールする脳の前頭
葉の活動が低下して、見境のない行動を取るリスクが高まる」と言っていた。つまり、男が「不惑」
の40歳を過ぎてから、かっとしてとんでもない事件を起こすのも、むらむらとして女子高生のス
カートの中を盗撮するのも、浮気や不倫に走るのも、赤いスポーツカーを衝動買いするのも、そ
うでなくても社会的にストレスの多い年頃で、男としての機能が低下して、当惑した故ということ
なんだろうか。

この「男の更年期」、女の更年期と違って「過ぎてしまえば後は楽」というわけではないらしいの
がやっかいなところ。女性の場合は閉経という通過儀礼みたいな現象が最後にあって、そこを
過ぎればせいせいした気分になり、俄然更年期前よりも溌剌としてくる人も多い。(還暦を過ぎ
たおばちゃんたちのバイタリティはすごい・・・って、ワタシも還暦過ぎのおばちゃんなんだけど。)
ここで「男、40にして困惑」と言ってしまっては身も蓋もないけど、実際に40代あたりで「ミッドラ
イフクライシス(中年の危機)」が訪れて、理性のたがが緩んでしまうのは、男の更年期の通過
儀礼がどうも最初に来るせいではないかと思う。

つまり、人生のストレスの多い時期に(あるいはそういう時期だからこそ)男のプライドが揺らぐこ
とが起きて、それがストレスを倍増させ、20代半ばまでかかって発達して大人の男の理性を支
えてくれていた前頭葉が萎縮させるために、衝動を抑えることができなくなるんだろうと思う。現
に、盗撮や痴漢で捕まった男はたいていが判で押したように「ストレスがたまっていた」と言い訳
している。仕事でも家庭でもストレスがいっぱいで、いつもストレスホルモンの栓が満開の状態
だと、ストレスホルモンの受容体が多い脳の前頭葉でニューロンが萎縮し、層が薄くなる。そうな
ると、判断力と衝動を抑える力が低下して、何かのきっかけで「つい」とんでもないことをやらか
す時限爆弾になる。ただし、ストレスが軽減すると、萎縮したニューロンは再生できるんだとか。
でも、前頭葉の配線はストレスに遭う前とは違ったものになるらしい。

男40にして、すわ男の更年期かと「当惑」、それでは若い女性と男の春をもう一度と浮かれて
「浮惑」、出会いを求めてこそこそと携帯をいじっては「疑惑」を招き、つい事件を起こしてクビに
でもなれば家族にとっては「迷惑」。はて、現代人はいったいいくつになったら「不惑」の境地にた
どり着けるのやら・・・。