極楽とんぼは風まかせ

東は東、西は西。交わることなき二つとはいえ、
広い太平洋、東の風が吹き、西の風が吹き・・・

壁に止まった幸せなハエ

2018年07月17日 | 今日の風の吹きまわし
7月16日(月曜日)。続き・・・

そうやって本気を出して、1年かけて書き上げた芝居の脚本が査読を申し込む寸前で棚上げになったの
は去年の12月。またもや立ち往生かと思ったけど、それが実は幸運だったとわかったのが3月。半世紀
前に役者たちの自主制作の芝居小屋だったArts Clubを3つの劇場で1シーズンに10数本の作品を上
演するカナダ最大の劇団に育て上げた芸術監督のビル・ミラードが引退することになって、演劇界の有
志が彼の名前を冠した奨学基金の資金集めを兼ねた特別ショーを企画。同じ日にショーに先立って別に
資金集めのディナーパーティがあって、私たちもショーとペアのチケットを買って、柄にもなくカクテルドレ
スとスーツのいでたちで参加したんだけど、「思いがけない幸運」に遭遇したのはパーティでの余興オー
クションだった。

「リゾートで2泊3日」とか「マンマ・ミーアに端役で特別出演」といったロットがあって、一番最後が「ビル・
ミラードと共に~一生に一度の体験(Once in a Lifetime with Bill Millerd)」。ビルが2017年/18年の
シーズン最後のミュージカル『ONCE』を演出するので、1日彼のそばにいて、その後で夕食を共にする
という趣向だった。それを見たとたんに、これはワタシのだ!と決めて、オープニングの2千ドルで競りが
始まると同時に手を上げて、他の人が競り上げるのに負けじと手を上げっぱなし。最後はカナダで有名
なシンガーソングライターと俳優の姉妹との一騎打ちになってみんな大いに興奮。粘り抜いてとうとう競り
落としたときは5500ドルになっていた。芸術監督サークル(ADC)で親しくしている人たちがカレシに「ま
た心臓発作を起こすんじゃないかとハラハラしたよ」と言って大笑い。でも、ふと見たら、司会者の後ろに
立っていたビルが「でかした」と言うように親指を立てるサインを出していて、ああ、やっぱり初めからワタ
シのものだったんだと納得して感激したのだった。

それが3月の初めで、『ONCE』 リハーサルが始まるのは5月。スペシャルイベント担当のミスティから
「その日」について連絡が来るのを首を長くして待っていたら、5月の初めに何とビル・ミラードその人から
メールで「来週に最初のミーティングがあるので、退屈かもしれないけど興味があったらおいで。その後
に制作会議があるけど日時は未定。5月20日からBMOセンターでリハーサルが始まって、6月初めに
グランヴィルアイランド劇場のスタジオに移動して、13日にドレスリハーサルの後1週間のプレビューで
オープニングが20日という日程。詳しくは舞台監督のカリンが連絡するからね」。はああ?一生に一度
の「ビルとの1日」だったはずが、いつの間にか制作の初めから終わりまで通して見せてもらう話になっ
ていて、どうなってるの?話が違うどころか、天にも昇るような夢のような話・・・。

こうして5月に劇作家の卵の卵のワタシの「舞台芸術特訓コース」が始まって、夢のような1ヵ月をリハー
サルスタジオの壁に止まった(世界一幸せな)ハエとして過ごすことになったのだった。

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