旅してマドモアゼル

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ときどき旅、いつでも変わらぬジャニーズ愛

昭和島ウォーカー

2008-11-23 | 観たものレビュー
V6のイノッチが出ているから、というよりは、劇団☆新感線の粟根さんが出演されているから、というのが一番の観たい理由だった舞台。
とにかく、粟根さんが出るという時点で「なんだか面白そう」というイメージが先行してチケットを取り、そもそもはヨーロッパ企画という京都発の小劇団によるプロデュース公演ということを知ったのは、イノッチの日記「いのなき」でだった。

舞台好きを自称しながら、ヨーロッパ企画を知らなかった私。
今回の舞台を観て、いままでこの劇団を知らなかったことをちょっぴり悔しいと思った。それほど、面白い舞台だった。

主役はもちろんイノッチなのだが、キャストそれぞれに強烈な個性が当てられて、どちらかというと群像劇の印象が強くて、ヒューマニズムにあふれた内容は、キャラメルボックスの舞台を思い出させた。
主役であるイノッチは、それぞれのキャストにスポットを当てるための狂言回し的な役割をも担っているような感じ。
あまり覚えていないのだけれど、イノッチが最初「演じにくい」と日記で書いていたと思うのだが、もしかすると、そういう役割を今まで演じたことがなかったからなのかもしれない。

舞台上のセットは「アサヒロボット」という工場の中なのだが、近未来の日本を描いているにも関わらず、工場の中は昭和の匂いがするレトロな工場といった感じ。
動いているベルトコンベア、故障して煙を吐く機械、色とりどりに光る機械のボタン、舞台セットを見ているだけでも面白い。
イノッチのセリフに「『モダンタイムス』かと思ったよ!」というのがあったのだけれど、たしかにどこか懐かしさが漂うセットなのだ。
ちなみに、『モダンタイムス』という映画、みなさんご存知でしょうか。
チャップリンの映画の中でも私は一番好きな映画なのですけども。
最初の工場でのシーン、歯車に巻き込まれるチャップリンの場面が有名ですけども、私は後半、ポーレット・ゴダード演じる女性と一緒に働き始めた酒場で、洋服の袖口につけた歌のあんちょこをなくしちゃって、即興でチャップリンが歌うシーンがとにかく面白くて好きだったかな。あと、二人で旅立つラストシーンがいいんですよね。とにかく名作です。

話が飛びましたけども。
工場も昭和なら、中で働く工員たちの格好もまた今とさほど変わらないのだが、2足歩行する自販機ロボットの話やヒューマノイドロボットの話が出てきたりして、レトロと最先端が同居している不思議な感覚に襲われる。

かつて、2足歩行の自販機ロボットで隆盛を博したアサヒロボットだが、「ロボットは人を傷つけてはならない」というロボット3原則の新しい法律によって衰退の道を歩み、今では巨大なロボットメーカーの下請けに甘んじて、工員たちもやる気ナッシング状態。
そんな荒れ果ててうらぶれた工場に、先代社長の息子「コテツ」(ただし機械オンチ)が戻ってきたところから、ストーリーは大きく動き出すのだけれど、コテツが慣れない機械に手を出しては故障を起こすたびに、工場の中が次第に整備され、工員たちにやる気が出てきて能率的になっていく様は観ていてとてもワクワクする。
そして同時に、今まで没個性化していた工員たちのバックボーンも明らかになっていくのだけれど、中でも、若い女工員のハナちゃんとスパナを振り回すゲンさんの「秘密」が明らかになるシーンが面白い。

でも、私のツボはやっぱり粟根さんかな!(笑)
粟根さんはどこへ行っても粟根さんなんだなあと改めて思ったし、舞台に出てくるだけで、何かをやらかしそうな雰囲気を漂わせる存在感もハンパなかった。
もちろんトレードマークの「メガネ」も健在(笑)

いつかは来るであろうロボット社会、そんな近未来の日本を描いた芝居に何か含むところやテーマがあるのでは?と考えなくもないが、基本的に描きたかったのは、自らの力で希望を見出していく人間の強さとしなやかさなんだろうなと。
時代や歴史を作っていくのは、機械でもロボットでもなく、多様な可能性に富んだ人間なのだ、と。
そんなことを最後に思った芝居でした。