( 8½ )(26)VR奥儀皆伝 TP-VR Attract. 謎解き・テーマパークVR Web版

2021-03-24 | バーチャルリアリティ解説
 Number26 / パーク VRアトラクションを実作します 〈後編 ②〉
                          【( 8½ )総目次
 「桃山再現VR」で 2050年を創る   VR之極意:③ 

 【『起雲閣』のVR化で 自分でも納得の展開を思いつき、後半を書き直しました。】( 2021.4.12)

 ( 8½ )(20)で、私たちは ウォルト・ディズニー・ワールド(WDW)EPCOT 1939年の NY万国博のTrylon  Perisphereの発展形だったことを確認しました。この施設は、「ディズニーが考えた 近未来のアメリカにおける進歩のシンボル」でした。「1966年に ウォルトが EPCOTの将来像を解説しているビデオ」を観た私は、その説明に「SDGs のために TWI2050が取り組んでいる研究姿勢・開発姿勢」に 大変 近いものを感じました。(横幹ニュースレター 62号Column を参照して下さい。)それで、例えばのサンプルとして、EPCOTの日本館に VRアトラクションの『飛雲閣』を 日本の「桃山文化」(国際交流文化)の代表として VRで再現する方法を、(24) (25)から説明しています。SDGsの 2050年を目標の一つに VRシステムを開発している研究者に「まだ誰も見たことのない VR作品」を開発する際のヒントにして頂くのが目的です。

 今回の(26)では、「ゲゼル型地域通貨」から発想(通常とは 逆発想)した マーケティングがどういうものか、という説明を含めて、VRの『飛雲閣』を、とりあえず 完成させてしまいましょう。

 (21) (22)の説明の中に書けば良かったのですが、例えば、SWI2050のための VRシステムを開発中の研究室が、その VR作品は(特定の)外国で開発者の意図の通りに使われるどうかに確信を持ちたいときには、試作段階で そのキャラクターなどを外国人の知っているものに変えてみるのが良いと思います。そして、公的な博物館、例えば(もし、できれば)ですが、東京国立博物館や 東京藝術大学大学美術館などで そのキャラクターに関連する展示が行なわれて、特に 外国人の観客が多数期待できるというときに、そのミュージアムショップに VR作品を設置して 説明なしに使って貰います。
 これは、私たちの造っているVR作品に、初音ミクちゃんと「握手する」とか Unityちゃんと「なになにする」といったように、何かのキャラクターを付けたほうが観客が没入しやすい作品が多いので、そうした場合の検証方法です。また、新しい VRシステムの機能を シナリオの形で諸外国に宣伝したいときには「使用方法」が理解できる双六(時間経過を表現できるボードゲーム)を作って、サイコロ付きで販売する。または、折り紙の意匠にデザインするなどして、美術館のミュージアムショップに英字解説つきで置くのも良いかも知れません。

 それで、とにかく VR『飛雲閣』の全体のシステム・デザインを  「どう まとめようか」と考えていたのですが、『スターツアーズ』(1987年)なら乗ったことがある、という読者も多いでしょう。また、『BODY WARS』(1989年)も それと同じシステムでした。ですから、ここでは この機構を、ほぼそのまま使わせて貰おうと思います。(スクリーンサイズは、没入感を高めるために変更します。)


 画像借用元:https://castel.jp/p/1965

 ここからバーチャル『起雲閣』の概要です

 プレショー(キューライン)については、前回に紹介しましたが、観客が舟で『飛雲閣』に近づく映像を 10インチ画面の iPadで観て頂くつもりです。それで、そこの床だけは、動く歩道になっています。 あるいは、1939年の『フューチュラマ』 のようなムービング・チェアで前へ進み、観客は 椅子に付けられたタブレットの映像を覗き込むような仕様でも良いかも知れません。


 画像借用元: https://www.hongwanji.kyoto/see/hiunkaku.html

 体感劇場の座席に座った観客が観ているスクリーンと 投影装置は、IMAX社製を使おうと思います。従来の体感劇場には無いハイブリッドの、最強の揺動アトラクション機構になると思います。(結果的に、ダグラス・トランブルさんがシネコンの映画館一つのリプレースとして1991年に提案した体感劇場の「大規模版」になりそうです。改めて 詳しく説明します。なお、トランブルさんがライドフィルム用に作った「体感劇場」のプラン映像を、ライドフィルム・ジャパンの沢木建治社長から宣伝用にお預かりしています。)
 観客は iPadを手に持っていた場合には、それと交換して 3D用の劇場メガネを受け取ります。iPad、そして 3Dのメガネには、観客がうっかり持ち帰らないようにセキュリティ・チップを付けておきます。IMAX 3D 体感劇場に着席すると、間もなく椅子が揺れ始め、観客は 自分が舟で『飛雲閣』の船着き場に近づいて行くのを感じます。なお、前回の(25)に説明しましたが、今回のアトラクションの設定として、こんなシナリオが用意されています。

   〇 近々に 老中を(内装豪華な)『飛雲閣』に お招きすることになった。
   〇 それで、今日は 若年寄が 当日の段取りの打ち合わせに来られた。
   〇 その打ち合わせに 観客の同席が、特別に 許されています。

 ということで、スクリーン上では10数名の観客が船着き場から石の階段を上って、ぞろぞろと1層目の室内に入ってきたところから物語が始まる、という設定にしてあります。 (前回の説明を、読み直して頂けると有難いです。)

 画面には、MCの(司会役の)お坊さま、若年寄、そして、
   10数名の観客の後頭部
が見えています。

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 室内や庭園についての、いろいろな説明が行なわれました。そして、

 若年寄が MCのお坊様に尋ねます。この『起雲閣』には、豊臣秀吉の建てた『聚楽第』の一部が移築されたという説と、後代の 良く似た楼閣を移築したという説がありますが、どちらでしょうか。
 お坊様が、それに答えようとしている時に、どろどろどろどろ と(このお囃子は 歌舞伎ですが) 華麗な能装束に身を包んだ 豊臣秀吉が、けむりの中から登場しました。

 スクリーンの映像の背景は 西本願寺の重要文化財の 南能舞台に変わり、画面上の観客も 実際の観客も、それを観客席から眺めています。地謡方が 秀吉の業績の主なものを観客に伝えるのと同時に、『聚楽第』に後陽成天皇が行幸されるという 秀吉にとっての とても誇らしく晴れがましい 一世一代の 場面の再現VTRが 挿入されます。
 謡の内容は よく聞きとれませんが、映画『アバター 3D』(2009年)のように 空中に 観客に合わせた 多言語の字幕が浮かびました。実は、日本語の活舌の多少 悪い俳優さんが出演している映画(黒沢作品とか)でも、海外の映画祭で入賞している理由は、字幕で映画を観ると活舌の悪さよりシナリオの完成度が際立つからです。字幕のメリットを活用して日本人観客用にも字幕を付けます。 能舞台の秀吉は、刀狩令によって平和な国土が誕生したのは自分のお陰なので感謝して欲しい と 観客に語り、舞台上で華麗に舞いました。

 そして、家康が 英国のエリザベス女王から 秘密裏に 購入した大砲が 大阪城「夏の陣」で使われて落城し、子孫や 家来たちが大勢 死んだことを 秀吉は嘆きます。その間に、観客のメガネを向けた方向が トリガーになって、シナリオが分岐しました。参考までに書いておきますと、世阿弥のあみだした「能」の新しいシナリオ・パターンは、旅の僧侶が「平家物語」などで有名な場所にさしかかると、誰かが立っていて、僧侶が「ここは武将の誰々さんが命を落としたところではありませんか」と尋ねると、「私がその誰々の亡霊です」と その人が答えます。そして、テレビドラマ『タイムレス』の過去の歴史の再現場面のように、舞踏で詳しく 亡霊が その時の情景を説明します。平家琵琶 = 人気シンガーソングライターの原作がある時には、歌詞が そのまま謡になって舞われます。最後は、その武将が「あなたは僧侶なので、私を ねんごろに弔って下さい」と頼んで、橋掛かりから退場します。聞けば、実際に かわいそうな話なので、お能の観客も感動します。 そして、「能」のシナリオと同じように 最後に VRの『飛雲閣』で 秀吉が MCのお坊様に 回向を乞うと けむりが立って、橋掛り(はしがかり)に その姿は消えました。お囃子の静まる中で、お坊様の唱える念仏が 観客を体感劇場に 連れ戻します。

 ※ 私は山形県で 黒川能を観せて頂く機会がありましたが、事前に筋書を覚えていたので、本当に感動しました。そもそも「能」では地謡(じうたい)の 8人コーラスの歌詞(謡)が素人には聞き取りにくいのです。能では 多少の予備知識と字幕があれば、退屈しないと思います。

 結果的には 観客は、この楼閣が どこからの移築だったかについては、能装束の秀吉に「はぐらかされた」ことになりますけれど、学問的に結論が出ていないので悪く思わないで下さい。ところで、私たちの造っているVR作品には 主人公のキャラクターがあることで没入しやすいものも多いのですから、秀吉さんとか 平家物語の亡霊に登場して頂くとプレショーの説明が短くて済みます。それで、主役が「平敦盛」だと事前に分かってさえいれば、観客も「ああ、一の谷で 首を切り落とした武将と 切り落とされた若者が、戦後に 出家した僧侶と亡霊として出会って 仲直りしている場面だな」と理解できますので、能の 雰囲気にひたることができるのです。(ですから『新・平家物語』とか 吉川『三国志』とか『源氏物語』を事前に読んでおけば、VR作品の作家が キャラクターを選ぶ時の持ち駒が増えることになります。日本人観客の一部や 外国人が そのキャラクターを全く知らなくても、字幕を読めば話の流れは分かりますし、観客の日本人の誰か 一人くらいは筋を知っていて「平家物語を読んだ人だったら、必ず覚えているキャラクターですよ」と周囲の人に説明してくれる筈だからです。)
 また、『飛雲閣』の 2階の『歌仙の間』では 三十六歌仙 を素材に ストーリーを作ることができますから、シテ(主役)の踊りの素材は、いくらでも広がります。これを フェロー武田の「VR構成要素図」でも確認しておきましょう。多くの観客の視線を向けた方向が、入力のトリガーになります。


 『バーチャルリアリティ学』コロナ社、2011年の 7.2.4.「エンタテインメント」を参照して下さい。
 ( 初版第一刷の VRの構成要素図の矢印に誤植がありますので、ご注意下さい。)

 それで、どこが「ゲゼル型地域通貨」なのか、という話に進みます。

 EPCOTに来場された数万人が『飛雲閣』のVRを体験して下さった、という状態を想定します。その中には 外国人観光客も多いので、EPCOTの日本館を訪れた彼らは、次の旅行先として日本を選ぶかも知れません。
 クラブ・ツーリスムなどの旅行会社と提携して、京都にバスツアーを準備します。先ず、宇治『平等院鳳凰堂』の拝観と『平等院ミュージアム鳳翔館の内装CG復元映像を巡って頂きます。昼食を はさんで、西本願寺で飛雲閣の外観拝見です。でも、国宝なので 内部は非公開。それで、京都の EPCOTスポンサー会社(25)参照)が 自社内に VR『飛雲閣』展示の小型版展示室を用意しておきます。サイズは小さいでしょうが 8Kテレビや HMDを占有して、観客一人一人の自由な操作で時間を掛けて EPCOTと同じアトラクションを観たり、『飛雲閣』の見学ができると良いですね。(二人同時使用の VRも歓迎されるでしょう。)

 翌日は、奈良東大寺大仏殿をバスで拝観した後に、奈良のスポンサー会社が社内の『大仏殿』VR復元展示室にご案内する予定です。そのあとで、京都と奈良のスポンサー企業は、自社が TWI2050 の趣旨に賛同して開発中のVR製品を、参加して下さっている外国人に説明します。ここで、もし逆に、従来のように「機械論的な企業協賛」が行なわれていた、という場合であれば、

 ① TWI2050の製品を開発・販売して 利益を出した会社が、
 ② その儲けの一部で EPCOTにアトラクションを寄贈する、従って、
 ③ 自社製品と EPCOTの来場客には関連が生じません。

 しかし、ここでは「ゲゼル型地域通貨」に似たマーケティング案ですから、

 ① EPCOTでの VR展示に関心を持った来場客の一部が、
 ② 日本での 個人仕様の VR展示を見学しに来られていますので、
 ③ 彼らに、TWI 2050仕様の 試作VR製品のモニターになって頂くことで、

 通常であれば、日本国内での推測だけに基づいて SDGs対応の VR製品の開発が行われ、それが次に 海外での実証テストを経て、現地海外での日常生活・風習の中での改良点が発見される、という流れになるところなのですが、

 ここでは外国人が自費で来日されて、VR製品に興味を持って、その自国での使用に関するモニターに ボランティアで なって下さっている、という状況ですので、京都や奈良の会社にとって 「EPCOTのスポンサー企業になった」というチャンスが、そのまま自社製品の試作段階での製品改良につながった、ことになります。そういった仕組み(化生論科学です)をどう作るか、と考えた時に、

 EOPCTでのバーチャル『飛雲閣』の展示を思いついた次第です。



 画像借用元:EPCOT 日本館 https://dpost.jp/2019/05/16/wp-48160/【日本館紹介ビデオ付き】/ 1982 EPCOT Center Opening Day Booklet 1982 EPCOT Center Opening Day Booklet - ID: novdisneyland17067 | Van Eaton Galleries (vegalleries.com) / https://slate.com/human-interest/2014/08/epcot-food-memories-of-eating-at-disney-worlds-international-showcase.html 

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 (17) (25)に続いて、九州王朝の話を もう少し書いておきます。1945年に日本は、第二次世界大戦の敗戦国になりました。それで、戦勝国であるアメリカの様々な制度を導入したのですけれど、これは「白村江の戦い」(663年)の顛末に良く似ていました。昭和天皇も、敗戦の翌年 1946年8月に「朝鮮半島に於ける敗戦の後に、国内体制を整備する為、天智天皇は大化の改新を断行され、その際思い切った唐制の採用があった。これを範として(前例として)今後大いに努力してもらいたし」と お話になり(出典Wiki)、再び敗戦国の国民になった日本人を励ましておられます。つまり、皇室で ご進講されていた日本史では、「白村江の敗戦を契機に 日本で唐風が採用された」と講じられたご様子です。
 何が言いたいのかと言うと、752年の日本人が着ていた唐風ファッションは、白村江の敗戦というインパクトから復興する際に(大和朝廷自体は 敗戦していないのですが)日本文化に接ぎ木された色調でした。この色調は、時間の経過で「国風」に変化します。

 それで、こうした九州王朝の 余り知られていない話を、ここで皆さんにお話ししている理由は、次回に 哲学者の上山春平さんの、日本には600年毎と20年毎の「開 → 閉 → 開 → 閉」の大小の波があって、外国文化の意匠を有難くそのまま受け容れる時期と「閉じて」そこから国風文化を醸す時期が交代しているという日本文化の性質をご紹介しようと考えているからです。
 その過程として、例えば、私たち自身が 海外の知り合いに「おみやげ」として何かを持参しようとするときに、東京国立博物館のミュージアムショップの 派手なミニ「金屏風」と 横山大観の水墨画の A4クリアファイルの間で悩むという事態が起こります。

 そもそも、私たち日本人が、TWI2050のためのVR製品を開発して世界に貢献するという場面では、海外にどんな「おみやげ」を届けることになるのでしょう。結論を少しだけ前倒ししておくと、荒削りのキンキラの安土桃山文化も、時間の経過で 比較的洗練された元禄期の尾形光琳などのようなデザインに変化したことを私たちは知っています。752年の「大仏開眼」のセレモニーにおける唐風の原色衣装も、時間の経過によって、豪華で繊細な能装束の色調、つまり「唐風→能装束」という色調に国風化されました。

 ですから、TWI2050を納品する際に「唐風」の衣装を着て出かける日本人はいないのですから、戦前の和装のような、豪華さと繊細さが「能衣装」に通じるような色調の訪問着を着て納品に出向きませんか、というのが私の提案です。詳しくは、次回に続けます。

 ※ 「海のシルクロードを経由して 鉄砲・宣教師(海外情報)が入ってきたから、安土桃山文化が誕生した ⁉」を次回に述べます。日本人の美意識のアイデンティティは、どこにあったのか、が大きなテーマです。


 2020年の NHK大河ドラマ『麒麟がくる』では 尾野真千子さんが阿国を少し想像させる旅芸人の座長を好演しました。

VR奥儀皆伝( 8½ )(25)パーク・アトラクションを造ります 「VRの桃山再現CGで 2050年を」 VR之極意:③ 〈後編 ①〉こちら

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