舞栗倉庫

過去ログ

文才。

2006-12-02 19:55:52 | Weblog
また2日間も穴をあけてしまった。
年賀状を作っていて、もっと短時間に出来上がるだろうとやり始めたらどうも気に入らず、こっちいじったりあっちいじったり、結局2日間もかかってしまった。たいした出来でもないのにね。「韓国経済」や「年金」について書きます。なんて書いておきながら言行不一致も甚だしい。
でも2日開いちゃうと気が抜けちゃって、文字に起こすの面倒になっちゃったので、別のことにします。




今週の初めだったと思うんだけど、NHKの連続テレビ小説?「芋たこなんきん」の中で、岸部一徳扮する写真屋の大将の下で働いてるお弟子さんの手に召集令状が届いて、近日中に出兵ということになった。

皆で囲んだ食卓で、一徳曰く「え~か~、鉄砲の弾が飛んできそうになったら、(頭抱えて)『天気予報~・天気予報~』ゆーて逃げるんやで。」
すると主人公町子役の子役の娘が「天気予報、ち~っとも当たらへんもんなぁ。」と言って皆が笑う、という場面があった。

あながち嘘ではないんだけど、正確には「測候所~・測候所~」と言ってたらしい。
気象庁の前身が測候所で、戦時中は「測候所」と呼ばれていて、今ほど予報技術が高くなく、当たらないことの代名詞として「測候所」が使われていたということだ。

これは15年ほど前に購読していた週刊誌に載っていた話。

同じ週刊誌の別の号に載っていた話。これもほぼ同時期に読んだ話なので、人物の名前や細かいところは随分と違っているだろうけど、大まかなストーリーは間違っていない筈。

小学生のひろし君は駆けっこが得意で、友達と競争をしても負けることはまずなかった。
しかしひろし君が5年生の時の秋の運動会。徒競走に出たひろし君は珍しく2位になってしまった。自信があった彼にとり、2位は納得のできる結果ではなく、とてもショックを受けることになった。

そこでひろし君は一念発起し、翌日から猛特訓を開始することになる。翌年の運動会で1位を取ることができなければ、小学生としての運動会にはもう出ることができなくなるのだから、6年生の徒競走に勝つことはとても大きな意味を持つ。最後の運動会で堂々と1位を取り有終の美を飾りたい。ひろし君の決心はとても固いものだった。

お父さんとお母さんに宣言した通り、ひろし君の特訓は翌日から開始された。
雨の日も風の日も、アダモが唄ってるような「アナタの来ない、雪の降る日」も。
ヤリの降る日がなかったのが、ホッケの幸いだ。肉厚の縞ホッケならさらに幸いだ。

お母さんはびっくりした。宣言通りに1日も休むことはなく、特訓は続いた。それでもひろし君からは、つらそうな表情は伺えない。
お父さんは感心した。自分は1日たりとも休肝日を作ることができないというのに、自分の息子は1日も休まずに特訓を続けている。
僕は驚愕した。ブログにすぐに穴をあけてしまってるというのに、小学生が休まず特訓を続けているという現実に。




ひろし君には同じクラスに親しい友人がいる。仮にユージン君(なんでロシア人なのよ)とする。
ユージン君は生まれつき足に障害を持っており、歩くには問題はないが、走るのは苦手で、出来ることなら体育の授業は休みたいと思っている。だから父兄も観戦に来る運動会には尚更来たくないし、徒競走なんてこの世から無くなればいいとさえ思っている。そうは言っても先生は徒競走にも出ろというので、毎年嫌々出場しているのが実情だ。しかし徒競走の結果はいつも決まってビリ。走るのが早いとか遅いとかではなく、転けないで1周走れるかどうかというレベルだから、ユージン君にとって徒競走は全然楽しいものではない。




ひろし君の6年生の生活も秋を迎えるころになり、毎日積み重ねてきた特訓のお陰で、お父さんが見ても足は速くなり、徒競走1位は間違いはないだろうというところまで実力は増してきた。お父さんもお母さんも1位は確信しており、当日の息子の勇姿を収めておこうとビデオカメラまで新調してしまった。

本番1週間前に行われた予行演習で、ひろし君の成績は堂々の1位。クラスのみんなも、ひろし君自身も当日の1位を確信した。




さて、運動会当日、快晴。
お母さんは腕を振るってお弁当を作り、お父さんはビデオカメラの調子を確認し、2人で期待を胸に学校へ。

いよいよ、ひろし君の出る徒競争の順番となり、お父さんはゴールの瞬間を収めようと、第4コーナーからゴールラインまでを収められる最適な場所をキープ。スタートの瞬間を待ちます。

スタートのピストルが鳴り響き、6人の男の子たちが飛び出します。
第1コーナーに吸い込まれて行く時に既にひろし君は先頭を走っていました。
トラックの内側は走り終わった子供たちや、これから走る子、先生達がいてよく見えません。
お父さんはカメラを左に振り、第4コーナーからの立ち上がり位置に照準を合わせ、自分の息子が1位で走ってくるイメージを頭の中に描きます。

第4コーナー内側にいる子供たちの歓声がひと際大きくなってきました。
ひろし君の顔が1番で現れるのをお父さんは楽しみの待ちます。

1位の子がファインダー越しに見えました。
ひろし君ではありません。
続いて2位の子も姿を現しました。
ひろし君ではありません。
3位の子も4位の子も、ひろし君ではありません。

ファインダーを覗いているお父さんは、瞬時に考えました。「コースの向こう側でつまずいて倒れているんだろう。怪我でもしてるんじゃないのか?大丈夫なのか?」




お父さんにとっては、10分にも20分にも思えた時間が過ぎた頃、第4コーナー付近の父兄達の声援がひと際大きくなりまして。そしてお父さんの目に男の子が2人走ってくるの姿が映ります。その瞬間にファインダーを覗いているお父さんの目に沢山の涙が溢れ出し、2人の男の子達の姿がまともに見ることが出来なくなりました。

涙でグチャグチャになったお父さんが見たのは、ひろし君とユージン君が手をつなぎ、ゆっくりと、でも慎重に足を進める2人の姿でした。見るとユージン君の膝には転んで擦りむいた跡がありました。

家に帰ってからひろし君に聞いたところ、1位で走っていたひろし君は、コーナーを回った時にユージン君が転んだことに気づき、走るのをやめて引き返し、ユージン君を迎えに行ったという。せっかく1年間もの期間休まずに特訓を続け、1位で走っていたというのに、特に悔しがる訳でもなくケロッとしてことの顛末を話すひろし君を、お父さんもお母さんも誇りに思ったのでした。




すぐに感情移入しちゃうので、朝行きの電車の中でこの話を読んだ時に涙が出てきちゃって、ちょっとヤバかった。

でも今読んでみると、たいしたことないのは僕の文才のなさによるもんなんだよなぁ。

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