===paradiso trattoria===

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ごく普通の景色

2007-09-12 | マイペンライ easy
先日車内から撮った写真。
札幌からほんの一時間走れば、こんな風景が広がっている
台風が空気をきれいにしていったので、遠くまで本当にすっきりと見える
この日は遊びに出かけたわけではないので、とてもそんな気分ではなかったが
やけにはしゃいでシャッターを切り続けている妹につられてしまった。
こんな風に、兄弟揃ってどこかに行くなんて、これが最初で最後かもしれない
スクーター並の速度で北上してくる台風を気にしながら
私は湿度ですっかり狂ったスケジュールの帳尻合わせに必死になっていた。
ロクロを引いた生地は一向に乾かず、化粧がけする予定の生地もまだ黒い
私はとうとうストーブに点火して、ぬるい空気の中、作業を進めようとする

母は朝から電話を気にしてそわそわしている。
いつくるかもわからない報告の電話に、家中が敏感になっていた。
叔父の死を告げるいとこからの電話はやけに軽い調子だった
その日の夕方、嵐の上陸と合わせるように、父母は台風に向かっていくはめになった
兄弟は通夜に間に合うように仕事の休みを取り、私は窯詰めをなんとか終わらせた
ダメ元でストーブを一晩中焚きっぱなしにして化粧掛けをしてみたが
翌朝、出かける前に覗いた仕事場は悲惨なことになっていた。

晴れ女を豪語する妹のおかげか、私達が出かける頃には天気は回復していた。
天国が、文字通り天にあるのなら、叔父さんは嵐に乗って一体どこまでいったんだろう

峠を一つ越えただけなのに、葬儀のしきたりは結構違うものだ。
私達と叔父を乗せたバスは、生前ゆかりのあった場所を一通りまわっていく
警笛が鳴らされる度に、誰ともなくその場所について語られる
こんな風にゆっくりと親族の手で見送られるのもいいものだな、と思いながら
普段とは違う時間の流れ方に、私は少しだけ居心地の悪さを覚えていた。