===paradiso trattoria===

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常滑と原風景欲求と私

2007-09-01 | アロイ delicious

約一週間、常滑のjunちゃんの所に居候してきました。
旦那様のD兄とjunちゃんのお姉さんのF姉と4人で
あちこちお出かけして周りました。皆さんありがとう~

さて、今年も常滑焼祭りに参加してきたのですが
いつもは搬入の前日に常滑入りするのに、今年は飛行機のチケットを
思いっきり取り間違えてしまい、搬入当日の入りになってしまいました。
札幌と10度近くも温度差のある所で、いきなり屋外のテントでの作業!
暑い!一瞬で全身汗だくです。

二日間のハードな祭りを終えて、翌日はとりあえず常滑観光。
写真のお店「風 Fu-u」でカレーランチ。


常滑の古い工場を上手に生かした店はとても落ち着きます。
一階は雑貨やアクセサリー、陶器がならんでいて、二階がカフェ。


カフェの駐車場から一枚。この先は散歩道になっていて
狭い坂道をくねくねと登って行くと昔のままの常滑の風景が残っています。
とはいっても、昔は沢山あった煙突もほとんど見られなくなりましたが・・・

私が修行先に常滑を選んだ理由は、いろいろありますが
実はこの古い町並みに惹かれたというのがかなり大きいです。
黒く塗られた木の壁が、細い道に軒をつらねて陰影をつくり
一歩中に入ると、太い梁がどっしりと建物を支えているさまは
自分の中の原風景を呼び覚まします。

うちの祖母の実家は昔からの農家で、北海道に開拓に入った先祖の家が
野幌森林公園の「開拓の村」に保存されています。
本家の建物は純和風のつくりで、屋根はもちろんトタンでしたが
塗りの真っ黒な建具を開けると畳の部屋が奥まで続いていました。
庭も純和風。大人の背よりも大きな庭石に枝振りを整えた大きな松の木。
そして垣根の向こうには田んぼや畑が見渡す限り広がっていました。

私が小学生の頃は、まだ祖母は元気で
秋には小さなトラックを借りてきて、父と私と三人で本家に遊びに行き
白菜やキャベツ、大根などを荷台に満載にして札幌に持ち帰り、
漬物つくりに精を出していました。
秋の日長の夕暮れと、古い木造の建物。
そんな忘れ掛けていた風景を、修行先を探しに旅に出た私は
常滑で見つけてしまったのだと思います。

JALで中部国際空港に向かう道中、機内誌の岩井俊二のコラムを読みました。
彼は原風景欲求の強い子供だった、とその中で書いています。
原風景欲求。この言葉を目にして、私の頭の中でいろいろな思い出が
急に鮮やかに甦りました。
陶芸を志してから、いろいろな産地に足を運んできましたが
私はひたすら路地をぐるぐると歩き回る事に夢中になっていたのです。

しかし、今回訪れて改めて開発の早さに驚きました。
空港が目の前に出来るという事はそれだけ人をこの地に集めることになり
ますます賑やかになり、道も整備され、便利になっていく一方で
山は切り崩され、昔ながらの風景は新しい道に分断されていきます
どこの国のものかわからないような今風の家が立ち並ぶさまは
まるで個性がなく、ただのベットタウンと化してしまいました。

幸運にも、常滑は古さを生かした観光のスタイルが随分前からできていて
町並みにあわせた店作りをしている場所がかなりあります。
心ある地元の人達がこれからも常滑らしさを失わずにこの町を守っていってくれることを、第二の故郷と思って遠くから応援しています。